おんな漫画家、東京で家を建てる - やっちまったよ!!一戸建ての感想

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やっちまったよ!!一戸建て

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おんな漫画家、東京で家を建てる

3.03.0
画力
2.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
3.0

目次

建てた理由は不明、売った理由も不明の家

 

この作品の作者はエッセイ漫画家として不動の地位を築いているが、29歳から30歳にかけての時期になんと一軒家を建てている。

 

18歳の時に家賃28千円のアバートに住んで朝昼晩食パンを食べていたという人間が、土地を買いローンとはいえ一戸建てを建てるまでになったというのは、ものすごい立身出世であるなあと感心する。

 

しかしその家を建てることになった理由が今いちわからない。

家を建てる前に住んでいたのが賃貸のマンションであればまだしも、既に購入したマンションの一室に住んでいて、立地や環境にも満足していたという伊藤。独身の一人暮らしであれば、普通は必要ないと思われる一軒家を建てるという、その思考が正直凡人には理解できなかった。

 

そしてその苦労して建てた家に現在は住んでいないという後日談も、まさに「やっちまった」感満載なのである。

 

ただその家を建てる過程をイヤミにならない程度におもしろおかしく描いているのはさすが。宝塚ネタなど、話を少しでもおもしろくするために装飾過多になっているきらいはあるが、基本的にこれまでのエッセイ漫画と同じく、サクサク読める。

 

某設計会社曰く、「家作りの参考にはならない」

 

とある設計会社がホームページでこの本を紹介しているが、「家作りの参考にはならない」とバッサリ。

専門家から見るとそうなのかもしれないが、家を建てることに関して全くの素人からすると、なるほどと思った点もいくつかあった。

例えば建ぺい率と容積率。ひと坪がどれくらいの面積かということも、これまでぼんやりとしかわかっていなかったが、この漫画を読んで再確認できた。

家は着工したら3か月で建つこと。都会ではどうなのかわからないが、田舎で家を建てる場合は現場に差し入れをしたほうがよいこと。 

生涯で家を建てるということがなければ全く不要な知識ではあるが、不要ゆえにあえて知ろうとしなかったことを教えてもらえるのは、なかなかおもしろい。

 

家を建てるときに大事なのは、「人を見る目」かも

 

家を建てる決心をした作者だが、まず不動産屋に行っても出した条件が厳しすぎ、なかなか連絡をもらえない。一人だけ連絡をしてくれる営業マンがいて、だまそうとしてるのでは?と疑うが、その営業マンがあるお昼どきに車の中で仮眠をとっているのを目撃し、なんとなく心を許して、彼が勧めた土地を購入することにする。

 

(作者と運命の土地の仲立ちをすることになる不動産屋の営業マンとの交流は、後には彼の自宅を訪問し、酒を酌み交わすまでの濃いものとなる。ここまでしてくれる営業マンがいれば、思い切ってまかせてみようという気にもなるだろう。)

 

後に設計を任せることになる設計士が、作者を自分が設計した建物を見せるために案内したとき、植え込みが虫にやられているのを目にし、激しく落ち込むというエピソードもほほえましい。自分が建てたものに愛着を抱きその後の経過も気にしているということがわかる。

 

家を建てる、という大事業を私は成し遂げたことはないが、家の売り買いなどの大金が動く場面において、いかに信用できる業者を見抜くかというのも大事なことだなと思った。周囲の人間の言動をネタにしてマンガを描いている作者だけに、人の本質を見抜くのは得意なのかもしれない。

 

苦労して建てた家の現在は?

 

不動産屋をめぐり土地を探し、膨大な書類にハンを押し、誰に設計を任せるか、さんざん悩んで建てた家であるはずだが、2018年現在、作者はこの家には住んでいない。

では誰が住んでいるのかというと、作者が連載していたひとコマ漫画で、それが明らかにされている。物件を購入したのは偶然にも現在の伴侶・YS氏を以前に担当していた編集さんの知人であったという。

 

家を購入した夫婦と作者は、その後サイン会の会場にて顔を合わせている。

一人で住むことを前提に作られた個性的なトイレを、家族で使った場合どんな感じになるのかが気になるところだが、残念ながらそれについて作品の中では触れられていない。

 

苦労して建てた家をなぜ手放したのかは、現在その家にお住まいの家族への配慮もあってかどの作品においても触れられていないが、引っ越しの日に前のマンションの住人に妬みからくるイヤミを言われたことや、引っ越し業者の人の「この家小さい子供がいたら死ぬわね」という言葉が後々から響いてきたのでは…という気がする。

 

猫と妹のキャラが固まるのはこの作品の後

 

漫画家によっては時折、デビューの頃とそれから数年後の画風が全く違う人がいるが、この作者は基本的にデビューから現在に至るまで、あまり画風に変化はない。ただ、後に出版された二匹の猫との生活を描いたエッセイ漫画ではではしっかりキャラクターができていた猫が、ここではまだつっこみ役として引っ張り出されているだけだ。

 

そしてエッセイ漫画では常連である作者の家族も、上の妹のキャラ付けがきちんとできてないのがわかる。現在の上の妹キャラはなぜか口が鳥のくちばしのように描かれているが、このように描かれるようになったのは本作の3年後に出版された作者の子ども時代を描いた作品からではないだろうか。

 

作者が結婚する数年前から最近までの作品を愛読しているが、たまに昔の作品を読み返してみるのも新たな発見があっておもしろかった。

家を建てた後に「もう一度建ててみたい」と書いていた作者だが、今や日本庭園のある中古住宅を購入し、幸せな家庭生活を送っているようだ。 

この先またもやっちまうことがないことを、いちファンとして願うばかりである。

 

 

 

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