もし、家族がうつ病になったら…?!
「フリーター、家を買う」を視聴した感想です。
この作品は、二宮和也さん演じる主人公誠二が、浅野温子さん演じる母親の病気をきっかけに、フリーターという身の上でありながら家を買うことを目標にして、成長していくストーリーです。
何をしても中途半端で、すぐに仕事を辞めてしまうような誠二が、母親のうつ病をきっかけに変わっていく姿は、応援せずにはいられない一生懸命さがあります。
また、誠二の成長だけではなく、父親との確執や嫁ぎ先で奮闘する姉の様子。嫌がらせをするお隣さんや、誠二の職場の人達まで、ストーリーが進むごとに変化があり、見所がたくさんありました。
毎回、先の気になるような内容だったと思います。
ここは自分の居場所じゃない…
第一話では、すぐに就職先を辞めてしまったり、アルバイト先を辞めてしまう誠二。
「ここは俺の居場所じゃない」と、大手の企業に転職を希望するも、なかなかうまくいきません。
いつしか就職活動どころか、引きこもりのようになってしまう誠二。
日々の苛立ちを母親にぶつけてしまいます。
この腐ってダメな誠二は、気持ちも分かるがやっぱりあまちゃんで、情けない感じがします。
こんな二宮くんは見たくない、といった感じですね。
しかし、ここから這い上がっていく誠二の姿を見ていると、熱くこみ上げるものがあります。
最初がダメすぎるので、誠二の成長ぶりには、感情が大きく揺さぶられる感じがします。
また、誠二が人を仕事の内容で見下したり、プライドだけが高く臆病な性格なのは、父親を見ていると「なるほどなあ」と思わされます。
この父親に育てられたら、こうなってしまうよね、と納得してしまうようなリアリティーがあります。
こうした家族の関係性も、よく考えられていると思いました。
介護の苦悩を思わせる
また、誠二の成長物語に加え、この作品では「うつ病になってしまった家族と向き合う」というテーマも、重要なポイントになっています。
第一話では、会話もできず、同じ言葉を繰り返すことしか出来ないような、重度のうつ病にかかった母親の姿が印象的でした。
台所にうずくまり、「今日も死ねませんでした」と繰り返す浅野温子さんの姿は、思わず息を呑んでしまうような衝撃がありました。
回が重なるごとに、母親の病状も変化するのですが、そういった所も演じ分けていて、非常に演出が細かいと思いました。
第4話では、果てのないうつ病患者の介護に疲れてしまった誠二が、泣きながら「おふくろが本当にいなくなったら、俺はほっとすると思う」と吐露するシーンがあります。
姉は嫁いで家を出ていき、父はうつ病への偏見から介護に消極的。
そんな状況で、誠二は一人で母親の介護に追われ、ついにキャパシティがいっぱいになってしまいます。
このシーンでは、出口の見えない介護の日々への、疲労と孤独、絶望感が誠二からほとばしるようで、目を離せなくなってしまいました。
実際に介護に苦労している人は、こうした苦悩があるのだろうと想像させられるような、説得力のある演技だと思いました。
しかし、それだけでは終わらず、最後には母の手にハンドクリームを塗る誠二の姿でこの話は終わりになります。
ここでも、二宮さんの「母さん…ハンドクリームを塗ろうか」というセリフの中に、母への苛立ち等の負の感情をぐっとこらえ、精一杯の優しさを、絞り出すようにしているのが伝わってきます。
言いたいことを、ぐっと飲み込んでいるんですよね。
その誠二の愛情の深さと、母の穏やかな表情が、病気の悲しさをより表現しているように見えました。
また、誠二だけではなく、頑なな父親もまた、うつ病への理解と、妻の病気と向き合う事で成長していきます。
竹中直人さん演じる誠二の父親は、誠二とはまた違った感情を妻の病気に抱いています。
単純に妻の病気と向き合うのが怖いということや、自分のせいで妻を追い詰めたのではないかという後悔、うつ病なんて心が弱いから発症したのだという、間違った解釈。
そうした様々な負の感情を乗り越えて、妻の病気と向き合っていく父親の姿には、感動させられました。
竹中直人さんは、頭が固く、融通の効かない父親を、威圧感たっぷりに演じていました。
一見して嫌な人間にも見えますが、不器用で弱いところも実はあり、ストーリー中盤ではその辺りも明らかになっていきます。
また、誠二の家族だけでなく、誠二の職場の人々や、お隣の西本さんといった人達まで、刻一刻と状況が変化していきます。
香里奈さん演じるゼネコン社員と誠二の、くっつくのかくっつかないのか?判然としない関係も面白いです。
また、若き日の丸山隆平さん(関ジャニ∞)も、明るいキャラクターをよく演じていると思いました。本当に演技がうまいと思います。
岡本倫さんとのやり取りも、見ていて微笑ましく、最後には感動させられました。
最初はクセのあるような人々も、最後には理解できるような気持ちにさせてくれる、そんな作品だと思いました。
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