夏と花火と私の死体の評価
夏と花火と私の死体についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が3件掲載中です。
各項目の評価分布
夏と花火と私の死体の感想
静かで不気味な新感覚ホラー
不調和が生み出す恐怖本作は死体となった『わたし』の語り(語りであって視点ではない)で物語が進行する。言わずもがな、これは外では見ることのない表現法である。殺された少女が自分を殺した人物を地の文でひたすら呪う、という構図であっても十分に気味の悪いホラーだが、本作はその真逆で、自分を殺した友達の弥生ちゃんとその兄で少女の想い人である兄の健くんに恨み言を見守るようにその行動を語り、自分の死体を隠そうとするその心理を淡々と読み取り、終始平然とした心情であることが文体から読み取れる。あからさまなインパクトこそないが、鬼の形相で恨み言を列挙するよりもこちらの方が遥かに狂気的であり、気味が悪い。それに似た恐怖感を読者に与えてくるのは、弥生ちゃんの兄で『わたし』の想い人である健くんだ。妹が友達を殺したと聞いても取り乱さず、死体を隠すことをゲームのように楽しむ。ここだけを聞くと虫を潰して笑っているような、...この感想を読む