ハラがコレな必要があったのか? - ハラがコレなんでの感想

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ハラがコレなんで

3.003.00
映像
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脚本
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キャスト
3.00
音楽
3.00
演出
3.00
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1
観た人
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ハラがコレな必要があったのか?

3.03.0
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.0

目次

風が吹いたら、どーんといけばいいんだから

「ハラがコレなんで」を見ての感想です。
素直に面白い部分もありますし、つまらないと感じてしまう部分もありました。
一本の作品の中で、面白さのムラがあるように感じてしまいました。

具体的に言うと、まず光子のキャラクターは面白いんです。
光子は幼少の頃に暮らした長屋の生活に大きな影響を受け、少し変わった人生観を持って生きています。

安定する事を嫌い、風の赴くままに住居を転々とし、お金が無くても人情と粋な心意気だけは失わない。
雨が降ったら濡れ、お腹が空いたら食べ、人生に行き詰まったら、いい風が吹くまで昼寝をして待つ。
何があっても、「いい風が吹くまで昼寝しよう。風が吹いたら、どーんといけばいいんだから」と泰然としている。
そんな光子の生き方には、観ていて元気づけられますし、好感が持てます。

ウジウジ悩んでいないで、やるべき事をただやる。そんなシンプルな強さに溢れた主人公の言動は、観ていて痛快でした。

光子の「OK、サンキュー」といった劇中のセリフも、映画を見終わった後で使ってみたくなるような、クセを感じます。
ボソボソっと、独特と言い回しで言うのがいいですよね。
光子はカリフォルニアで暮らしていた設定でしたが、結局この二つしか英語は登場しません。
この二つでカリフォルニアの生活を、豪華に切り抜けてきた事が、透けて見えるようです。

光子を演じた仲里依紗さんも、どーんと構えた妊婦という役どころを、うまく演じていたと思います。
光子は泰然としていますが、決してニコニコと明るいタイプではないんですよね。
むしろちょっと、ブスッとした感じというか、「男はあんまり喋らなくていいんだよ!(妊婦ですが…)」というような、昭和の男みたいなキャラクターです。
そうした役の理解も素晴らしく、違和感なく観ることができました。

また、全体的な世界観や、ドタバタ劇も面白かったと思います。

妊婦はレバニラなんか食べないぞ


しかし、光子が妊婦であるということが、やっぱり最後まで引っ掛かり続けました。
この作品は「ハラがコレなんで」というタイトル通り、妊婦が主人公となっていましたが、あまりその設定が生きているようには見えませんでした。
主人公が妊婦じゃなくても、全く問題なかったのではないかと思います。

むしろ、妊婦の扱いが雑すぎて、倫理的にどうなの?という違和感が、ずっと頭にちらついている感じでした。
(これは私が経産婦なので、感じることかもしれませんが。)

例えば光子が重い段ボールを運んだり、雨に打たれたり、陣痛がきているのに車を運転したりするシーンです。

本当の妊婦であれば、どれもおかしなシーンです。
これは映画なので、そうしたツッコミは野暮ですが、そうしたツッコミを我慢して観るほど、光子を妊婦にするべき理由もこの映画には見当たりません。
そうしたシーンを撮りたいのなら、なぜ主人公をわざわざ妊婦にしたのか?と疑問に思ってしまいます。

妊婦は大変そうだから、 社会的に弱者に見えるから、主人公にしたのでしょうか。
だとしたら、妊婦というものに対して、間違ったイメージが先行しているのではないでしょうか。

細かい事ですが、臨月の光子に、「あまり動くな」と陽一が諌めるシーンがありますが、むしろ臨月の妊婦は積極的に運動することを推奨されています。
逆に冒頭でたくあんやレバニラを光子が食べるシーンがありますが、妊婦は塩分制限があるので漬け物は食べられないし、レバーも禁忌食材なので食べられません。

全体的に、妊婦に対しての勉強が足りないですよね。
こうした事からも、妊婦をイメージで描きすぎで、ちょっと軽んじているような姿勢が制作側にあるのではないかと思いました。

子供は親のオマケじゃないんだよ


また、光子の子供に対しての姿勢も、違和感を感じる物でした。
金銭的なことや、肉体的なこと(雨に打たれるなど)など、光子は良くても子供はどう感じるんだ?という疑問が、見ていてずっとありました。
光子がどーんとして粋な生き方を選ぶのは勝手ですが、子供がそれを受け入れるか否かは子供の人生ですよね。
光子が全く子供の気持ちを考えている気配がなくて、この作品の監督は、親の気持ちが分からない人なのか?と思いました。
また、現実の妊婦はもっと親の自覚があるだろうとも思いました。

また、ラストに光子が出産するシーンで、子供に対して「あんたは全部あたしに任せればいいんだ。全部大丈夫だ」というようなセリフがありますが、母親なら当然のセリフですよね。
わざわざラストに持ってきて、主張するような事でもない気がします。
ほとんどの妊婦は、光子のようなキャラクターでなくても、そういう覚悟を持って子供を産んでいると思います。
その部分を本当に理解して、妊婦を題材にしているのか?と疑問に思いました。

映画としては面白いのですが、妊婦という根本の所に同調できない感じで、その一点がすごく残念でした。

子供が生まれるシーンも無かった訳だし、やっぱり光子が妊婦である必要は無かったのではないか?と思いました。
小さな子供を抱えている設定くらいで、良かったのではないでしょうか。

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