もし、家族がうつ病になったら…?! - フリーター、家を買う。の感想

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ドラマレビュー数 1,147件

フリーター、家を買う。

4.254.25
映像
4.00
脚本
4.38
キャスト
4.75
音楽
3.88
演出
4.13
感想数
4
観た人
13

もし、家族がうつ病になったら…?!

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

「フリーター、家を買う」を視聴した感想です。


この作品は、二宮和也さん演じる主人公誠二が、浅野温子さん演じる母親の病気をきっかけに、フリーターという身の上でありながら家を買うことを目標にして、成長していくストーリーです。

何をしても中途半端で、すぐに仕事を辞めてしまうような誠二が、母親のうつ病をきっかけに変わっていく姿は、応援せずにはいられない一生懸命さがあります。

また、誠二の成長だけではなく、父親との確執や嫁ぎ先で奮闘する姉の様子。嫌がらせをするお隣さんや、誠二の職場の人達まで、ストーリーが進むごとに変化があり、見所がたくさんありました。
毎回、先の気になるような内容だったと思います。

ここは自分の居場所じゃない…


第一話では、すぐに就職先を辞めてしまったり、アルバイト先を辞めてしまう誠二。
「ここは俺の居場所じゃない」と、大手の企業に転職を希望するも、なかなかうまくいきません。
いつしか就職活動どころか、引きこもりのようになってしまう誠二。
日々の苛立ちを母親にぶつけてしまいます。

この腐ってダメな誠二は、気持ちも分かるがやっぱりあまちゃんで、情けない感じがします。
こんな二宮くんは見たくない、といった感じですね。
しかし、ここから這い上がっていく誠二の姿を見ていると、熱くこみ上げるものがあります。
最初がダメすぎるので、誠二の成長ぶりには、感情が大きく揺さぶられる感じがします。

また、誠二が人を仕事の内容で見下したり、プライドだけが高く臆病な性格なのは、父親を見ていると「なるほどなあ」と思わされます。
この父親に育てられたら、こうなってしまうよね、と納得してしまうようなリアリティーがあります。
こうした家族の関係性も、よく考えられていると思いました。

介護の苦悩を思わせる


また、誠二の成長物語に加え、この作品では「うつ病になってしまった家族と向き合う」というテーマも、重要なポイントになっています。

第一話では、会話もできず、同じ言葉を繰り返すことしか出来ないような、重度のうつ病にかかった母親の姿が印象的でした。

台所にうずくまり、「今日も死ねませんでした」と繰り返す浅野温子さんの姿は、思わず息を呑んでしまうような衝撃がありました。

回が重なるごとに、母親の病状も変化するのですが、そういった所も演じ分けていて、非常に演出が細かいと思いました。


第4話では、果てのないうつ病患者の介護に疲れてしまった誠二が、泣きながら「おふくろが本当にいなくなったら、俺はほっとすると思う」と吐露するシーンがあります。
姉は嫁いで家を出ていき、父はうつ病への偏見から介護に消極的。
そんな状況で、誠二は一人で母親の介護に追われ、ついにキャパシティがいっぱいになってしまいます。

このシーンでは、出口の見えない介護の日々への、疲労と孤独、絶望感が誠二からほとばしるようで、目を離せなくなってしまいました。

実際に介護に苦労している人は、こうした苦悩があるのだろうと想像させられるような、説得力のある演技だと思いました。

しかし、それだけでは終わらず、最後には母の手にハンドクリームを塗る誠二の姿でこの話は終わりになります。

ここでも、二宮さんの「母さん…ハンドクリームを塗ろうか」というセリフの中に、母への苛立ち等の負の感情をぐっとこらえ、精一杯の優しさを、絞り出すようにしているのが伝わってきます。
言いたいことを、ぐっと飲み込んでいるんですよね。
その誠二の愛情の深さと、母の穏やかな表情が、病気の悲しさをより表現しているように見えました。

また、誠二だけではなく、頑なな父親もまた、うつ病への理解と、妻の病気と向き合う事で成長していきます。

竹中直人さん演じる誠二の父親は、誠二とはまた違った感情を妻の病気に抱いています。
単純に妻の病気と向き合うのが怖いということや、自分のせいで妻を追い詰めたのではないかという後悔、うつ病なんて心が弱いから発症したのだという、間違った解釈。

