ヴァンパイアにバトルに恋にと忙しい
ヴァンパイアらしく血の契りを
架南は陸上部に特待生として入学した高校生。しかし、ボヤの事故があって、足をケガしてしまい、いろいろな部活のお手伝いさん状態だった…っていうところが、いったいどうなってアキの隷属に…若干誰かを助けたい。それだけで飛び出した道路で死んでしまった架南。アキが不用意に会わなければ、架南は死ななくて済んだかもしれない。アキがこの街へやってこなければ、ルナティクスも起こらず、危険な目に合わせることさえなかったのに…。死んでしまった架南を救うため、血を分け与えたアキ。隷属をつくることは、ヴァンパイアとしての弱点をつくることだったけれど、アキは架南を誰より大切に想っているから、自分の身が危険になることはいとわなかった。
いきなりヒロインが死んで、それを救うためにヴァンパイアが現れて血を与える。ヒロインは普通に見えるが不老不死に。敵だと思っていた不知火迅は仲間になるし、なかなか急ピッチにヴァンパイアの話へと進んでいった印象がある。STIGMAを集めてアキが最強にならないと、双子の弟・衿夜を救えない。架南にとって衿夜とアキは小さなころ一緒に遊んだ大切な友達。大切な人を救おうとするのは当然の事だとして、架南はアキのSTIGMA探しを手伝うことになった。不知火は架南がケガをした原因であるボヤを起こしてしまった人物であり、罪滅ぼしの意味も含めて、STIGMA探しを手伝うことになる。…わかるんだけどね。アキに会うのがちょっと早いとは思った。
絵はすっごい綺麗ですっごい好きなんだよ。イケメンに、イケメンな女子、ダンディーで怪しげな敵に、スワロのような訳アリキャラクター…どれも素敵。
架南の設定は微妙
架南が、陸上部の特待生として入学して…っていうくだり、もはや必要だったの?って思うんだよね。ケガをしたことで、学校の中で孤独を感じていた。それがヴァンパイアとどうつながるの?って思って、違和感を感じたね。確かに、アキが学校に潜入してSTIGMAを探すことになるから、架南の立場をどこに置いておくか、あらかじめ考えておく必要があったことは理解できる。生徒会長たち天使と引き合わせる必要があったことも。それでも、陸上部っていう設定・ケガをしていたのにそれが隷属になって治ってしまったこと…というのは必要じゃないだろう?別に普通に、なんてことなく生活していて、でも何かを忘れている気がして…それが何なのか思い出せない。だけど笑って生きている…それくらいで十分なのにね。特別な何かを持たせることとして、スポーツ万能なことってさほど必要じゃないよなー…って思って、設定の微妙さが悲しかった。それが隷属としての何かに活きているならまだしも、隷属としての力はとにかく全部超越しているからね。
ヴァンパイアの隷属になったことで、いつまでも普通の学校生活は送れない。架南、不知火の生活は一変してしまった。椿院という敵がわかっているのに、STIGMAを見つけなくてはその闇の一端すら教えてくれない。最大の敵がわかっているのにいつまで経っても遊ばれているような…だけど敢えてそうしなければ、大切なものを失ってしまうから。アキはいつまでも一人でがんばっている奴だったね。
STIGMA探しはもう少しワイルドがよかった
STIGMAには欲望の名前を付けていたわけだけど、どうにも「鋼の錬金術師」をイメージしちゃうんだよなーEnvyとかGreedとか言われちゃうとさ。あまりにもそちらのイメージが強すぎて、一瞬エドとアルを思い出してしまうから、純血彼氏のほうをいったんお休みしてそっちを読もうかっていう気持ちにすらなる。
