河よりも長くゆるやかにのあらすじ・作品解説
河よりも長くゆるやかには、1983年1月から1985年2月にかけて、小学館の「プチフラワー」「別冊少女コミック」「JUNE」に連載された、吉田秋生の青春漫画である。1983年に「吉祥天女」とともに、小学館漫画賞少女部門を受賞している。 基地の街の高校生、姉と二人暮らしの能代季邦を中心に、悪友の久保田深雪、幼馴染みの神田秋男たちと繰り広げられる物語である。ゲイバーでアルバイトをしたり、ドラッグの密売に手を出したり、ナンパをしたりしながら流れていく日々が、周りの人びとのエピソードを絡めながら描かれている。不安定な10代を、バカ騒ぎしながら過ごしつつも、少しずつ大人になっていく姿を淡々と語っていく、青春グラフティともいえる作品である。 単行本は、1984年にPFコミックスとして、全2巻が発売されていて、さらに1994年には、小学館文庫として、全1巻で発売されている。文庫版には、夢枕獏氏による巻末エッセイが寄せられている。
河よりも長くゆるやかにの評価
河よりも長くゆるやかにの感想
吉田秋生が描く、基地の街の高校男子の鬱屈と倦怠と×××
米軍基地のある街に暮らし、頭の中はヤることでいっぱい、だけどちょっとだけセンシティブ(ってのももう死語ですかね)な回路を持っている。そんなザ・昭和な高校生トシたちの物語です。発表年からかなり時間は経過していますが、今読んでもハッとさせられるところがありますよ。男に乱暴された友人・順子に「悪い犬にでもかまれたと思って忘れなよ」と慰めたトシが「じゃあ、あんたは犬にかまれたことを忘れられるの?」と聞き返されるシーンとか、若いなりにも男女の溝をもうすでに抱えているところ(こたつでくっつくだけ、とかね)をいい距離感で描いています。BANANA FISH以前の、かなりゴツゴツした絵柄のころの作品ですから好悪がわかれるかもしれませんが、個人的には大好きな作品です。