設定的にはおいしく楽しい物語
奪い合いは盛大にすることがやはりベスト
やはり小悪魔的に虜にしちゃうかわいい女の子より、昴みたいに疎くて虜にしてしまう男っぽい女の子のほうが好感度高いよね。「桜蘭高校ホスト部」とよく似た雰囲気を持ちながらも、前世の記憶という新しい要素を加えて広げた物語になっている。前提はよくあるつくりなのだが、前世でしかも童話のプリンセスの話題・さらに男女逆転で現世に存在するという、なんとも複雑な構成。それでも前世の記憶とリンクしながらまた同じ人に恋してしまうシーンは楽しかった。
ハーレムならではの男の子たちの要素はばっちりと網羅。年下弟、イケイケ俺様、草食(ロールキャベツ)、メガネ、まさかの女の子、幼なじみ、不思議ちゃん、とにかくチャラ男。いやー楽しみがいっぱいだった。個人的にはなぜツンデレメガネがピックアップされてしまったのかが納得いかない。年下弟か、不思議ちゃんもよく似合っていたと思う。どの人がシンデレラ、親指姫、眠り姫、人魚姫、白雪姫、赤ずきんなのか、一見結びつかないのに、過去と記憶がリンクしたときに、「あ、意外とありか」と気づかされるのでかなりうまかったと思う。さらに仁が魔女設定で、プリンセスにつきものの悪の魔女ってやつまで、過去の昴は虜にしたらしい。
流れ的に、仁と昴がくっつくことでマルクおさまることはわかっていたし、なんだかんだ、見た目的にもぴったりだったなーと思うよ。そして周りもそう思っていたからこそ、優しかったんだと思う。ツンデレメガネの零時を除き。
昴のキャラクターの良さ
とにかく、昴に悪いところが全然ない。清々しい人間性だ。女の子に好かれる女の子に悪い子はいないんだよ。これはほんと。ショートカットの髪、男勝りなのにちょっと抜けているボケ感、女の子のかわいさをわかってくれる優しさ、スポーツ万能な身体能力にモデル体型、まさかのDカップのバスト…普通、男の子っぽい女の子ってバストは壊滅的にないってことが多いのにね。もう最強。ウエストが細すぎるんだろうなー。
最初から受け入れられるわけじゃないってのも好感度が高くて。昴を知るほどに好きになる。そんな魅力が素敵だし、オトそうと思ってオトしているわけじゃなく、無意識にオトしてしまうんだよね。カリスマ的に魅力のある人と言うのは。
仁は魔女ということで昴のお相手に名乗りをあげられないというポジション。でも、昴を小さなころから知っているからこそ、昴を想う気持ちが止まらない。離したくないのに、離さなければならないと思ったり、でも奪いたいと思う。だからいつも眉間にしわよせて一生懸命考えているのである。魔女すらオトしてしまった王子って…どんな奴よ。
それぞれの過去にプリンセスだったという彼らは、前世だけでなく現世でも悩みの尽きない状況だった。生きる時代に合わせた悩みがあるってことよね。人間関係に悩むことも、家庭のことで苦しむことも、誰かを意図せず傷つけてしまったことも…いつの世でも、苦しむポイントは似ているのかもしれないね。そして、助け出してくれるものもほとんど変わらないのかもしれない。昴の言葉はポジティブで、爽やかで、余計なものが一切なく、浸透していくような言葉だ。そして極めつけがとろけるような笑顔。昴の言葉は過去の記憶があるわけじゃなさそうだけど、素敵だった。
もっとイチャイチャしてください
昴の持ち前のものすべてで、みんなの脆い心を助けていくのは気持ちがいいが、運命の相手をもっとぎゅっととらえてくれないだろうか。全然がっつかないのは、余裕があるから、ではないよね?雰囲気的に。もうね、仲間みんなを愛しちゃってる。男同士の友情という、この現世で培ったものがあるんだね。男のフェア意識もあるだろうし、昴が好きだからこそ、強引に迫って傷つけることを絶対にしない、イケメンな彼らのポリシーもあるのだろう。
後からわかることだけど、仁の本来の前世のことを考えたら、確かに王子をないがしろにして行動するプリンセスって絶対いないよね。相当大事にされたのはそのせいもあるのかもしれない。仁と昴がなんだかんだ一番だってわかってるのもずるい女の子の雰囲気。気づけばあげる・気づかないなら私たちがもらっちゃうよ?それでもいいの?って言ってる女子っぽい。
昴はとにかく女の子として意識されて迫られることに弱すぎる。馬鹿じゃないから好きじゃない相手とどうにかなりたいとかは思ってないけれど、焦る昴は悩殺ものであらゆる人を虜にした。自分の気持ちに気づいてがんばりだすまでものすごく時間がかかったため、読者としてはイチャイチャをきっとラストに見せてくれるんだろうと期待していたよ…全然なかったから発狂しそうだった。ここまで盛り上げといて、手を出さないこの仁のヘタレ野郎!!一人ひとりのキャラクターが大事だっただろうけど、仁で始まり仁で終わるべし!
まさかのどんでん返しは意味不明
もちろん、仁と昴をくっつけてくれてありがとうとは思っている。だが、なぜ昴が実は魔女で仁が王子だったっていうのは、どういうこと?要は、前世の王子様仁は、あらゆるプリンセスを虜にしてしまったものの、自分が恋したのは魔女だったってことだ。そして魔女だった昴もまた、あらゆるプリンセスたちをどうにかしちゃおうとしたのは、自分が魔女だったからってことになる。
それならなぜ仁に恋する多数の男子の図ができなかったのか?と考えると、魔女が自分に興味をたきつけることによって、王子をフリーにしたような形になる。最終的に魔女は王子を手に入れた…なんか怖いんですけど。理事長という名の魔の者の策略だったってことかな。王子と魔女をくっつけてあげたいがための…ね。
仁が王子だったのなら、周りのプリンセスがあんまり昴にがっつかないのも納得できるじゃない?王子を優先させてあげたいと思う、乙女心的な話で。魔女の話を抜きにして、純粋に現世では昴を好きになったっていうことでまとめることもできるけどね。はじめから仁と昴の出来レースであり、試されていた。それでも好きなら、まいっかとは思うけれど、おぜん立てにつき合わされた当て馬どもは相当かわいそうでしょ?魔女だった昴も相当ひどい奴だよね。王子を自分ものにしたくて魔法かけちゃったとかさ。まぁ今の昴じゃないんだしいいんだけどね。大事なのはいつでも「今」だからさ。
最後のその1ページまでラブラブを待っていた
仁と昴の強引なラブを見せてくれることなく終わったことがやっぱり悔しい。昴を女の子っぽくしてくれたっていいし、仁のほほえみをもっと炸裂させて昴をときめかせてくれたっていいのに、なんでそのまま終わるんだ。それならもう1巻くらい続けて続きを見せてくださいよ。他のイケメンたちの進む先だって気になっていたんだから!ここまで一人一人のプリンセスたちをちゃんと成仏させてやったのにさ。ラストはいらないの?
物語につめこんだ要素はおもしろいし、最後はまさかのブレをみせたがいい漫画だった。一番気に入っているのは、12巻の表紙とその裏だね。仁の強引なところがちらっとでも見れて、それだけでもちょっと嬉しかった。そうそうそういうの出していこうよって話だよ。そしてみんなをプリンセスに仮装させて盛り上げちゃうとか、理事長の恋まで描いちゃうとか、話広がってくれてもよかったのになー…最後だけが納得いかない物語である。
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