探偵要素が全然無いんですけど……
探偵の物語を期待していたら、全然違った…!
「悪夢探偵」を視聴した感想です。
タイトルから想像するに、もっとマンガのような内容なのかと思いましたが、とんでもなかったです。
作品の、根幹にあるのは、「自殺願望」ということでいいんでしょうか。
「死にたいという欲求」との戦いみたいなことなんでしょうかね。
主人公の影沼京一からして死にたがっていて、作品全体に陰鬱な雰囲気が漂っています。
おぞましい映像の連続で、まさに「悪夢」という感じです。
血も沢山流れますし、個人的には苦手な部類の映画です。
それでも、「この先どうなるんだろう?」とストーリーに引き込まれますし、痛々しいのに不思議と目が離せません。
サスペンスともミステリーともカテゴライズできない作品だと思いました。
視聴した後の、緊張感がほどけてホッとする感じは、ホラー映画を見た後に一番近いかもしれません。
ストーリーは、死への絶望の中、それでも生まれた幸福を思いだし、「死にたくない」という強い意思を慶子取り戻すという、前向きな終わり方だったと思います。そこは好感が持てました。
でも、もう一度見たいとは思わないですね。
刺激の強いシーンが多いので、何度も見たい作品ではないと思ってしまいました。
また、映像面では、カメラワークがちょっと揺れすぎの所が気になりました。
何が映っているのかが分からず、モヤモヤしました。
「嫌だ、嫌だ…」超ネガティブモンスター主人公の誕生!
また、影沼の冒頭の「嫌だ嫌だ…」というセリフも、近年稀に見る不気味さと陰鬱さで、「本当にこの人が主人公なの?」という感じでした。
その次に登場したときには、首を吊るのを失敗していますからね…。
類を見ない主人公像ですし、インパクトは抜群です。
普通、主人公って見ている人に好かれようと描くと思うんですが、そういう感じが一切しないですね。
そういう意味では面白いキャラクターだと思います。
しかし、あれだけ人の夢に入るのを嫌がっていた影沼が、なぜ最終的に慶子を助けようと思ったのか?は、ちょっと説明不足だったかなと思います。
また、影沼は母親に殺されかけた過去があり、死にたいと思っているのは分かりますが、それ以外の人間性が伝わって来なかったのも、勿体ない感じがしました。
人の夢に入れるのか、それとも人の心の中に入れるのか、能力の設定も曖昧で、時々少し意味が分からない所もありました。
また、そこがぼやけていると、影沼の本当の苦しみもよく分からないように感じました。
人の夢に入れる(心の中に入れる?)ような、強烈な個性がありながら、それに見合うだけのキャラクターになっていなかったのは、すごく残念です。
こちらは「悪夢探偵」というタイトルから、探偵作品や、キャラクター作品を期待しているので、ちょっと肩透かしを食らった感じは否めません。
また、女刑事の慶子に関しても、キャラクターの裏付けが浅い感じがしました。
慶子もまた、自殺願望を心の内に秘めているキャラクターですが、なぜそうなったのか?が説明不足だったかなと思います。
「なぜこうなった?」という自問自答に対して、内なる自分は「分からない」と言う…。
確かに現実的な事を考えると、死への羨望が心に沸き上がるような精神状態では、「なぜ死にたいのかも、もはや分からない」というセリフもアリなのかな、と思います。
ただ、それは慶子の個人的な自己分析に止めておいて、「自殺願望を抱くまで、慶子が精神的に追い詰められている」所が見ている人に伝わる演出があれば、もっとリアリティーがあったかなと思います。
例えば、慶子自身はストレスを自覚していなくても、ストレスを感じたときに無意識にするクセがある、というような事です。
ただ、慶子の夢か現かの境界線が、だんだん分からなくなっていく演出は良かったです。
真相心理の自分と、現実の自分が近づいていくようでした。
0の設定については、言及するのはやめよう…!
また、0は最後は死んでしまいますが、目を覚ます展開ではダメだったのですかね。
0は危篤状態にありながら、電話口で人の夢に入り、殺人を犯していました。
0の電話口でのセリフは、絶望をちらつかせ、死へ誘う感じがしました。
夢に入った慶子は、0の真相心理に触れています。
それを真相心理の救済と捉えるなら、死ぬよりは生きて罪を償う展開の方が、納得はいく気がしました。
また、結局0の破壊願望はどこを目指していたのか?もよく分かりませんでした。
「すごいことやってやろうぜえ!」みたいなセリフもありましたが、あまりに手がかかる犯行ですし、それで何を得られるというのでしょう。
犯行に際して、精神的な愉悦があったのかも判然とせず、「何がしたいんだ」という感じは見ていてしました。
それにしても、どうやって意識を失って、携帯を持って話していたんですかね…。病院関係者にもバレずに…。
携帯の持ち主も特定されませんし…。
まあそのあたりは言及しませんけど…。
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