京都美人姉妹の名作。 - 福家堂本舗の感想

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福家堂本舗

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京都美人姉妹の名作。

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

古都・京都人が見事に描かれている。

この作品を語るにあたって、先ず一番に書きたいのは京都人気質についてです!ズバリ、「三代住んでこそ京都」と言われる位、京都人の京都人としてのプライドや誇り、ちょっと住んだからって、京都人を名乗るな!的なところも、同じ関西人から見ても凄いんです。これを描いている私は兵庫県民なのですが、同じ関西人でも京都人というのは実に独特で、非常に腹が読めない人種です。笑。私自身、京都人の友達が何人かいますから、嫌いじゃないし、時間をかければ腹も割ってくれるんですが。笑。また京都人自身もそう思われているのは知ってるけど、それがどうした?って感じで気にしてません。基本的には何も額面通りには受け取れない位、本心と言ってる事は大抵違いますし、その言葉のからくり、今風に言うと、空気が読めないと、この漫画の中にもあるように、無粋な人・・・となるんですが。大汗。そういった京都独自の文化や風潮を物凄くこの作品は正確に描いていて、京都人あるある!が満載なのです。それがこの漫画の核であり、魅力であり、面白さに拍車をかけていると思います。

480年の老舗店が核。

この作品の主人公の三人姉妹の実家は前述の通り京都の和菓子屋さんの娘さん達なのですが、普通の、そんじょそこらの和菓子屋さんでは無いのです。何と創業480年!という超のつく老舗。という事で、京都では最高権力を持つ寺社仏閣の人達との深い関係から、登場してくる人物も、超大手老舗鈴鳴屋百貨店の創業者一族、インスタントラーメンを開発したN食品社長、歌舞伎役者、狂言役者、人間国宝という言葉も飛び出てくるほど、凄い人達。京都と一言で言っても、娘さん達はごくごく普通の生活をしているものの、関わっている世界は京都の上流階級層で、一般人から見ると別世界です。その別世界を見て読む楽しさもこの作品の魅力の一つだったと思います。作品中、番頭さんが「480年と言っても本当に色々あった。戦時中の食べ物の無い時代も乗り越えて来た。」というようなセリフがあるんですが、その言葉の重みは読むだけでズッシリきます。昔は店頭に売り物を置く事はない「一見さんお断り」というような、とても格式の高いお店。ところが彼女達の母親の代から百貨店などにも卸売するようになり、店頭にもお菓子を並べるようになったのですが、それで他の老舗店から陰口を言われるのです。じわじわーっとくる上品な嫌味って、罵倒よりも怖いんですよね・・・。笑。京都の商工組合の会合が料亭とかであるんですけど、そこの老舗店主達のバトルの怖い事、怖い事。大汗。ここにも、そこにも、京都人独特の気質が実に上手く描かれています。そして、この創業480年というのれんの、とてつもない重みが、三姉妹それぞれの恋愛に深く、深くかかわってくる訳です。

京美人な三姉妹。

では、登場人物について少し。先ず、末っ子のハナちゃんですが、身長が165cmあり、かもしかのようにすらーっとした美少女。その彼女が凄く低身長の男の子を好きになります。私自身、身長が167cmありますので、高身長女子のコンプレックスが嫌ってほど分かる!(私はかもしかのようにすらーっとした美少女ではありませんでしたが。汗。)で、高身長の女の子って、低身長の男の子を好きになる傾向が確かにあるんですよね・・・。それにしても、このカップルがとにかく可愛くて仕方がありませんでした。彼の親の転勤で別れ別れになるんですが、別れる日の前夜にキスをするんですけど、その時に次女のお姉ちゃんの「少年、やり逃げしたな・・・。」というセリフに悲しい場面なのに、思わず笑ってしまいました。笑。ちなみに彼は後に高身長になって彼女の前に現れるのですが、その時にはハナちゃんにはセレブの狂言師の若きプリンスの彼氏がいるのに、その彼と別れてしまうのです。身長が低くても、高くても、セレブじゃなくても、やっぱり好きというハナちゃんの純愛がとても可愛くもいじらしかったです。狂言プリンスを傷つけても、どうしても忘れられなかった恋心はじーんときます。

