グロくて未来がない映画 - ミュータント・クロニクルズの感想

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グロくて未来がない映画

3.03.0
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.0

目次

人間同士争っている場合じゃない

4つの企業によって世の中が支配されている西暦2707年。地球に残されたわずかな資源をめぐって常に戦争が行われている。キャピトル、バウハウス、ミシマ、インペリアル…うわーゲームっぽい。4つに分かれているのがちょうど良すぎる。そしてなぜアジアはミシマ?700年後も日本の影響力は残ってるってことかな?それは嬉しい事だが、人間同士で争っているうちに、遺跡の封印がとかれてミュータントが出てきてしまう。

凶暴すぎるミュータントを前に人間は全く役立たず。覇権争いしてきた4つの企業も協力せざるを得なくなる。協力しても敵わぬその圧倒的なミュータントの強さ…もはや人間は地球を捨てるしかなかった。

世界観はわかるし、人間がいずれ地球を捨ててしまうかもしれないっていうのもリアリティが感じられてよいと思う。いかにもゲームの雰囲気で、アクションメインなのも好きな人にはウケるだろう。それでも、やっぱりこの映画は人気がないだろうなって思う。人は結局ミュータントには敵わない。封印がとかれてそれをまた救ってくれる救世主がいる…とかそんなの淡い期待だったらしく、予言はしょせん占い事であった結末が痛すぎる。予言を何千年とかけて守ってきたはずの、この未来を知っていた人物ですら、ミュータント化されるからね。どうなってんだよって話。「わかってたんだ、でも救えない」って言うのでは、まったくもって話にならないよね。知ってるだけで何もしない、むしろ知っていたのに何もしなかった悪者じゃないか。ミュータントが復活してしまったのは、予言とか関係なく、人間がいつまでも争いをやめなかったことで封印がとけてしまったのかもしれない。もっと平和だったら封印が解かれることはなかったのかも…。後始末をすることもできない。滅びしかないから途中で飽きるんだよね。

とにかくグロい

人同士の銃撃戦なんてかわいいもので、ミュータントが人を殺すシーンは本当にグロい。自らの刃で切り裂くわ刺し殺すわ、話は通じないし、分かり合うことも無理。人間に望みが全くない状況で、血しぶきだけがリアルにヒューヒューと飛んでいる…。ただのアクションだろう?っていうレベルじゃないので、R15でちょうどいい。ミュータントが復活してまず人間を殺すのだが、その時が最もグロいね…後はだんだん慣れてくる。

太古の昔にマシンが宇宙から地球に降り立ち、そのマシンに人間が取り込まれてどんどんミュータントが量産されたっていう話なんだが、その目的がまったくわからないんだよね。マシンはなぜミュータントを量産して人間を殺す必要があったのか。ミュータントは人間から作らなければならないなら、殺さず保持しておく必要性があるだろう。でも全部をミュータント化させているわけでもなさそうだし、ある程度選んでいる…?殺戮兵器をつくってどこで使うんだろう?ミュータントも子孫繁栄に困っている?いろいろ想像はできるのだが、殺されるか殺してやるかの二択しかない中で、訳も分からず滅亡へのカウントダウンが始まってしまうのが嫌だった。クロニクルを受け継いできた子孫でさえ、救世主の存在を語り継いだだけで知恵を与えてくれたわけじゃないし。本当に使えない。もちろん、グロホラーとしては楽しめる。あまりにも背景がわからなすぎるので、もしかしたら原作ゲームでもやってればまだいいのかもしれない。展開は「バイオハザード」とさほど変わりないのではないだろうか?「メタルギアソリッド」くらい展開が凝っていればまた別だけどね。

ミュータントって…

個人的に、ミュータントと聞くと「X-MEN」のイメージがかなり強いため、こんなほぼゾンビのミュータントなんて受け付けないところではある。知能が高くて、人の常識では考えられない変幻自在さがあって、美しさがある。それがミュータントのイメージなんだよね。「突然変異」っていう意味から考えると死ぬことのないゾンビもそれにあたるのだろうけど、花がないんだよね、この映画。ミッチが唯一の花ってこと?全然ミラジョボビッチに負けてるよね。屍超えてきたシリアス感ですらも足りないわ。そしてミュータントの弱点が多い。脳みそぶち抜かれるか、本体全部焼失させられたら終わり。人間の枠を越えた生き方はこの映画のミュータントにはできないらしい。

マシンは宇宙からの飛来物。だから、マシンがミュータントをつくるのは、どこかの惑星でバトルをするために必要だからなのかな?殺戮兵器に使うために量産しているのかも。マシン自体の意志でこんな作業が行われているとは考えにくいし、いずれは量産したミュータントをどこかに持って行く役目も持っているのではないだろうか?地球ごとき、滅ぼしたところで代わりの惑星や生命なんていくらでもある。たまたま地球はタイムラグありで2段階にわたってミュータントづくりの舞台になっただけかもしれない。地球の1万年なんて、他の惑星ではほんの数日か数時間くらいの価値しかないのではないだろうか。古代の勇者ナヒダンは、一時的にマシンの活動を止めることに成功しただけのことだった…とかさ。どう考えたって、突然変異に対応できるほどの強さが人間1人1人に与えられているとは思えないもんね。

チープな演出に涙

いろいろな人がこの映画の批評をしているが、その中で共通しているのは、「暗すぎる」ということ。全体として何をやっているのかわからないほど暗闇だったり、霧が立ち込めていたりするため、全然何をやっているのかわからないのだ。突如として現れるミュータントの恐怖も、慣れてくればあーまたか、って流せるようになるし、グロホラーを極めるならそれじゃ足りないと思うんだよね。変に歴史と宇宙と絡ませるから、何をメインにしたらいいのかわからなくなるんだよ。

ミュータントはゾンビだから特殊メイクで事足りているし、700年後の未来にはどう考えてもなさそうな石炭燃料の使用、そして1900年代ですか?っていうくらい地味な銃撃戦…サイバー攻撃のサの字も出ないような演出に、萎えた人も多いだろう。少数精鋭のチームと言いつつ20人のメンバーってなかなか多い。だから一人一人のエピソードを語れずみんな殺すしかなくなるんだよ。たった一人で挑むのも無理があるってわかるけど、冒険っぽくするならやはり一桁で1つのチームくらいにして、複数に分けたほうが張り合いがあったなーって思う。そうすればミッチの単独行動だって普通っぽく見える。

日本ではほとんど知られず

戦争のシーンもやたら長くて、さっさとミュータント出せばいいのに勿体ぶる。さすがに日本では感動のない戦争ものはウケないらしい。人気がなかった理由ばかりが解説されているね。B級映画だと言われまくっているが、一番は何をどう解釈したらいいのか、過去・現在・未来をつなげる確実なストーリー展開が必要だったんだと思う。映像美、ストーリー展開、役者さんの演技のうまさなどなど、全部がうーん…という結果に終わってしまったことは残念。変にゲームの世界観も出さなきゃとか、見やすくしなきゃとか、考えすぎちゃったのかもしれない。

グロいミュータントの人殺しシーンは妙に凝っていて、血の出かたや苦しみの様子、瀕死の状態など、もしそこを楽しみたいという人がいれば、適した映画だ。苦手な人には最初から最後まで苦痛の映画かもしれないため、観るなら心して挑戦されたほうがいい。

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