これって魔法使いの話ですよね?
何となく不満
「これって魔法使いの話しだよね?」これが第一巻を読んだ後の、私の素直な感想です。魔法が使える女の子の話だと思い読み進めた私にとって、ちょっと物足りなかった感じです。勝手に派手なシーンを想像していたので、拍子抜けしてしまいました。「四つ葉のクローバー」であるスゥは無敵な筈なのにその力を発揮する事はなく、彼女の研究をしていたという「クローバー.リーフ.プロジェクト」も具体的にどんな研究や実験をしていたのか知る事は出来ませんでした。同じCLAMP作品である『魔法騎士レイアース』の時は炎や水が激しく戦い、恰好いい呪文で敵を倒していたので、出来ればそういうシーンが見たかったです。でも、スゥは違いました。自らが危険な状態に陥っても魔法を使う事はしなかったし、空を飛ぶ場面でも機械的な羽が生えるという、魔法使いというよりも機械使いという印象でした。唯一、最終回近くで彼女が見せた巨大な織葉像が動き出す所と、瀕死の和彦を救う場面の時だけ彼女が魔法使いなんだと感じました。私としてはもう少し派手なシーンを期待していたので、少しガッカリしました。
シンプルすぎる台詞
作品中の会話はシンプルなものが多く、外国映画のような印象でした。たった一言でも、その意味を思わず深読みしてしまう感じです。スゥと和彦の会話もものすごくシンプルで、二人の心情を察する事は難しかったのですが、逆に二人はこの時こういう風に思っていたのかと考えさせられます。スゥが「貴方がつれてってくれる人?」という場面では、無表情とは裏腹のすがるように和彦の手を掴む彼女に、彼女も本当は不安なのではないかと感じました。二人を匿ってくれた義賊の『小猫』の桃花が出口まで二人を案内してくれた時、大きな爆発音に引き返そうとする和彦を桃花は花一輪で制します。そして、「デートの続きを」と一言だけ告げます。彼女は分かっていたのです。自分達が壊滅の危機にある事を。それでも微笑み、花をスゥに渡す彼女はとても綺麗でした。凛としたその姿は外部の者の手助けを必要としないのだと暗に告げているようでした。たった一言でも、その心情が分かるというのは凄いと改めて思います。かすかな表情の変化とタイミングで読者を引き込む手法はなかなか難しいと思います。
分からなかった恋心
そんなシンプルな、深読みさせてくれる作品でしたが唯一分からなかったのが『恋心』です。大好きな歌手である織葉から聞いて和彦が好きになったというスゥの気持ちは分かりますが、具体的にどういったタイミングで好きになったのか、和彦のどういった所が好きになったのかまるっきり分かりませんでした。彼女の恋心を感じる事が出来たのは、倒れた和彦を泣きながら抱きしめる場面でした。それ以外のシーンで彼女の恋心を知るのは難しかったです。そして、和彦の気持ちもまた分かりませんでした。彼はスゥの事をどう思っていたのでしようか。単なる頼まれたからなのか、スゥに同情したからなのか、それともスゥを一人の女の子として好きだったのか結局分かりませんでした。出来れば二人の気持ちが通い合うシーンが見たかったです。
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