STIGMAを奪われれば、何かしらの代償が必要になる…っていうのもまた等価交換の法則ですかと言いたかった。これはパクリなんじゃないだろうかと疑いたくなったね。代償はひとそれぞれ。欲望の名に合わせて、相応のものが失われる…命ではなく、記憶であることが多かったなーアキも、一度奪った色欲のSTIGMAを架南を奪還するために失わなくてはならず、アキにとって何よりも大切な架南の記憶をすべて失った。…これもなんか微妙じゃない?大切なもののすべてを失う…と言いつつ、結果アキは架南のすべてを思い出すことができているし、STIGMAを奪われる対価が非常に微妙。「鋼の錬金術師」よりも全然徹底されていないから、だったら別のものでよかったのにって思ってしまう。
STIGMAを探す旅をするでもなく、そこに純血のヴァンパイアがいれば自然とスティグマをもった人間は現れてしまう。それもさ、多少調査するのかと思いきや、別にその必要もないって言うじゃない。それならこの街に現れなくても良かったじゃん。架南に会いたくてやってきてしまったのが運の尽き。全部が狂って全部を架南を守る方向へと方向転換しなければならなかったわけ。STIGMA探しはゲームだと言っておきながら、ディーラーの存在感は薄いし、その存在意義もディーラーじゃなくてただの見届け人ポジション。敵の雰囲気出しておきながら味方だしさ。
衿夜はすでにフェアじゃない
衿夜に関しては、結局出生から何から悲しい存在だったわけだ。架南を隷属としていた、ということで、架南は二重隷属状態になり、血の衝突・嫉妬が巻き起こってEnvyのSTIGMAが架南に降臨。奪えば何が起こるかわからないから、手出しもできないアキ…苦しい展開になった。っていうか、二重隷属ってオッケーなんだね。それなら最初から血がケンカしてもいいものを、衿夜が目覚めたことで再び効果が発動したってことなんだろう。
立場的に、どう考えても衿夜は不利。愛を知らない悲しい生き物。アキと架南が心を通わせたところで戻ってきちゃうのもまたタイミングが悪い。今まで出てこなかったのに、望んだ女性とうまくいくことなんて無理な話で、何もかもが衿夜にとっては不利だったなー…。もう少し早い登場だったら、架南がどちらに傾くかも含めて、展開が楽しくなったと考えられる。
架南が死ねば、主のヴァンパイアも死ぬ。もう全部終わらせるには架南が死ねば早い話。でもそれをアキも衿夜も絶対に望まないから、話はごちゃごちゃに。どちらかと言えば、衿夜は架南ではなくてアキと一つになりたがっていて、架南というアキが唯一欲する人を共有する、ということが衿夜を何よりも興奮させるらしい。…こういう異常なタイプが生き残れる可能性は相当低いから、結末が予想できてしまってつまらなくなった。
ラストはハッピーなのかどうなのか
アキと架南が生きている。それだけでとりあえずハッピーエンド、ということにしておく。ほかにはいろいろとツッコミどころ満載で、天使とかどうなったんだよ、STIGMAとられた代償は?などなど、聞きたいことはたくさんあった。物語の完結において、全部がハッピーなら嬉しいし、少しの切なさを残してくれるのもまた余韻が楽しいことだ。でも「純血+彼氏」は全部闇に葬り去られた気がしてならない。5年分の時間こそ、大事に表現してもらいたいよね。一足飛びはこれだから困るわ。
読者の中でも、ラストに関しての意見は賛否両論。こうするしかまとまらないよね、っていう言い方をする人もいた。世界観を大きくしたいのか、狭くしたいのか、いったいどっちなの?!ヴァンパイアがいます、サキュバスがいます、天使がいます、椿院翁がいて何やら意味深です…などなど、サキュバス出すならヴァンパイア漫画っぽいキャラクターをもっと登場させてもいいよね。椿院の中は完全に和風で、助けになってくれる人は巫女かなんかなの?という服装と見た目。テイストが組み合わさりすぎて、ヴァンパイアの位置づけ・椿院っていったい何?
謎なことはあったけれど、最後にアキと架南が生きていてくれて、それはすごくうれしかった。どうせならもっとラブラブしまくってほしかったなーそればかりは心残りだ。
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