百万円と苦虫女の感想一覧
映画「百万円と苦虫女」についての感想が9件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
「百万円と苦虫女」レビューと考察
リアルなようで、少しリアルじゃない、ストーリーの魅力ひょんなことから罪を犯してしまい前科者となり、自分を知る人がいないところへ行き、ひっそりと暮らす。このあたりは現実にもあり得る話ですし、女性が何らかの理由で街を転々としていく設定は、日本版の「マイブルーベリーナイツ」といった感じ。想い人に手紙を書くノラ・ジョーンズと弟に手紙を書く蒼井優の印象が重なります。しかし「マイブルーベリーナイツ」では初めから現実的な「街」や仕事を転々としているのに対し、今作では海へ山へ。なかなかできそうでできない場所の選択をしている鈴子を観ていると、つい自分も放浪したくなってしまうような内容です。そして序盤の様子を見ると、「マイ〜」の方が「逃げている」という印象が強く、仕事の中で何かを強かに学んでいくのに対し、今作は地元では「強い女子」のイメージが強いものの、転々とする際は暗に「百万円貯まったという理由を盾に逃...この感想を読む
この映画での蒼井優さんが一番私は好きです
平坦とフラットな感じで進んでいくストーリーなのですが、そのなかに例えば一度過ちを犯したものへの日本社会の冷たさや、現実社会の厳しさも指摘している社会派な部分も隠れている、まさに隠れた名作だと思います。特にこの映画時のどこか不思議ちゃんでミステリアスな雰囲気を醸し出しまくっていた蒼井優さんが今までの映画で一番良かったように思えます。(本当の性格は置いておいて)この鈴子のようなミステリアス雰囲気はすごく合っていると思います。そして森山未來さんの素朴さ。男なら共感してしまうことが多く、青春をセンチメンタルに思い出してしまいました。ラストシーンもそこま大きなアクションはなくあれっ?と終わるのも逆にこの映画らしくて好きです。
現実は甘くない。
主人公が100万円貯めながら各地を転々としていく・・・というロードムービー。蒼井優さん演じる、ちょっとネガティブで器用貧乏な女の子がすごくいいです。地元でもめ事を起こしてしまって居られなくなり、逃げるように各地を転々としつつも人間関係からは結局逃れられない。今の若者の現状を皮肉にしているようにも感じました。この映画のいいところは、とても現実的なところ。終盤、主人公はある街で恋に落ちますが、これでハッピーエンドというわけにはならない。街から去る決意をして、それを彼が追いかけるシーンでは結局二人はすれ違ってしまう・・・それでも、彼女はまあいいか。と次に進む。人生や現実なんて、こんなものかもしれないと思わせる深い作品でした。
人と関わるということ。
人と関わって暮らしていくという事は、時には面倒でありうっとおしい事だな。。ときっと誰も1度は感じた事があると思います。鈴子の様に“100万円貯まったら出て行く”と割り切った生き方ってある意味楽!?と感じたりもしますが、人と触れ合う事で沢山の事を学び、そして成長もしていけるという事もまた、この映画を通じて感じる事ができたような気がします。鈴子が、海、山、そして都会と転々としていくので、映像から旅行に行ってるような間隔と、そしてプチ職場体験も出来たような気分です♪ 主演の蒼井優さんが前テレビで『カキ氷づくりにはまっている』と言っていたので、海の家のシーンではそんな蒼井さんがカキ氷を作る場面も見られます。 キャストの皆さんの演技力も抜群で、また原田郁子さんの歌もこの映画にピッタリです☆
桃を狩るシーンが好き。
ヒロインの蒼井優がいい。100万円を貯めては居場所を転々としていくんだけど、そのなかでも桃の果実園で働くシーンの映像が、とても綺麗で好き。桃のみずみずしさが画面から伝わってくる。邦画のロードムービーが好きなので、たんたんと少し変な世界観で進んでいくのが好きだが、最後は恋愛の要素も入っていたりして、おもしろい。最後の最後、ヒロインに想いを寄せる役の森山未來が蒼井優をあきらめきれず追いかけるが、たしかすれ違って出会わないまま、蒼井優ちゃんは次の場所へ旅立つ…。そのハッピーエンドに終わらない、でも現実的な感じが、単純じゃなくていいと思いました。
蒼井優と森山未來の抜群の演技力!
全体的なストーリーは、ハッキリ言ってあまり好みではない!ただ、蒼井優さんと森山未來さんが本当に巧かった。その演技力に脱帽。二人が出て来るシーンを何度でも観たい(というか、実際に何度も観てしまった)。百万円貯めて家を出た少女が、移住先でも百万円貯まるとまた次の場所へ引っ越す、そこでも百万円貯まると……という繰り返しのお話。凄かったのは、ホームセンターの園芸コーナーで働き始めてからの流れ。二人がお互いに魅かれて、実際に付き合うまでのシーンは、切り取ってポケットに入れて持ち歩きたくなるくらいだった。そこまで強い思い入れを持ってしまったので、ラストにはどうしても納得がいかない! それが監督の描きたかったものだと言えばそれまでだ。でも、と思ってしまう。
不器用女子。
その場所その場所で、仕事はきちんとするし、非常識な振る舞いも別にしない。ルックスは上々。でも圧倒的に不器用な感じのする鈴子。私が男子でもほっとけないかも!彼女の、自分探しの旅かどうかへの問いに答えた言葉が切なかったです。自分が嫌でも、その自分と一生付き合うしかないって、いっそ絶望的ながらちょっとたのしい。前向きに生きていくには、諦め方というか、折り合いのつけ方によるんじゃないかな、と思った次第です。鈴子の恋のことは、拳を握って心の底から応援するというより、ふわっと見守りたい、そんな恋でした。週末に夜更かしして缶のお酒片手に、ゆっくり観たい映画です。
誰でも一度は感じた気持ち
このくらいの年ごろってあるある、と思いながら鑑賞。人との付き合い方や距離が分からなくて、分からないくらいなら関わらないようにしようと思ってしまうこと、あると思う。鈴子も友達とトラブルを起こして、実家に居場所がなくなり、近所の人からも変な目で見られる。そんな状況になってしまうと、閉じこもってしまいたくなる気持ちも分かる。とは言っても、主人公にはやっぱり活躍してほしい。最初は行った先々の人との関係も深くなる頃、100万円が貯まる頃に次の土地に行っていたが、地方都市に行った時、恋をする。今までの自分を乗り越えてこの人と一緒にいる道を選ぶか、恋が始まる予感に胸が高まる。ゆるいとは違う、ほのぼのした映画に心地よくなる。
自分を探さない旅
人との関わりから逃げ続けるために、百万円貯めては住む土地を点々とする主人公、鈴子。私も人付き合いが苦手なので、この子の行動や心境に大いにシンパシーを感じてしまいました。今いるところが自分の居場所ではない感じ。それは、だれも自分のことを知らない旅先なんかならばむしろ心地よい。しかし、いざその土地に根付いて自分の存在が認識され始めると、とたんに苦痛に感じられるものであったりする。彼女のことを受け入れ理解しようとしてくれる人からすり抜けるように去っていくのは、その苦痛から逃げるため。百万円という額は、それまでに貯められるちょうど良い額、ちょうどよい口実なのでしょう。しかし、弟からの手紙をきっかけに、彼女の中の何かが動き始めます。その選択が、いったいどこへ向かうものなのか…ラストは観客が思いをめぐらす余韻のある終わり方で、よかったです。