きれいにまとまってはいるものの… - 真夏の方程式の感想

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真夏の方程式

3.003.00
映像
3.25
脚本
3.25
キャスト
3.75
音楽
3.25
演出
2.75
感想数
2
観た人
2

きれいにまとまってはいるものの…

3.03.0
映像
3.5
脚本
3.5
キャスト
3.5
音楽
3.0
演出
3.0

目次

「真夏の方程式」を視聴した感想です。


面白かったとは思うのですが、この作品を映画にする価値を考える時に、映像の美しさしか語るべき所がないような気もします。

片田舎の海辺の風景や、のんびりした町並み、深海の美しさは良かったと思います。

また、ストーリーも謎が謎を呼ぶような、中盤で更に謎が深まっていくような内容で、先が気になるような面白さがありました。
事件が起こるまでの、前半のストーリーの流れもスムーズで、時間があっという間に流れていました。

また、テレビドラマでは、バディのような関係だった岸谷も、今回は基本的にはあまり関与して来ず、ちょうどいい距離感だったのではないかと思います。
映画なので、テレビドラマのキャラクターは出てこないのかと思ったのですが、やっぱりちょっと出番はあるんですね。
テレビドラマと同じように、がっつり出演しなかったのが良かったです。
映画とドラマとの、差別化にならないですからね。

このように、感想を文字に起こせば、いいことばかりになってしまうのですが、映画を見終わった後に残る、余韻のようなものはありませんでした。
スカッとするような感じも、すっきりするような感じもなく、恐怖や驚き、心が暖まるような感じも、後味の悪ささえありませんでした。

心に残る物が何もないんですよね。
心が動かされないというか、感動がないんですよ。

この作品を映画にして、観客に何を伝えたいのか?というのが伝わってきませんでした。
それは言い換えれば、映画にわざわざするほどの作品ではない、という事なのだと思います。

確かにストーリーは何も破綻していないし、海の映像もきれいだし、クレームを受けるような箇所は見当たりません。
その点は優等生的にきれいに作られていると思います。

しかし、ただそれだけ、という感じもします。
ですので、全体のストーリーやトリックは、二時間のテレビドラマと同じくらいのスケールのように見えてしまいました。
テレビドラマとしては面白いけれど、その域を超えてこない感じですね。

やっぱり映画として作っているのであれば、ストーリーの整合性よりも、心に残るような強烈なメッセージが欲しかったです。

そのような心に強烈に残るシーンが、わたしとしてはあまり無かったので、映画としては残念だと思いました。

成実は自分で道を決めるべきだった

また、そのように映画の後味が無味無臭になってしまっている原因は、湯川が成実を救済してしまったからではないか、と思います。

成実は13歳の時に殺人を犯し、それが家族の秘密となっていたキャラクターです。
この秘密のために、再び事件が起きるのですが、全てが明るみになった後、湯川がフォローを入れるシーンがありました。

しかし、ここは敢えて成実に、一人で決着をつけさせるべきだったのではないかと思います。

育ての父の気持ちを知って、開発の反対運動はどうするのか、とか。二人の父親をどうするのか、とか。
過去の罪の償いはどうするのか、とか。
それがこの作品の帰結するところであり、テーマなので、湯川が道を示してはいけないですよね。

気持ちは分かりますが、ちょっと優しすぎる気がしました。テーマの割りに、成実の処遇が甘すぎますよね。
ここがしっかり描けていれば、映画の印象は違ったはずです。
しかし、事件後の成実については、何も描かれておらず残念でした。

また、家族の抱えている「秘密」についても、「娘が本当の娘ではないこと」、「娘の殺人」、「そしてそれを全て知っている父親」など、申し訳ないですがありがちな話だと思いました。
作品内で湯川が、「家族みんな秘密を抱えている」というように煽っているので、期待して見ていたら、ちょっと肩透かしを食らった気分になりました。

特に成実の出生については、あまりにも捻りなく血の繋がらない娘だったので、「映画なのにいいの?」と思ってしまいました。
こういう言い方もどうかと思いますが、一時間ドラマの「相棒」の方が、まだ意外性のあるストーリーなんじゃないかな、と思いました。

懐かしい気持ちになる、恭平の夏休み!


ただ、湯川と恭平のシーンは、みんな良かったと思います。
子供嫌いの湯川が、恭平と打ち解けていく過程は、見ていて微笑ましかったです。
アレルギーが出るほど嫌いな子供に、ペットボトルロケットの実験をしてみせたり、向い合わせで食事を取ったり、湯川も案外良いところがあるな、というギャップが見られて良かったです。

恭平のシーンは、子供の頃の夏休みの憧憬が甦るようで、懐かしい気持ちになりました。

海の底を、ペットボトルロケットで見るために、何度も何度も実験を行うシーンは、正に全力の夏休みという感じで、爽快さがありました。

早い段階から、成実の父が犯行を行ったことを湯川が勘づき、同時に恭平を心配しているのも人間味があっていいと思いました。
最後に湯川が「君は一人じゃない」とわざわざ伝えに来るのも優しいですよね。

恭平は最後に少し大人びた顔で都会に帰っていきます。
ちょっと大人になった夏、という締め方も良かったです。

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