逆ハーレムの締めは微妙だった - 王子と魔女と姫君との感想

ハーレムへの憧れをぎゅっと詰め込んで

男っぽくて女の子にモテモテの昴を主人公として、それを取り合う男たちという設定。しかし男たちには実は前世でも同じ闘いが繰り広げられていた…ということで、前世ではなんと男女逆転していたというお話。なかなかないよね、女性だった人が男性になり、男性だった王子が女性になってそれを取り合うというものは。ハーレム漫画らしく、弟系、俺様系、草食系、メガネ系、同性のお友達、幼馴染、不思議系、チャラ男系…はてさてどんな男が好みですか？最初からわかってたけどね。仁とくっついてくれないと、って思ってましたよ、そりゃーね。最近、個人的にはなぜか年下の男に萌えるのだけれど…年を取ってきたからなのか、どうも心の中で年齢が止まってしまっているようですね…

さて、大路昴を取り合うやつらの前世は、全員プリンセス。シンデレラ、親指姫、眠り姫、人魚姫、白雪姫、赤ずきんちゃん（これはお友達）と、童話の有名どころをすべて網羅。そして仁は魔女だったということで、選ばれる対象にはなっておらず…あー仁が早く萌えるところを見せてもらいたいな。そう思いながらずっと最後まで読み続けましたよ。なので、まさか零時と最初のキスをしてしまうとか、なんてショックな…！絶対嫌だと思ってたんですよね。メガネキャラの癖に全然クールじゃなくて、自分勝手で負けず嫌いな奴なもんだから、どうも受け入れがたかった。元親か真白だったら全然OKだったのに。

絶対に悪く言わない昴のポジティブさ

昴のキャラクターは、とてもよかったと思いますね。男女みたいに、女子校でずっと女の子に好かれる女の子だった彼女。ショートカットの髪、男勝りな性格、女っぽい女子をかわいいと思う男っぽい感覚、スポーツ万能な身体能力と身長…で、狙っているつもりはなく、女の子を虜にできるポジティブ思考な言葉たち。はじめは受け入れてもらえない彼女だったけど、その魅力に学校のみんなが惹きつけられて、どんどん味方が増えていって、うれしかったです。これこそ、大昔に王子だったときの能力があるってことなんですかね…というか、そもそも大昔の王子だって昴と同じで、落とそうと思って女を落としているわけではなく、無意識の天然くんで落としちゃったんじゃないですかね…仁は魔女だからってフィールドの外にいたけど、魔女すらも王子は虜にしてしまったってことだよね？これでいくと。そういえば、姫君のほうばかりが童話の主題として語られるけど、王子側って情報薄いよね？こんな感じで実は同じ王子をめぐって…とかドロドロだったかもしれないなって思ったら、なんか童話絵本も変な楽しみ方ができてしまいそう。

また、実はDカップの巨乳をお持ちだということも、通例の男女みたいな女子と全然違いますよね。だいたい貧乳で、それでも君が好きだよ的な話が多いのにね。悪いところ全部除外してつくったヒロインな気がします。

そして、それぞれに傷ついた過去をもっているんだよね。家庭環境の複雑さだったり、人間関係の悩みだったり、誰かを傷つけてしまったことだったり。そういうものと、前世の辛かった記憶がリンクして、王子に救われた優しい記憶がリンクする。それは過去の記憶による言葉？それとも今の昴からの心からの言葉だろうか…迷いとちょっぴりせつなさを残す回想がなかなかいい雰囲気を作り出しています。

ラブをもっと語らいたいのに

本当はね、もっとラブを語らってもらいたかったわけですよ。昴がみんなの心を救っていってるのはわかるんだけど、だけどさ、運命の相手を見つける物語でしょ？なんでもっとガツガツいかないのかな～…やっぱり前世を抜きにして、単純に大切な仲間を大切にしたいという気持ちがあるんだと思うんだよね。男同士のね。出し抜くのはフェアじゃないみたいな。そんでもって、仁と昴が一番お似合いだって気づいているのに教えてあげないところも少しずるくて…駆け引きってやつは難しいですな。自分も欲しいと思っているけれど、無理矢理で傷つけてしまっては意味がないとか、いっぱい考えているんだろうな～と予想できます。仁は自分が魔女だったという記憶によって、昴の運命を狂わせてしまったことに悩みながら、それでも近くにいたいと思ったり、離れなければと思ったり…狂おしいね。

昴はとにかく色恋に疎く、自分が女の子としてみられることに極端に弱い。そして誰に何を言われるより、仁のことだけは、絶対にすべてを抜きにしたとしても大切にしたいと思っている。お互い、自分の気持ちに正直になれるときまでとてもゆっくりでした。もう早くして！というくらい。他のキャラクター一人一人もなかなかに魅力的だったけど、染井さんや赤ずきんちゃん（米子）の進捗状況ももっとがっつり見たかったな…

え？今まで何だったの？

ここまで早く仁と昴をくっつけてくれと言い続けながら読んできて、なんと最後に実は魔女は昴で王子は仁でしたっていうカミングアウト！え？いや、話が全然違うんですけど？だって、昴は前世で王子だったから、その言葉を踏襲して現世でもみんなの心に響く言葉を発言していたのではなかったのですか？なんで前世で姫君だったみんなが、昴の魅力に取りつかれていったわけ？記憶いじられてたってこと…？確かに、回想では明確に表情まで思い出せているわけではなかったし、同じような髪型だし、どっちだってわかんないけどさ…じゃ、最初から、これは作られたゲームだったというわけだよ。だって仁は男で、他の姫君も男。魔女だった昴が女で、理事長の策略によって最初から魔女に心奪われるように環境を整えられていたということになる。だって他に女おらんやん…おい、出来レースにまんまと乗せられていたというわけか…悔しいよ！そして腑に落ちないのであります。あんなに昴のことを王子だったと信じて疑わなかったのに…魔女の呪いってやつで、モテ男を狙ったプリンセス同士の奪い合いに勝つためには、自分が魔女であることを活かして、誰のモノにもならない・自分だけの王子にする必要があると考えたんでしょうね。そして消されていった。そしてなんか理事長のおかげで戻ってきた…もうわけがわからんよ！今までいったい何だったんだ！現代の昴自身の魅力にとりつかれて、彼らは普通に恋していた。そして王子と魔女のおぜん立てだったわけ。これはかわいそう。

この終わりはいったい…

しかもね。仁と昴がくっついてくれたことは嬉しいことだったのに、くっついてからもラブが全然みられず、そのまま終わってしまったんです！もっと見たかったのに…今までの不器用ラブから、攻めの仁を見たくて最後まで読んだのにね…昴の黒髪が長いところとか、もっとかわいいところとか、仁のほほえみが素敵なところとか…もっとあるじゃん、なんかあるじゃん…あっさり去られてしまい、悲しい限りです。全体としては、逆ハーレムの前世あり、学校でのトラブルやキャラクター一人一人のエピソードも丁寧でよかったのにな～と残念です。

それでも、変に何人もの男からなぜか言い寄られてしまう逆ハーレム漫画よりは、わりと納得しながら読める作品だなと思います。前世と絡める作品ってけっこう多いんですけど、まさか童話をつかってくるとは思わないし、しかも性別変わっちゃってるっていうところで、どんな話になるんだろうかと興味をひきやすいと思いますしね。