面白いものは時代を超えて面白い
社会に大きな影響を与えているサザエさん
サザエさんというと、最近の若者は日曜にちびまる子ちゃんのあと、18:30から放送されるアニメだという認識が大きいだろう。しかし、元は新聞連載の四コマ漫画である。
新聞連載というからには、内容も社会の情勢を取り入れたネタあり、ちょっとした家族のいさかいあり、カツオたちの学校での出来事ありで、身近な話題が主なネタの作品であるため、大変人気があり、多くの国民の共感を得ていた作品である。
平成になり、スマートフォンやタブレットなどが使われだした今でも、アニメ内での磯野家の電話は黒電話のままで、サザエたちが携帯電話を持つ気配がない。
昭和色の濃いアニメであっても愛されるのは、人と人の間に起きた基本的な喜怒哀楽は、時代が変わっても感じ方にあまり変わりがないからなのかもしれない。
アニメは基本四コマ漫画のエピソードを膨らませて構成されており、漫画を読んだことがある人は、既視感が多い作品も多いだろう。
なお、一時期サザエさん症候群なる、月曜日から仕事だと思うと、日曜の夕方から憂鬱になってしまう現象が注目されたが、それだけ多くの国民がサザエさんを見ているという事にほかならず、日曜の夕方は、ちびまる子ちゃんと併せて定番の笑いを求めるのが、今の日本の風習になっているようだ。
過激だが誰も傷つけない笑い
今は、気に入らない人間関係のことをSNSで発信したら大騒動になってしまうなど、やっていることが陰湿だったり、思う以上に大事になってしまうことが多い。しかも、たった一人の軽はずみな言動が、沢山の人を傷つけることが簡単にできる世の中になってしまった。
しかし、サザエさんの漫画の中では、はっきり言って日常起こる事件は、現代より過激なことが多い。
鉄道がストで止まってしまうといった社会問題だったり、家庭では何度も泥棒に入られたり、家に遊びに来たお客様の帽子のつばをハサミで切ってしまうなど、いたずらのレベルも、現代の子供のいたずらの非でないし、中にはカツオやワカメのいたずらではなくサザエの勘違いで結果的にいたずらになってしまい、波平に怒られるオチもしばしばだ。
今ではこういう事件がいちいちギスギスしたものになりがちで、互いの悪口や理解し合えない関係に陥っていくパターンが多そうなのに、サザエさんではどんな事件も笑い飛ばして、一日が終わる頃には無事解決しておやすみなさいと言える、そんな大らかさがある。
世の中をどこか皮肉ってみたようなネタでも、身体的特徴をいじってみたようなネタでも、なぜか人が傷つかないようなオチになっているのは、根本的に出てくる登場人物への愛情であったり、長谷川町子氏自身が、周囲の人への気遣いができる人だったからではないかと察する。
色々な都市伝説の内容にはほとんど根拠がない
サザエさんには、かつて研究会があり色々サザエさんの謎を膨大な四コマ作品から読み取ろうとする書籍が販売されていたが、現在は絶版になっているようである。
要因としては、サザエさんの挿絵などが版権上使えなかったことが主たる原因のようだが、この謎本がきっかけで、サザエさんに関する根拠のない噂が独り歩きしたせいもあるのではないだろうか。
波平とフネが再婚で、サザエのみが前妻の子であるという証拠に、前妻のお見舞いに行くという作品があったという話を聞くが、そういう噂のみで、何巻の何ページ目の話なのか全く分からない。はっきり言ってそのようなインパクトのある回は覚えていると思うのだか記憶にない。
これは、サザエさんの謎本が、あまりに年が離れた姉弟なので、フネが後妻の方が筋が通るという憶測が事実かのように広まってしまったのだろう。また、マスオさんが早稲田大であることは正式に公表されているが、ノリスケさんが東京大学であることなどは全く作中にも記載がなく、単純に出版社勤務という事でファンがエリート設定を空想したものが拡散されただけであろう。
人気作品ゆえに憶測も色々あるだろうが、事実ははっきり原作に書かれており、原作ほど設定がはっきりしているものはない。サザエさんの都市伝説のまとめサイトやブログを書いている人は、一度原作を全巻読まれ、正しい発信をした方が良い。本当にそう感じる。
大家族の羨ましさ
サザエさんの家は、サザエさんがフグ田家に嫁いだものの、家は実家の磯野家に同居しているという、、女親にはうれしい住み方をしている。サザエさん同様、容姿ではないのに妻の実家で生活する人をマスオさんと呼ぶようになってしまったのも、サザエさんという漫画の影響力の大きさを感じる。
現役の男性の稼ぎ手が二人おり、主婦が二人で家事を折半。かなり裕福な家庭なのではないだろうか。
子供は何かあれば実母に預けられるし、近所に住む老夫婦や、お隣の作家伊佐坂先生、サザエのいとこのノリスケなどの存在は、互いを孤独にさせない温かさがある。カツオくらいのお年頃だと、親の干渉をうるさいと思う年代だが、こういう生活には孤独死や産後鬱等、今社会問題になっている核家族が故の問題はほぼ皆無なのだと思うと、まんざらうるさい生活も悪いものではない。
サザエさんのネタがずっと通用じるのは、著者がどこかで、将来的な家族の問題を見据えた結果、未来に大家族の良さを、伝えたかったのかもしれない。
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