女性読者から見た『遊☆戯☆王』キャラクターの魅力 - 遊☆戯☆王の感想

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遊☆戯☆王

4.634.63
画力
3.88
ストーリー
3.75
キャラクター
4.13
設定
3.75
演出
4.50
感想数
4
読んだ人
13

女性読者から見た『遊☆戯☆王』キャラクターの魅力

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
5.0
設定
4.0
演出
4.5

目次

“罰ゲーム”!! 闇遊戯に魅了されて

私は『遊☆戯☆王』が大好きだ。もっとハッキリ言ってしまえば、「闇遊戯」というキャラクターに魅了されてしまったのだ。彼は、どうしようもない悪人に“闇のゲーム”を持ち掛け、勝利し、負けた相手に“罰ゲーム”という名のお仕置きを食らわせる。刃物や火、スタンガンといった危険物を用いたゲームを仕掛け、そして必ず勝利する。罰ゲームの内容も中々恐ろしいものが多く、私がいくら闇遊戯好きであろうと彼の罰ゲームは食らいたくない……のだが、はたから見ている分には「カッコイイ」の一言。彼が悪人を精神崩壊させようが、全身火だるまにしようが、「なんて怖い人なんだろう」とはあまり思えないのが不思議だ。悪役が、どうしようもないクズばかりなので、爽快感の方が勝るからかもしれない。主人格の表遊戯がピンチになった時、闇の人格が現れ、悪人を倒す。謎だらけのダークヒーローとして、闇遊戯はストーリーの序盤で次々に悪人を裁いていく。この漫画は「髪型が奇抜な漫画」としてよく挙げられるが、確かに髪型はかなり個性的だ。しかし私が初めて闇遊戯を見た時、そんなことはどうでもよくて、彼の残酷なまでの真面目さと、意思の強そうな眼差しと、悪人を裁く姿だけが強く印象に残り、今に至る。彼の髪型は確かに変わっているが、注目すべきはそこではない。彼の中身である。

ちょっと残念? 完璧すぎないダークヒーロー

真面目でカッコいいダークヒーローである闇遊戯だが、よく見ていると、色々とツッコみたくなる言動がある。例えば、王国編の序盤。城之内が、自分の妹が近い内に病気で視力を失ってしまうと語り、俯いて泣いてしまうのだが、闇遊戯が突然現れ「元気出そーぜ!!」とメッチャいい笑顔で城之内に話しかけるのだ。しかも大ゴマのドアップである。闇遊戯は、カードゲーム大会の賞金を手術代にしてはどうかと城之内に伝えたいだけなのだが、若干KYである。「あきらめるな! このカードがあるぜ! 決闘者の資格であるスターチップ! そのひとつを受け取るんだ!」……このテンションの高さと、大会出場の強制ともとれるような強引な勧誘。友達想いなのは結構なことだし、城之内は単純なのでストーリーはそのまま進行するが、闇遊戯が少々変な人に見えてしまったシーンだ。仲間だと認識した人物には優しく接するが、敵と認識した場合には態度が全く違うところもポイント。とにかく、口が悪い!! インセクター羽蛾との初めての決闘の時だけでも、かなりの数の暴言が飛び出す。「この島で一番弱いんじゃねーか! お前!」「お前弱いだろ!」「この弱昆虫(よわむし)野郎!!」……自分の形勢が有利になってから言うところがミソ。相手を指差して、思い切り煽るのだ。しかし何故か闇遊戯をイヤな奴とも思えないのだが、これはやっぱりインセクター羽蛾の言動がクズなせいだろうか。敵に対しては態度の悪い闇遊戯だが、仲間の前ではお茶目な面も飛び出す。「もっと腕とかにシルバー巻くとかよ!」はかなり有名な台詞だろう。自身のファッションセンスでもって表遊戯にアクセサリーのアドバイスをするのだが、あまりファッションセンスはよくないようだ。(しかし後日、アドバイス通りに表遊戯がシルバーアクセまみれのファッションをしたところ、今度はそれに対して文句を言っていた……。オイオイ!)女の子に一切興味が無さそうなのは、女性読者にとっては、いいのか悪いのか……。表遊戯がセッティングした杏子とのデートでも、彼が興味を示したのはカードやゲーセンのゲームのみ。表遊戯が杏子のナイスバディにメロメロになっていたのとは、真逆の反応だ。表遊戯なら、杏子がミニスカ姿でダンスのゲームをやっているところを見たら、間違いなく鼻の下を伸ばしていたことだろう。ちなみにプールデート回の最後のコマには、闇遊戯が水着の杏子に手を引かれて、ちょっと照れているシーンがある。初期は女の子にも興味があったのだろうか?これらの、ちょっと残念な部分がスパイスとなり、彼はより魅力的なダークヒーローとなっている。完璧超人では面白くない。ルールは絶対、悪人は許さないという正義感の強さ、そして――KYと口の悪さ、ファッションセンスの無さ、である。女の子に興味がないというのは、“愛すべきゲーム馬鹿”とでも思っておくしかない。そこがちょっと可愛げがあって、逆によかったりするのだが。かなりキツイ言動が多く、一見すると嫌われそうな性格ではあるが、男女共に嫌われていないように感じるのは、やはり「ちょっと残念でカワイイから」であろう。むしろ好感度がグンとアップする。

