四コマで見事なオチまでつなげる - 信長の忍びの感想

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信長の忍び

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
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四コマで見事なオチまでつなげる

3.53.5
画力
3.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
5.0

目次

四コマの中でオチまで

どのエピソードもすべて四コマ。それなのにこのまとまり具合と満足感をもたらしてくれるなんて、うますぎると思う。短くまとめているというより、一つ一つのイベントをさまざまな切り口からギャグに持ち込んで、長引かせてくれている。用いられている題材が織田信長で、ありきたりな展開だとわかっているのに、忍びとして信長に仕える女の子(女性…?)のおかげで信長のエピソードに違った解釈をもたらしてくれているね。基本的には史実通りに進んでいくけれど、各々のキャラクターがこんな風に面白かったのかな…って想像させてくれるから、楽しい。

幼い時に信長に救われたことを恩に感じて、信長の忍びになるため腕を磨いた千鳥。千鳥に恋しちゃってる忍び仲間の助蔵。この2人のキャラクターだけでもなかなか面白いが、登場する信長の脇役たちは皆特徴満載でギャグの宝庫。どちらかというと、信長は真面目でツッコミのポジションにあたる。この関係性もなかなかない設定だから、ついつい読んでしまう魅力があるね。気性が荒い・残忍なと評された一方で、それはカモフラージュだったかもしれないよねっていう想像を巡らせてくれる。強烈なキレ味のツッコミ役だったからそう呼ばれたのかなーとか、誰よりも乱世を終わらせたいと願っていたから、鬼にもなれたのかなとか、実は信長じゃなくて周りの忍びや家臣たちが残酷非道だったのかもとか。やっぱり信長さんって何度となくテーマに選ばれるだけあって、魅力が尽きない人物である。この漫画を読んで、信長ってギャグの分野の中でもいけるんだ…っていう発見があった。どちらかというと、信長を題材にすると、明智光秀のこともあって、シリアスな展開になっていく物語が多いと思うんだよね。

こんな忍びがいたのかもしれない

もしかしたら、千鳥と助蔵みたいな、伊賀忍者がいたかもしれないよね。お殿様には密偵があって当然。暗殺とか、偵察とか、スパイとか、天下統一するのにラッキーだけでいけるわけがない。信長だけじゃなく、周囲の者たちも有能じゃなきゃ、戦は勝てないと思う。実際、戦う戦略もそりゃー大切だけど、戦う人自体のポテンシャルだって相当高くないと無理だよね。運動能力だけじゃなくて、頭も良くて、反応もいい、忠実な人が必要だろう?昔の採用試験なんて、学歴なんぞあるわけないし、捏造できる資料だってない。あるのは確実にその場でご披露できる実力と、人相と、人柄だけよ。

現代だって結局面接ではそういうのが一番大事なわけだし。何百年経とうと、人って根本は変わらないものだなー。それがちょっと悲しいような、嬉しいような…。そんな気持ちにもさせてくれる。

全体として、千鳥の有能さは描いているけど、そのほかはそれほどでもない。肝の座った連中ではある。信長自体は人を使うのがうまかったんだろうなーっていう印象だ。隠密なくして、成功はないのかもね。徳川家康だってそうなんだもの。きっといい忍者がいたに違いない。

謎と確かな功績があるから

織田信長がなぜこれほどまでに取り上げられるのかを考えるとき、やはり成し遂げた天下統一のでかさを語らなくてはならない。それまで各地でナワバリを持ち、自分ルールでブイブイ言わせてきた金持ちの大名どもを、一歩一歩侵食していったとしても、いつ終わるかわからない状況。その中で銃やら他国との関わりの重要性に気づき、誰よりも早く取り入れたことが、信長のすごさだよね。当時はそれが変な人ってことでレッテルを貼られただろう。でもあなたがいなかったら、新しい時代は築けなかった。信長はおもしろ半分だったのかもしれないし、はたまたこの物語の中の信長のように、時代を見越した行動だったのかもしれないし、それは結局わからない。けれど信長のもたらしたものって本当にいろんなことの軸になっているんだよね。彼がいたから、豊臣秀吉が生まれたし、徳川家康が生まれて、戦のできるだけ少ない状況をつくることができた。信長様さまなんだよね。本当にいろんなことをやってくれた人だから、語り出したらめっちゃ深い。でもそれを真面目に語ったら伝わりづらいし、イメージしづらい。彼の行動をわかりやすく理解するには、ギャグってめっちゃ使えるんだなとわかったよ。

個人的には、秀吉とねねの話が好感度高い。当時の恋愛結婚がいったいどんなもんだったのだろうと想像力をかきたててくれる。また、秀吉あっての信長だったなーっていう描写もいっぱいあって、心温まるオチがほっこりさせてくれる。お市と浅井長政のことといい、大義のために何かを失うことを選ぶ人の道って、どんな気持ち…?謎と確かな功績が、ワクワクさせてくれるんだよ。

徐々に近づくお別れ

おおよそ史実に基づいているため、信長と千鳥たちの話もそろそろ終わるよね…悲しいけれど、昔話の人たちは、たしかにその時生きていて、どこかのタイミングで死んだんだよね。それをまざまざと見せつける終わり方をするのか、もしくはマイルドにして生きてるうちに終わっていくのか…ギャグ漫画だけど、いい話系も多いので、いったいどうするつもりなんだろうか。信長の行なったとされるデカいイベントはだいたい通過して、重要なのが本能寺の変。これに関しては何もかもが謎になってるから、どんな終わり方をしても可能性の一個として考えてしまう。手を抜かずに仕上げてもらいたい。

予想では、千鳥が信長の死を見届けるパターン、共に自害するパターン、共に逃げ出し余生を千鳥が守って過ごすパターンを考えている。お別れはほっこりパターンになるだろう。信長には濃姫が最愛の人で、できれば一緒に隠居生活…だったら平和やな。

別の漫画では、明智光秀がいい人説を採用しているものもあるし、だんだんと本能寺の変の意味について別解釈が流行りになっている。昔の書物は世に出切ったもんだと思っていたけど、まだまだ明らかになることがあるのだろう。

基本はギャグでも勉強になる

もちろん、基本はギャグ。そんなんあるかい!っていう話を楽しむ漫画だ。千鳥の忍者生活を面白おかしく、ちょっぴりせつなく描いている。信長について想像を巡らせるのも楽しいし、信長に関して学校では教えてくれない、豆知識がまたおもしろい。信長が下戸で甘党だったとか、あの戦いは別の目的があったとか、知らないエピソードが満載。より信長を身近に感じさせるし、そういう付属の知識が学校のテストに出る出来事をより明確に覚えさせてくれるよね。

イラストのテイストはゆるく、たぶん小学生でも描けるんじゃないか?っていうゆるさ。…あまり上手さはないと思う。それでも読者を惹きつける、構成のうまさがあるよね。信長の忍びから見た、信長の天下統一までの道のり。決して一人で成し遂げたのではなく、周囲の者たちあってこそだったんだよなーとしみじみさせてくれる。強い家臣の名前だって初めて知ったし、学校で教えてくれるデカいイベントだけじゃなくて、こういう人間っぽい話を知ることの方が、人の歴史を知る意味があるんじゃないのかなーという気分にさせてくれた。信長一人でやってのけたように教科書では言ってるけど、いやいや、働いたのは別の人で、こういう筋道をたどって、苦労がこれほどだったんだよって言われると、昔人に想いを馳せるきっかけになるじゃない?そして、今との相違点や共通点を考えることで、自分のこれからについて考えることもできるんだと思うんだ。歴史に基づくギャグって勉強になることばかりだ。

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