その上のお姉さん、次女のあられちゃんはハチャメチャのじゃじゃ馬という設定で、私は彼女が一番登場人物の中で好きでした。彼女の関西弁で毒づくのがもう最高!笑。彼女の毒づく相手は鈴鳴屋の会長の孫で、長女の婚約者・夫となる桧山薫さんなのですが、この桧山薫さんがまあ、また皮肉が服を着てるような人で、笑、関西人なのに、東京弁で巨人ファンというキャラクターは関西ベースの漫画ではそれだけで強烈なキャラクター!笑。じゃじゃ馬娘のあられさんは関西人丸出しキャラでしかも阪神タイガースファン!この桧山さんとは毎回バトルなんですが、それが最高に面白くて、あられちゃんがいつも結局は凹まされてしまい、相手にされないんですが、2人の掛け合い漫才が漫画の中で凄く楽しみでありました。因みに彼女は店の職人さんと結婚して17代目当主となります。

で、最後に長女のヒナさんですが、この人は京都人が服を着て歩いてるような人で、登場人物の中で最もクセ者でした。笑。いえ、クセのある人物というと、16代目当主で彼女達の母親、女傑とも言える駒子さんも凄いんですけど、大人しそう~に見えて、ここ一番では”絶対”に意見を曲げず、物凄く頑固で、女傑の駒子さんも彼女だけは決して説得できないのです。女傑をも唸らせるといので、彼女がクセ者No.1です。笑。そのクセ者の彼女が、これまたクセ者の桧山さんと結婚。ダブル曲者夫婦の誕生でした。実はその桧山さんのお母さんも相当曲者なんですが、最後にちらっと見せる可愛い部分が凄く良かったです。で、結局、この相当の曲者の義母も味方につけちゃうという正に曲者の女王です。笑。

一番の名シーン。

個人的に一番の名シーンは、結婚後、夫への不信から家出してしまうヒナさんが、桧山さんのいる神戸に自分の気持ちを伝える為に電車に乗っていく途中で脱線事故に合い、重症を負ってしまいます。桧山さんが重傷を負ったヒナさんの行方を捜す為に病院のリストを駅員さんに要求するのですが、出し渋る駅員さんに、全編において一度だけ関西弁で激怒するところ。そして、その後、ヒナさんを見つけて、抱き合い、それぞれの気持ちを伝えあい、キスするシーンが曲者の二人だけに物凄く胸キュンでした。

遊知やよみさんという漫画家さん。

最後に、私はこの作品を一話から最終話まで、連載時にリアルタイムで読んでいました。この漫画家さんを知ったのは、この作品が始めてで、最初の印象は「物凄く絵柄が変わってて、個性的だな。」という点でした。他の漫画家さんとはかなり一線を引いた絵柄で、特徴的。パッと見でも、かなり印象に残ります。そのせいか、最初はその絵柄に、ふんわりした少女漫画的じゃないものを感じていたので、何となく違和感がありました。その上に、作風が京都の老舗和菓子屋屋さんという事で、しかも、内容もかなり個性的。ですが、お話がとにかく一話からかなり惹きつけられ、かなり面白いなと思ったのも覚えています。なので、読み進めいくうちに、どんどん絵柄にもハマっていきました。本当に個性的で、ちょっと唯一無二な存在の漫画家さんだと思います。遊知やよみさんの作品はこの福屋堂本舗以外は読んだ事が無いのですが、他にどんな作品を描かれているのかな・・・とこれを書いていて、また読んでみたいな・・・と気になりました。きっと今も個性的で唯一無二な作品を描いておられる事でしょう。

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