慎重に少しずつ歩み寄って知っていく
酔っぱらうって怖いらしい
支倉先生がね…まぁなんで?って思うけど、自慰行為をしているところを桑原先生に目撃されたことがきっかけになって、物語はめくるめく展開をしていく。酔っぱらうって、怖いんだね。何をするか・言うかわからないし、いつ眠ってしまったのかも覚えていない。酔っ払いはだめだわ。
さて、なんでそんな状況になったか?ということは置いといて、まずはその行為を目撃した・されたことにより、お互いが意識せざるを得なくなり、結局は付き合うところまで発展する。どちらかというと、序盤は桑原先生の視点で、こういうときはどうしたらいいんだろう?って悩み、少しずつ支倉先生を解き明かしていく感じ。後半では支倉先生の立場から、桑原先生が気になって仕方なかったことがバレていく。
支倉先生の行動はとにかく謎だし、なんで?っていうポイントを質問してくる。そのせいか桑原先生が常識人っぽい。どれだけ急いでいようとパンツをはかずに外に出るなんて奇行はなかなかできない…っていうかしないよね?そんなことをする女の人がいたら、絶対引いちゃう。そこを引かない桑原先生は、やっぱりちょっと変わっていると言える気がする。男の人の願望・妄想ももちろん入っているだろうけどね。
男を知らなかった支倉先生が、桑原先生によってどんどん開拓されていくわけだけど、関わるごとに成長しているのは桑原先生も同じ。そういう感情の機微がおもしろい漫画だ。自分としては、桑原先生の髭を剃ってほしくてたまらないのだけれど、それがいいと言う女性もいるのだろうから、そこは好みだね。支倉先生には、最中にニーハイソックス履かせたままにしておいたり、白衣をうまいこと使ってエロさを強調したり、天然・長い黒髪・メガネ…などなど、属性として人気の高いものを詰め込んでいたと思う。
付き合うまでのハードル
支倉先生は恋しちゃってたと思う。桑原先生も、たぶん好きだったんだろうと思うけれど、まだ明確な好意として意識できていなくて、久々に自分の前に現れた女が間違いなく自分だけを好きかどうか、悩んでいたんだなーって思う。
学校にバレたら終わりの関係…っていうのも一応足かせとして描いているけれど、全然バレる気配がない。むしろ危険なのは、お互いに臆病すぎて、慎重すぎて、タイミングを逃して別れてしまうこと。支倉先生の意味不明な行動、それをなんとか理解して確認して歩み寄ろうとする桑原先生という組み合わせだったからこそ、ベストマッチだったんだろう。
1巻ラストでようやく…!って思ったのに、キウイアレルギーの発動で未遂。そしてさらには家ではなく保健室へと場所をチェンジ。そりゃーいずれはするだろうと思っていたけれど、初っ端に持ってくるとはびっくり。職場恋愛御法度じゃないんだろうか。絶対バレる。1回始まれば、あとはもうどこでだってイチャイチャ…家と保健室、できる場所はたくさんある。支倉先生からしてみれば、もはや自慰行為みられる・パンツ拾われるなどの失態以上に恥ずかしいことなんてないと思うんだが…プレイはとっても恥ずかしいらしい。それもまた桑原先生のツボを押さえているご様子。
“付き合う”という言葉を使うまでにもいろいろとすったもんだがあり、カラダから知り合って、心は後からついてきたような2人であった。
大人だから怖いと思ってしまう恋
ドキドキ楽しい恋愛なんて、大人になるほど遠くなりがち。全部を知ったような気持ちになって、恋なんてそんなもんだろうって決めつけて、諦めてしまうことだって、大人にはある。わざわざ危険で辛い思いをするには、すごく体力を使うんだよね。自分の事だけで完結できないものって、楽しいと思えるだけじゃなく、大変なこと。そこを全部壊して一緒になりたい…!って思えるかどうか?常に冷静に分析していくのだ。
しかし、一度壊れてタガがはずれたら、大人のほうこそ手が付けられないくらい自由に愛を表現する。支倉先生に対する桑原先生の変態具合も、どんどんヒートアップするしね。
桑原先生にとっては、前の恋愛で不倫させられてたってトラウマもあって、なかなか支倉先生との関係をすぐに発展させようって気にはなれなかった。相手の気持ちがわからないし、自分の気持ちもわからない。誘われているのか、遊ばれるだけなのか、自分はどうしたいのか。真面目な桑原先生は悩みに悩んでいたわけだ。自分はただ相手を普通に愛していただけなのに、女のほうが既婚者って…だいぶきついよね。そりゃ恋愛する気も失せる。そんな傷心の部分をどうでもよくさせてくれた支倉先生。桑原先生のリードできる、ベストな相手に出会えてよかったね。
支倉先生は、うまく自分を表現することができなくて、そこを理解されないことが多かっただろうから、恋愛はできなかっただろうな…。もうこの先、自慰行為を目の前で見ても、パンツをはいてないってバレても、助けてくれるのは桑原先生くらいしか存在しないと思う。だから、ずっと大事にしてやってほしいなとつくづく思う。恥ずかしくて自分を出せない…!なんてこと言えないくらい、もっと恥ずかしいものを見られているからね。ありのままの自分を表現できる相手を手放さないよう、大事に言葉を交わしてもらいたい。
ことばの重みを感じる
やることやって、お互いが相手をかわいいとか、愛しいとか思えていて、明らかに付き合っている感じの2人。だけど、言葉として明確に表現されたのは少し後になってからだった。体裁上の問題もあっただろうけど、始まり方が普通ではなかったってのもあって、少し罪悪感のような、背徳感のような気持ちもあったのかもね。それでも、付き合うと確実に言葉にしたら、どんどん整っていった気がする。一緒にいたいんだと伝えることも、寂しいとか嬉しいとか伝えることも、相手が自分を好きだからだと確信が持てて、嬉しい気持ちになれる。学校にバレたとしても、バレなかったとしても、どっちにしろお互い離れることを選択肢に置かない。…あれほど仕事のために職場恋愛は…って言ってたくせに、やはり恋は何もかもをどうでもよくさせる、毒みたいな要素も持っているね。
きちんと言葉として表すだけで、決意ができて、覚悟が決まる。何となく一緒にいて、何となく体の関係を持っているだけじゃ、セフレと変わらない。セフレ以上恋人未満みたいな状態から、たった一言でワンランク上がってくるんだなーって思った。
もう決まっている話の肉付けをしてくれる
普通の少女漫画と違うところは、1巻2巻くらいでもはやだいたいの話は決まっていて、後は回想シーン・なぜそういう状況がつくられたかの説明がつく流れだということだ。そのため何度も読み返して深まる物語と言える。
職場恋愛禁止の学校で、バレた・バレないで騒ぐのがたいていの物語だけれど、それがないから読むほうはかなり楽だ。あっちでもこっちでもイチャイチャイチャ…もはやそれを愉しむ漫画である気もする。
カラダの関係、言葉のコミュニケーション、少しずつ解き明かされて、深みを増していくこの漫画は、6巻というコンパクトさがちょうどいい。ラブシーンもいいけれど、不器用で恋の失敗もたくさんした2人が、少しずつ歩み寄る感情表現がいいなーと思う。一生懸命考えて、言葉を選んで、相手のことを理解しようとしているから、2人ともかわいいのだ。とびきり仲の良い相談役的なキャラクターはなく、音もなく静かに描かれる漫画なので、もしかしたら人によっては物足りなさを感じるかもしれない。
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