全力でぶつかっていく爽快感ある恋
ラブコメらしく元気いっぱい
千笑は高校1年生。ちょっと暴力的な女の子だけれど、それは曲がったことが大嫌いなだけ。女の子だもの、恋だってするのである。先生から平田の更生を頼まれ、学校に通わせようと殴り込みをしかける千笑。結果、華麗なキックで平田をぶちのめし、平田は千笑に一目惚れするのであった。
千笑はケンカが強いけれどちゃんと女の子。かわいさも、女の子ならではの悩みも持っているのである。平田には、天使が舞い降りたように見えたのだろう。一方の千笑にとっても、平田は大切な存在になっていく。その人の事を良く知れば、決してけんかっ早いわけではないこと、優しい事、弟想いであること、純情であることがわかってくる。お互いは惹かれあい、第1話にしてお付き合いがスタートとなる。早々にこの展開になったけれど、付き合ってからが本番。好きだからこそ迷う2人は微笑ましくもあり、めんどくささもあり…でも常に全力な姿が好印象だ。
全体として、常に千笑と平田はお互いに事実確認ができずに悩んで負のループに陥るパターンになっている。千笑も平田も実はモテているため、お互いにやきもちの嵐。さらに、キス以上に進みたくても恥ずかしくて進めないからぎくしゃく。それを繰り返したまま13巻でいったん区切りとなった。お互いに大好きで、悩んで、別れて、やっぱり戻って。はちゃめちゃなラブコメになっているので、理解不能な行動も多々あるが、若さが感じられる。小学生くらいにちょうどいいかなーと思う漫画だ。刃物を持ち出す倉森や娘を鉄格子の部屋に監禁する千笑の父親はイカレていたが、単調な日々にならずに済むいいイベントだった。
ライバルたちが次々に現れる
平田にとっては倉森が一番危なかった。あの女、千笑と2人で平田と付き合おうなんてすごいことをぬかしやがる。平田は一切その気がないから、千笑にけしかけて善意の皮をかぶった悪意でいじめ続ける。そこでビンタしてやった千笑と、ビンタされた倉森よりも千笑のほうを心配した平田が…マジでイケメンだったわ。
千笑を狙った平田のライバルたちはとにかくたくさんいて、千笑は常に鈍感だから大変だった…。いとこの瑞希や真鶴は全然害あるほどではなかったけれど、一番は優弥。千笑をオトそうとラブゲームをしかけ、見事にオトされてしまった優弥。そしてケジメとして髪の毛をさっぱり男らしくカットし、雨の中ずっと千笑を待つ…かっこいいじゃないか。平田とまた付き合えるようになるって思っていても、優弥というイケメンを手放すことももったいなくて、ドキドキしたわー…。優弥のせいでぎくしゃくして平田と別れちゃったんだけど、髪が短くなった優弥は素敵だった…!
ライバルたちがいくら出現しようと、平田と千笑には友だちがちゃんといる。広田や大野、由香里など、千笑と平田の関係を面白がってはいるけれど、支えてくれているのも確かだった。彼らがいなかったら、乗り越えられなかったこともたくさんあるだろう。友だちがいなかったら、平田と千笑はこれほど仲良くいられなかったと思うよ。愛されているなーってうらやましかった。「千笑だから好きになった」とか、言ってみたいし言われてみたい。
イケメンの闇につけこんだ繁
優弥の設定は、“殺人的に美少年”ということだったけれど、髪がロン毛の時点でないわーって思ってた。でも、千笑に惚れて髪を切ったときは最高だったわ。繁にとっては、どんどん千笑に本気になっていく優弥のこと、許せなかったらしい。「髪を切る」という行為もまた、繁とのつながりも断つような感じがして、辛かったんじゃないかな。
イケメンで、何でもできて、優しくて、強い。繁はそんな優弥に子どものころから感謝しつつ、優弥との差を感じてもいた。だからこそ、優弥の女の人への不信感につけこんで、闇をつくって、自分と同じ場所にいてくれるように仕組んだ。そう仕向ける自分自身に満足もしていた。別に繁の力なんかじゃなくて、優弥が勝手に自暴自棄になっただけで、繁どうこうって話じゃないのにね…
完璧である人にほど、弱さやダメなところを求めたいのが人間。みんな同じところにいてほしいんだよ。自分がみじめにならないように。確かに最低だけど、日本人ってそういうところあるじゃない。「出る杭は打たれる」というやつ。でもどんなときでも、突き抜けてしまえばなんだって大丈夫。「出過ぎた杭は打たれない」。繁にも優弥にも、これからはがんばってほしい。これ以降、彼らは登場しなくなってしまうので悲しい。続編にあたる「本気純愛特攻隊長」でもお姿は拝見できなかった。
不器用すぎる由香里がんばれ
平田と千笑に関しては、心配がいらないんだよ。危ないのは由香里と大野だった。大野はカッコいいし、言いたいことをはっきり言うから心の響く。友達も大事にしているし、何より自分で銀細工アクセサリーを作って人を喜ばせることを本当に生きがいに思っているのがイケメンだ。しかし、何にも執着しない・求めることがないというのは女の子には辛いもので…特に、由香里はそれを全部包んであげられるほど強くなくて、恋がどんなものかも、うまいやり方もわからないのである。とにかく危なっかしくて、うまくいったかと思えば突き放され、行ったり来たりしている…千笑のおせっかいで壊れかけもしたけど、どうにかうまくまとまってほしい。そう思っていたのに…最終回でも解決されないってどういうこと?!13巻でようやく由香里の愛の気持ちに気づいたなんて…大野は鋭いのか鈍感なのかわからない奴だよ。そのまま付き合うこともなく、終わっていくし。どうなってんの?!千笑と平田が一線超えることもなく先送りだったことも悲しかったが、大野から由香里への愛の言葉が聞けなかったことのほうがショックがデカかった。
続編の「本気純愛特攻隊長」でもなんか微妙だったし…なぜ彼らを生殺し状態で保持しておくのか、意味が分からないよ!
なぜ一度区切ったのか
ラストに一線超えて一足飛びに結婚が来るんだろうと思ってたのに、いつも通りのエンディングで最終回。さらには続編がいきなり出てきて、その続編ではまた横恋慕が…っていったいどれだけ繰り返せば気が済むの?と言いたい。それが楽しいんだ!という読者もいたかもしれないが、いいかげんにウザい。大野と由香里の進展も中途半端で、登場した続編もたった4巻で終了…いったいどんなあがきがあったのだろうか…?一度終わるように迫られて、それでもまだ描き切ってない部分があったから名前を変えて出させてもらったのかな?続編も全然主旨が変わらず、普通に続きのように出てきたからね。やだわー大人の事情なんて。
平田は真面目で一生懸命。意外と常識人である。千笑のほうがむしろハチャメチャに行動するところがあり、でも面倒見のいい平田はそれすらも愛情いっぱいに包んでくれる。2人は最高のカレカノだった。ギャグだらけでおかしいところもあったけれど、見合うようになりたいとか、かわいいと思われたいとか、女の子の感情をストレートに表現した、わかりやすいラブコメディーだ。できれば遊佐法男悪役レスラーの輝かしき時代や、奥さんとのラブエピソードがあれば、少しはお父さんに共感もできたのになーと思っている。たぶん奥さんがファンだったんだろうと思うんだ。そして、実際にはお父さんよりもずっと強い人のように思う。
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