幽霊を通して絆を深める - 山本善次朗と申しますの感想

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山本善次朗と申します

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画力
4.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.00
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幽霊を通して絆を深める

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
5.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

小学生が萌え

槙よう子さんの作品で、小学生のほたて(女の子)が主人公の物語。ほたては本当に…かわいい。別にロリコンじゃないけど、一番かわいいと思うし、性格も素敵すぎる。10歳ながらに気づく大人のこと、幽霊たちが教えてくれること。さらには、生きている人でも、触れると心の声が聞こえてしまうほたては、気持ちの良い心・苦しい気持ちやつらさからやってくる嫌な心など、いろいろな感情にさらされて生きている。おばあちゃんは、そんな不安定なほたてを周囲と隔離させることで、傷つかないように・周囲に迷惑をかけないように・自分自身が苦労しないように育ててきた。それもわかっていながら、一生懸命おばあちゃんからの愛情だと考えて生きているほたてがまぁーかわいくて。切ないのだ。

そんな日々に終止符を打ち、引き取ると言ってくれた山本善次朗。一目会ってすぐにわかった。私のお父さんだって…初めてほたてを必要としてくれる人。父親がどういうものかわからなかったけれど、愛してくれているのがわかる。それだけでほたては生きていけるくらい、勇気をもらう。スタートからもう楽しすぎたよ。みんなが本当にかわいらしくて、田舎に引っ越してから始まる生活っていうのもそそられた。山の中の家、下れば街があって、まことの通うローカルな大学もあり、のどかでゆったりとした時間が流れている…のびのびと生きていける気がする。ほたてや善次朗さんを見ていると、すぐ近くに霊がいて、いつも見守っていてくれたらいいのに…って思うし、科学を飛び越えた存在があること・それを理解できる人がどこかには本当にいるのかもって思って夢が広がるね。

たぶん一番クオリティ高かった

槙よう子さんの作品っていろいろあるけれど、「永田町ストロベリィ」や「シュガーソルジャー」と比べて、この「山本善次朗と申します」が一番クオリティが高かったなーって思っている。

まずはその絵のクオリティ。みんなかわいいし、善次朗さんイケメンだし、まことも素敵。梅ちゃんの美貌にはびっくりするし、翅ちゃんのかわいさも天下一品。ほたての成長したところが見てみたい~!と唸ってしまうほどだった。速水くんのイケメン具合も素敵で、あわーい恋を思い描いちゃったよね。

ストーリーの展開としては、まず不思議な能力を持っているほたての登場から、新しい学校に通い始めて自分の能力が人からどう思われるかを考えていき、それでも自分がその霊や霊に関わる人間を助けたい!と心に強く願うことを取り組んでいて、必死さとまっすぐさに心打たれる。さらには、家族の中でのやり取りに注目し、実は善次朗さんも幽霊と対話ができるタイプの人間だったこと、さらには少し先の未来を見通す力を持っていることなどが明らかになって、“少しも変じゃない”って理解しあえるのが、親子の絆でもあり、これからまっすぐ生きていこうって思えるほたてのパワーにもつながっていて、微笑ましいね。ラストの方は、登場からずっとほたてを見守り助けてくれた速水くんのお話へ。予想通りではあったけれど、生きていることにつながっているのが嬉しいし、善次朗さんがやろうとしなかった、本当の意味で救ってやることを、ほたてが実行することにたくましさを感じさせてくれる。

小学生同士の心のつながり・会話がお上手

翅ちゃんのエピソードって、けっこうシビアな展開だったと思う。そこを、ほたてや速水くんという、小学生ちびっこが取り組んでいるからふんわりとちょうどよくなる。小学生同士で繰り広げられるお話、それに翻弄されている担任の先生の残念感…すごくわかるなーって。小学生の言葉がモロに心にグッとくるものなんだよね。素直で、痛いくらいに正直で。余計なものが含まれていないからこそ真剣に向き合うべきものがある。

小学生同士で関係を構築するってイマドキは余計に難しくなっているよね。SNSがどうだとか、いろいろとハイレベルな議論が交わされるというか。でもこの漫画の舞台は九州の田舎というのもあって、少しマイルド。なまりもまたかわいいし、何気ないやり取りにほっこりと癒される。ほたてのように、転校生は好かれるか嫌われるか、どっちかに偏ることが多いが、小学生ならば、一度悪い方向に傾いた評判が好転するのがとても早くて助かる。ねちっこくないんだよね。すげー!って思われれば勝ちってところがある。そこがかわいい。

もし速水くんが死んじゃっている霊だったら、ほたてのクラスメイトたちが恋の有力候補だったが…ほたての見ているものを理解してあげることとか、支えになってくれるかどうかを考えると、やっぱり速水くんに落ち着く。あの色素薄目で儚げなところが心揺さぶられるよね。ほたてだったら速水くんを守ってくれるし、もちろん、速水くんもほたてを守って寄り添って生きていってくれるって信じられる。

速水くんは想定内

正直、登場から完全に速水くんは生霊だってわかってた。そうでなきゃ、お別れが切なすぎるし、霊と対話ができるタイプの漫画では、生霊がお約束だ。どこで彼を登場させるか?それはもちろん終盤になるだろうとは思っていたし、まぁ予想通り。

しかし、まさかほたてが一度霊になってしまう…!っていう驚きの展開は予測できなかった…そこから救い出すのが速水くんであり、また自分自身が目覚める勇気を持つための出来事でもあったわけだ。

ここで疑問が生じるのだが、山本善次朗には少し先の未来が視えてしまう…という設定があったのに、ほたてがそうなるところが予期できなかったのか?という疑問。せっかく用意しておいたものなのに、その力を使わないって…いったいどこで使うんだよ。確かに、その力のせいで悲しんだことも多そうだなーとは思うんだけどね。大切な恋人を失ったことと関わっているとか、変に未来をみることが決していいことじゃないって感じていて、ほたての事に関してはことさらに使いたくなかったとかさ。そういう説明があればまだ納得できたかな。なくてもこれだけ妄想ではひろがったけどね。

速水くんとほたての歳の差は4歳…実にちょうどいい。大きくなって、再会して、絶対付き合ってほしい!絶対楽しすぎる!記憶があってもいいし、なくてもいいし。絶対恋になってほしい!と思うラストであった。物語のテイスト的に、恋は二の次だからね。絶対速水くんはほたて大好きだから。振り向かせてほしいなって思っている。

続きはもう絶対ない…

途中、作者さんの病気による休載があって、長らくご無沙汰になってしまったこの漫画。5巻という短さではあったけれど、ちゃんと終了を迎えさせてくれてよかったーって素直に思う。だって、他の作者さんで、全然完結させない人とかいるし。もう読者は「この気持ちを一体どうしたらいいの?!」って発狂しそうになるよね、途中で打ち切られた日には。自分が霊になってしまうという、まさかの事態から復活して、ほたてが元気に家族と暮らしていくラストになっていた。

もう少し…って思うのは、やはり善次朗さんの能力の秘密、母親とのなれそめ、そしてほたてをあずけたおばあちゃんの気持ち。ほたてでも読み取れないもの、考えていることがあったはずで、もう少し深いところまで描くこともできたのではないだろうかと思った。休載からの復活後、若干5巻で絵のテイストが変わってしまったことを嘆いていた人もいたし、少しの残念感はあったね。続きはもうない、って断言されちゃっているだけに、悲しい…

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