「弱者」と「強者」 - 真田丸の感想

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ドラマレビュー数 1,144件

真田丸

4.504.50
映像
4.50
脚本
4.50
キャスト
4.83
音楽
4.50
演出
4.50
感想数
3
観た人
4

「弱者」と「強者」

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
4.0

目次

弱者の生き方

このドラマのテーマは、「弱者」と「強者」の戦いだと思います。弱者の代表「真田家」と強者の代表「豊臣家」、「徳川家」です。そして、よく言われている、真田家という小さな家族の物語でもあります。真田家が、武田、織田、徳川、上杉、北条、豊臣などの「強者」と対峙していき、上手に生き抜いていきます。痛快な三谷幸喜ワールドの話が、これでもか、これでもかと出てきます。弱者の真田家は、その中で、決してへこたれません。うまく、「強者」の間を泳ぎ切っていきます。相手をわざと怒らせたり、謀略を働かせたり、ギリギリの線を行く。それは見事な泳ぎ方です。そして、それは、最後の大坂夏の陣まで続くのでした。

真田信繁

主人公の名前を、従来の講談物で有名な「真田幸村」ではなく、史実に忠実に「真田信繁」という名前にしたのは、歴史マニアの心を揺れ動かすと思いました。父親昌幸をはじめ、地方の小さな領主たち同士の駆け引きの物語から、大大名を巻き込んでの争いは圧巻でした。昨日は、あそこの大名に付き、今日は、この大名、明日は、あの大名に付くと言う、父親の弱者が強者を振り回すのは見事でした。昌幸に巻き込まれた大大名たちの苦虫を潰したような顔を覘いた時、思わずニンマリとしてしまいました。「真田丸」は、人間のしたたかさ、愚かさ、滑稽さ、勇敢さ、優秀さ、虚しさを見事に描いております。これぞ、乱世を具現化した優れた大河ドラマだと思いました。

また、真田家の家族たちには魅力的な人物が多く、それぞれの人物の言葉の掛け合いがリズムカルで絶妙でした。信繁が、兄信幸とともに、父親から多くのことを学び、成長していく物語は、目を見ひらくものがありました。ドラマが進む度に、信繁は大きく成長していきます。信繁も、父昌幸とともに、戦国乱世の中をしぶとく生き抜いていっていることは、まさに見物です。それと対比して、内野聖陽演ずる徳川家康が狸親父丸出しで、草刈正雄演ずる昌幸に、見事に散々振り回されるシーンは、歴史大河コメディードラマと言ってもよいほど、笑えるシーンが多かったのでした。笑えるシーンが多いから、ストーリーに破たんを来すということはなく、よく描かれてありました。このシーンだけでなく、ドラマの始めのシーンの1582年の武田家滅亡から1615年の大坂夏の陣までの真田と徳川の争いは、内野聖陽の老獪かつ情けのある名演技に尽きると思います。彼が家康役を見事に演じきったからこそ、真田側が魅力的に引き立ちました。家康は、2007年に、内野が主役で演じた山本勘助を彷彿とさせるキャラクターでした。また、家康と近藤正臣演じる本多正信とのボケとツッコミも、実にコミカルに描かれてありました。そして、昌幸が、今度は何をしかけてくるだろうと、毎回ワクワクしました。このドラマは、史実に忠実ですが、コメディタッチで描かれており、実に見所が多いのです。これが、これが、このドラマの醍醐味だと思います。

天下人秀吉

そのような争いをやらかしているうちに、真田家は、天下人豊臣秀吉と接触することになります。主人公信繁は、人質として、豊臣家の元に行き、魅力的な人物秀吉に大きな影響を受け、そこで、職務を与えられ、いろいろな人物と巡り会います。そして、その人物たちから、大いに愛されます。人物たちは、まさに三谷ワールドで色づけされて、生き生きとしていて、それぞれの個性が、とても豊かで魅惑的です。例えば、あまり世間では知られていない、平野長泰という人物は、「真田丸」では、大いにクローズアップされていて、サラリーマンの中間管理職のように見事に、その悲哀が描かれています。彼のボヤキは、かなり笑えます。大坂夏の陣では、徳川方から豊臣方に付くと、だだをこねて、周りの者たちから止められるのは、とても滑稽で、笑えるシーンでした。

ツンデレの三成

やはり、豊臣家では、信繁と石田三成のやりとりが絶妙でした。信繁や大谷吉継らを通して、三成は、従来から言われている四角四面なキャラクターではなく、ぶっきらぼうで誤解されやすいのですが、魅力的な人物になっています。史実で三成が対立したと言われる人物たちも、通り一遍な描写では描かれていません。特に、三成をかなり嫌悪していたと言われている加藤清正が、関ヶ原の戦いの後で、戦いの前に三成から言われた意向を汲んで、秀吉の遺児秀頼を命がけで守ろうとしたシーンは、心が揺さぶられました。このシーンには、伏線がありました。秀吉が生きていた頃に、清正はとにかく酒乱で、三成のところに、酔っ払って、時々やって来ますが、三成を怒鳴るのではなく、ただ単に、清正が三成と話をしたいと言うだだっ子のようなシーンがありました。そのシーンを思い出して、三成と清正の関係が、よく言われていた、ただの対立関係ではなく、豊臣家を守るために、お互いに認め合ったというところに、胸を打たれました。これは、従来まで、小説や歴史の本で描かれていた三成と清正の関係と全く異なるものです。キャラクター同士を新しい関係で結びつけるのは、まさに三谷ワールドです。