そうした様々な負の感情を乗り越えて、妻の病気と向き合っていく父親の姿には、感動させられました。

竹中直人さんは、頭が固く、融通の効かない父親を、威圧感たっぷりに演じていました。

一見して嫌な人間にも見えますが、不器用で弱いところも実はあり、ストーリー中盤ではその辺りも明らかになっていきます。

また、誠二の家族だけでなく、誠二の職場の人々や、お隣の西本さんといった人達まで、刻一刻と状況が変化していきます。

香里奈さん演じるゼネコン社員と誠二の、くっつくのかくっつかないのか?判然としない関係も面白いです。

また、若き日の丸山隆平さん(関ジャニ∞)も、明るいキャラクターをよく演じていると思いました。本当に演技がうまいと思います。

岡本倫さんとのやり取りも、見ていて微笑ましく、最後には感動させられました。

最初はクセのあるような人々も、最後には理解できるような気持ちにさせてくれる、そんな作品だと思いました。

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他のレビュアーの感想・評価

社会を小分けにしてみたら

印象的なシーンフリーターは家を買えないんじゃないかなあ、と思うのですが、パートや派遣さんでも勤続年数が長ければ、住宅ローンの審査が通ったりするから、何か裏技みたいなものを悲喜こもごも交えながら紹介してくれるドラマなのかな?なんて予想は見事に裏切られました。あまり明るい部分のないドラマだったように思います。家を買うからといってウキウキルンルン気分、と言うわけではないんですね。最後に引っ越しの片づけをしているシーンも、もちろん嬉しさは伝わってくるのですが、しみじみと嬉しいといった感じです。色々あったなあというのと、これからがまばゆいばかりに明るいわけではない、というのとで、家族にとって「ここはまだ通過点」なのだなと感じさせられる作業風景でした。見ていると毎回、心がガタつく。自分の生活を振り返っても、このガタつきを感じたことがある。前回倒れたものを、今回立て直しても、今回もどこかがガタついて...この感想を読む

4.04.0
  • なかがわみきなかがわみき
  • 237view
  • 2379文字
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奥が深いドラマだと思います。

仕事に対する意欲ってなんだろう。自分は何のために仕事をするんだろう・・・こういうことを考える人は少なくないと思う。大学や専門学校、高校を卒業したから働くというのが今の世の中の流れだと思うが、主人公の誠司もきっと同じように思い悩んだんだと思う。実家暮らしなら職を失ってもいつかきっと何とかなると思うのは自然な流れだし中年の職探しじゃないんだから、簡単に次の仕事だって見つかると思ったと思う。実際私も就職先でどんなことがあるかわからないけど「いやだったら転職すればいいや」くらいに思っていた。だから、何のために働くのか、そういう迷いに直面した若い世代は「なんだってできるだろう」と思って会社を辞めていくんだと思う。誠司がだらしないように映ってしまうが、今の世の中の若者たちの考え方がリアルに描写されていると思う。誰にでも可能性のある病気うつ病は誰にだって起こりうる病気。このドラマはお母さんが重度のう...この感想を読む

4.04.0
  • なおぞぅなおぞぅ
  • 141view
  • 2092文字

共感できた

二宮くん演じる役がフリーターで実際私もフリーターになってしまったのですごく共感できるところがたくさんありました(笑)仕事の面接でも落ち続けていたり、親からも文句を言われたりするとやる気もなくなるし、自分が生活できればそれでいいって思うのもすごい共感して。でも親が心の病気になってしまったところは辛いなと思います。私も親ではないですが経験があるのでそれを理解しない父親なんか多分許せないだろうなって見てて思いました。母の看病をしながら工事現場で働いていくけれど、工事現場って大変だし。でもその中で仲間や友情が芽生えていくのが良かったです!香里奈さん演じる役の強さもすごくて、こういう女性は憧れます!そんな2人が段々心を許し合っていくのもいいなぁと思いました。大人って難しいけれど、怒ってくれる大人が周りにいることは良いことだなってこれを通して思いました。二宮くんも周りの人に助けられながら母のことだっ...この感想を読む

4.04.0
  • ねこ娘ねこ娘
  • 137view
  • 546文字

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