モンスターの感想一覧
百田 尚樹による小説「モンスター」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
百田尚樹さんらしくない作品
百田尚樹さんらしくない・・というと失礼かもしれませんが、私にはいまだ「永遠のゼロ」や「海賊と呼ばれた男」と執筆した人と同じ人が書いた作品とは、信じられません。文章表現や、人物描写は言うまでもなくうまいです。その意味で、とても引き込まれます。ですが、内容に深みがない。。容姿が醜い主人公が整形を繰り返して美女になり、昔から好きだった男を振り向かせる…っていう、特に意外性もない、ありがちな話でした。ただ、百田さんはこんな作品もかけるんだな、という意味での意外性は見えた気がします。ハチが主人公の話もあるし、幅の広い、飽きない作家さんだなぁと思います。
どうだろう?
永遠のゼロを読んで感動し、百田さんの他の本を読みたくなり、迷わず購入しました。しかし、この話はとても後味が良くない話でした。あまりにも醜い女性が、その顔の為に壮絶で悲しい経験をしてきた話に、心が苦しくなったものの、同じような表現の文体が続き、飽き飽き…といった感もありました。整形美人になって、かつて自分をいじめた人に復讐をする、好きな人に振り向いてもらう、などストーリー展開が単純でした。最終的に、本当に自分を理解して愛情をささげてくれる人がいる事に気づき、それが唯一の感動の場面かもしれませんが、永遠のゼロほどの驚きや感動も無く、私には薄い話に感じました。
モンスター
すごく不細工にというより醜く生まれた女性が、整形に目覚め究極の美女に変身し、最愛の人に愛されたいと願うストーリー。あまりにも不細工に生まれたことで、いじめられ就職もできず、不遇な人生。確かに社会では美男美女が得をするようにできていると思う。私も美人に生まれたかったと幼少のころ思ってた時期があった。でも美人は美人なりに苦労もあるかもと年をとるごとに、思うようにもなった。主人公の和子はかわいそうなほど醜い顔立ち。それが整形によって少しずつ美しくなっていくのは、気持ちが良かった。美しくなるほどに仕事もなにもかもうまくいくとは、世の常なのだろうか。しかし、人は見た目だけではないと思わせてくれる場面もあり、救われる思いもした。
色んな感情が湧いてくる
読んでいて辛かったし、怖かったと言うのが、正直な感想です。モンスターと言われるほどに、顔が醜いせいで主人公に浴びせられる幾多の仕打ちは、読んでいて苦しくなるほどでした。整形手術代を稼ぐために、身を削って風俗の世界に飛び込みどんどん美しくなって行くことで変わる周囲の気持ち悪いくらいの態度とそれを見透かした主人公の心情が、生々しく描かれていて悲しいやら、情けないやら、ムカつくやら、色んな感情を引き出されました。唯一、物語の中で救われたのは、整形前の醜い顔も、整形を繰り返したことも風俗で働いていたことも、同級生に復讐したことも、何もかも知っている崎本が彼女を愛してくれたことだった。このことが、彼女だけではなく、読者までも救ったと思う。