誰も到達できない! 海馬瀬人という人

どのキャラクターも、大抵「○○系」というカテゴリ分けができると思う。例えば、無口でクールであれば「綾波レイ系」(特定の既存のキャラクターに似ている)、甘えん坊で妹ならば「妹系」といった具合に。しかし海馬の場合、カテゴリ分けが容易ではない。闇遊戯は「ダークヒーロー系」に当てはめられるのだが、海馬は完全な「悪役」ポジションでもなく、かといって単なる「お兄ちゃん系」キャラとするには色々と違和感がある。もう、「海馬瀬人系」でいいのではないだろうか。それほど彼の性格は唯一無二であると思う。また、「海馬瀬人系」のキャラクターが他の漫画やアニメにいないというのは特筆すべきことだ。変人キャラや突飛なことをするキャラクターは沢山見かけてきたが、ここまでアクの強いキャラクターは他に思い浮かばない。原作者は彼の生い立ちを細かく設定しており、それらの経験が海馬の人格形成に及ぼした影響についてもインタビューで熱く語っていた。まるで生身の人間のように一から創られたキャラクターだからこそ、唯一無二の存在として育っていったのではないだろうか。原作者インタビューによれば、義父は虐待まがいのことをする酷い男だったが、幼い海馬はそんな義父を、それでも父親だと思っていたという。その義父が、自分のせいで自殺してしまったのは、海馬にとっては想定外のことで、多大なるショックを受けたという。“自分に負けた義父が、死んだ”――ここで海馬は、敗北は死を意味するのだと強く思い込んでしまった。彼にとって敗北と死は直結しているもので、彼は敗北を恐れている。だからこそ余計に、ゲームでの勝敗にはこだわりがある。原作者がストーリーを書き下ろした劇場版『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』では、闇遊戯と再び決闘し勝つために、あんなことやらこんなことまでしてしまう。これはあくまで漫画版の考察なので劇場版のネタバレは避けることにするが、彼はとにかく闇遊戯に勝利したいようだ。

セトとキサラ

青眼の白龍=キサラとの悲恋は、古代編を語る上では絶対に外せない。カードゲームメインではないエピソードだからか、古代編でリタイアした読者も多いと聞くが、何て勿体ないことを! 海馬の前世である神官セトは、現代の海馬よりも性格は若干マトモだが、やはりどこか冷たいところのある男。そのセトが、心から愛した女性がいた――このギャップが何ともたまらない。愛だの恋だのとは一番無縁そうに見えるキャラなのに、古代エジプトで神官をやっていた頃、彼はキサラという女性に惹かれ、そして愛したのだ。その記憶は、現代の海馬には殆ど残っていないようだが、イシズ戦において一瞬だけ思い出すシーンがある。その時の海馬の心に、キサラが死んだ時の深い悲しみが蘇るのだが、個人的にはこの漫画における一番の名シーンだと思う。もし現代において海馬が誰かと恋愛をするとしたら、やはりキサラのような、大人しいタイプの女性だろうか。海馬が自己主張の激しい性格をしているので、その伴侶になるなら、海馬に黙って付き従うような従順なタイプが合うだろう。そうなると海馬の亭主関白になりそうな感じがするが、セトも海馬も愛する人の言うことは大人しく聞きそうな気がするので、実際はカカア天下かもしれない(ちょっとカワイイ)。実際、イシズ戦では、青眼の白龍のカードの存在が、海馬のその後の行動を変えた。いつも自分勝手で、色々と横暴な海馬だが、青眼の白龍から受けたメッセージには従順に従った。もしかして、この漫画で一番強いキャラクターは、キサラなのではないか……?

遊戯 王

「遊戯 王」は、最終話のタイトルである。遊戯(表遊戯)と、王(闇遊戯)の別れを現した、秀逸なタイトルだ。闇遊戯は、表遊戯の身体を借りている。古代エジプトのファラオの幽霊が、生身の人間に乗り移っているという状態だ。しかも表遊戯の心の中に、部屋まで作ってしまっている。完全に乗っ取られている。私なら、闇バクラの存在に気づいてしまった獏良了のように、混乱してしまうに違いない。しかし表遊戯は、闇遊戯の存在をすんなりと受け入れ、生活していくことになる。悪人を裁くダークヒーロー、しかもファラオの魂ともなれば、受け入れる側は相当大変だと思うのだが、表遊戯には負担になっていないようだ。この二人はとにかく仲が良く、喧嘩らしい喧嘩をするシーンはない。意見の食い違いはあっても、どちらかが相手に歩み寄るか、譲歩する。お互いに悪口を言い合ったりもしない。この漫画の重要なテーマの一つ「友情」が、主人公2人ですでに表されている。闇遊戯は上記の通り、性格的にはかなり強気でキツイ方だと思うのだが、表遊戯の大らかさの前では、その性格は全く出ない。そして二人はその仲を保ったまま、ラストの「闘いの儀」において、永遠の別れを迎える。闇遊戯を冥界へ送り出すと決めた際の、表遊戯の気持ちを考えると、胸が締め付けられる。この漫画は、どんなピンチも“友情のゴリ押し”で解決するという強引な展開があるのだが、逆に言えばそれだけこの漫画では、友情というのは強い意味を持つのだ。あまりにも仲の良い2人だからこそ、別れのための決闘は、あまりにも辛いものだった。しかし闇遊戯は、現世にいてはいけない存在。表遊戯は本気で闇遊戯と戦い、そして、勝った。その勝利は、闇遊戯との別れを意味するもの。しかし闇遊戯は、冥界へと還る最期の瞬間まで、カッコいいダークヒーローのままだった。――そして、物語は終わる。余計な説明はいらない。あっさりとした、悲しみの残る、寂しさの滲む、それでも前向きな、いいエンドだった。その余韻は、連載が終わってかなり経った今も、ずっと心の中に残っている。

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  • フクロウフクロウ
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5.05.0
  • hirohiro
  • 104view
  • 633文字

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