信繁見事に散る

天下の三谷幸喜だから、何かやってくれるぞと、非常に期待していた関ヶ原の戦いですが、ほとんど描かれていませんでした。これには、思わず脱力してしまいました。何なのか分からず混乱してしまいました。これは、故意に、計算を働かせて三谷氏がやっているのか、単にNHKの予算不足なのかは、分かりません。しかし、2000年に放送された大河ドラマ「葵 天下三代」のように、大々的にやれとは言いませんが、もう少し、天下を二分する、この大きな戦いを丁寧に描いて欲しいと思いました。しかも、真田家の名場面である第二次上田合戦も、あまり描かれていません。第一次上田合戦は、弱者が強者を見事に打ち破るという痛快なシーンを丁寧且つ見事に描かれていたので、第二上田合戦の描写は、意外で残念でした。関ヶ原の戦いと第二次上田合戦のシーンを省略したことは、未だによく分かりません。関ヶ原の戦いで、西軍について、その西軍が敗北したため、真田家は、初めて敗北を受け入れざるを得ませんでした。これが、ドラマ上、初めての弱者の敗北です。

弱者の信繁は、単なる弱者として、新たな生活の場で生きることを強いられます。そこでは、真田家の家族団らんの様子が描かれ、ひとときの平安が訪れますが、信繁のここで悶々として、焦りが募る気持ちが、よく描かれています。強者へ再び挑みたいという気持ちは、父昌幸が、再び活躍も出来ずに、世に出ることなく、虚しく亡くなったことと、大いに繋がっています。自分も、父と同じようになるのではないかと思っていました。しかし、乱世は、信繁を再び出て行く機会を与えます。大坂城での五将をはじめ、弱者である豊臣方には、個性溢れる人物が、大いに出てきています。三谷ワールドが炸裂したのは、日本史では、愚将と言われている大野治長についてです。「真田丸」では、治長は、豊臣家を必ず守り、徳川方と戦う明確な意識を持って、信繁たち浪人衆の味方となり、見事に活躍していきます。そして、このドラマでは、淀殿は豊臣家を滅ぼした愚かな人物としては、描かれておらず、淀殿や治長の代わりに、権力を持ち、豊臣方を滅亡に持って行く人物として、治長の母親の大蔵卿局が出てきます。弱者の中にも強者はいるのです。治長は、母親に対しても、自分の意見を持って、論理的に明確に反論していきます。また、豊臣秀頼も、巷で言われている、図体だけでかくて、自分の意見を持たない愚かな人物ではなく、大坂城の五将に対しても十分に耳を貸し、豊臣家をまとめていく器量がある人物に、描かれています。このような新しい視点での人物の描写が、「真田丸」には、よく描かれており、第一話から最終話まで、存分に描かれています。二度目、三度目と、再び観たくなる大河ドラマです。

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他のレビュアーの感想・評価

描きたかったのは、真田家の生き様

父上の方が目立つ前半。それで良い。真田丸は放送前、あることについて不安視されていた。「真田幸村って有名だけど、大阪の戦いの一発屋でしょ?」というもの。そんな武将が大河ドラマの主役でやっていけるのか、と。確かに前半の信繁(幸村)は、主人公ゆえに目立ってはいたものの、目立った活躍はあまり無かった。それでも面白かった。何故か。一つは、周りを囲んでいる登場人物が、あまりにも色濃い連中のオンパレードだったこと。そしてもう一つは、そもそも話の主軸は「真田幸村」ではなく「真田家」を描いていた、ということだ。全話視聴した人なら分かるだろうが、この物語は真田幸村を主人公とはしているものの、前半(特に信繁が大阪に上洛するまで)の主人公は別にいると思ってしまう。父、真田昌幸である。実際それは思い込みでもなんでもなく、活躍や目立ち方を見ていればそう思うのは当然だ。おそらく脚本の三谷さんもそれを狙っていたに違い...この感想を読む

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真田丸は今年一番のドラマになるかも

今までにない大河今まで大河をみてた根っからの大河ファンにはちょっとうけつけないような脚本だが、初めて大河を見る人たちにとっては各登場人物が非常に人間臭くて現代人が共感できる部分が多く、今までと違う現代人と共通する感覚が共感を生み出すことで違和感を感じることが共感につながり登場人物の気持ちにすっと入っていける内容になってます。とりあえず要所要所でウザい長澤まさみがすごくいい。信繁(幸村)の幼馴染を演じる長澤まさみが要所要所でウザい。演技もセリフも空気が読めてない。奔放で馬鹿正直である意味すごく素直でまっすぐだからウザいけど憎めず、要所要所ででてきて信繁の役に立とうとする姿がすごい胸を打たれる。いままでのドラマでここまでウザいと思われる演技をとことんやった役者はいないんじゃないだろうか。ネットでもあまりのウザさに一時期話題に。裏をかいてくる偉大な父昌幸昌幸(信繁の父)演じる草刈正雄の演技は...この感想を読む

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