こんな子どもがビッグになるんだろうね
母子家庭に育った女の子の毎日を描く
1日1日を大切に生きている、そんな女の子がすみれちゃん。一生懸命で、人への気遣いを忘れないからこそ、誰からの慕われる人間でいられる。いつも人にあたたかくあろうとする分、世の中の冷たいところも見えているんだなーと思う。すみれちゃんはまだ小学校4年生。両親が離婚してしまったけれど、いい子に育っている。お母さんのことも、お父さんのことも大好き。大好きな二人が選んだことだから、離れて暮らすのが寂しくても、私は大丈夫。そんなすみれちゃんが健気でかわいくて…シュールな笑いがあるでもなし。悲しいことばかりが起こるのでもなし。ただそういう境遇になったというだけの女の子の毎日は、少しだけ特別な雰囲気がする。
すみれちゃんの1日1日は、いつも一生懸命で体当たり。どんどん挑戦して、考えて、自分だけじゃなく自分が大切にしたいと思える人たちが笑顔になれるようにがんばっている。ファンファーレが鳴って、笑顔で1歩ずつ行進しているような。そんなお話たちだ。小学校って、初めてのことがたくさんあるね。友だちをつくるのも、誰かと遊ぶことも、勉強することも、何気なく過ぎていっているのに、関わるものはどんどん増えて、いつの間にか向き合い方が身についていく。ただ何となく過ごしていたら気づけないこともあって、すみれちゃんが空気を読んで先回りする姿は、社会人レベル。優しい子だなーと褒めてあげたい気持ちと、少し窮屈そうな切なさもあって。不思議な子だ。時々、ぼんやり何かを考えているらしい。自然の美しさに微笑んだり、無言でたたずんでいるすみれちゃんの物悲しさが、漫画の空気をしんみりとさせ、ホロリと涙が出てくる。
子どもは親の鏡
大好きな人、当たり前の何かが、突然なくなってしまう感覚を早くに知ることになったすみれちゃん。一番悲しかったのは誰なのか、お母さんもお父さんもわかっているつもり。自分たちの気持ちを優先させたことを恥じながら、それでも離れることを選んだ親2人。すみれちゃんはやさぐれることなく、ただいい子で、お母さんのこともお父さんのことも、大好きだと告げる。いい子でいたらお父さんが帰ってくるわけじゃないって知っていて、それでも二人を困らせないように優しい嘘をついてみる。いい子や…。
でもたまに、どうしようもなく子どもになりたいときがあるすみれちゃん。こういう時、一緒に泣きたくなる。私だって本当は…悲しいときに悲しいと言いたいけれど、楽しく生きていきたい。小学校4年生で、大人になれば何でもできるわけじゃないということを知っているすみれちゃんは、本当に末恐ろしい子だ。今から気を遣い続けて、大人になったらマザーテレサにでもなるのだろうか。
お父さんは約束破りすぎてお母さんを泣かせてた。だからすみれちゃんは約束を守る人になろうと思うのだろう。お母さんは我慢して何も言えずに爆発するタイプだった。だからすみれちゃんは、伝えたいと思った時に伝えたいと思う言葉を言うのだろう。子どもはいつでも親を見て覚え、嫌だと思えば反面教師にするし、憧れればそうなりたいと自然に考える生き物。もちろん、すみれちゃんがこれだけ優しい子であるのは、間違いなくお父さんとお母さんのおかげであり、愛を注いで育てたからだとは思う。
お父さんに新しい奥さんになるらしき女性が登場したときは、もう、どうなるんだろう…ってハラハラドキドキ。バツイチになったお父さんを口説き落とした彼女さんの話もまた素敵と言うか、がんばったんだね…ってわかるから…すみれちゃんが認めてあげようとする。そこに裏表も何もないことが、どれだけすごいことか…お父さんとお母さんは感謝しなければならない。絶対に。
小さな喜びを精一杯喜ぶ
毎日の出来事をただ描いていく物語は、飽きられるかもしれないが、毎日がドラマティック!にならなくたって、大事なことはたくさんあるんだと知る。お友達や、お母さんと、笑いあって楽しく生きていることが、幸せなことだと感じられる。失敗しちゃう日だってあって、悲しいことが起きる日もあった。嫌いだったものを好きになれた日もあれば、手作りで作ったものがおいしく作れた日もある。嬉しくて、笑顔になって、気持ちが豊かになる。笑顔って不思議なもので、自分が心から笑うのもそうだけど、楽しそうに笑ってる人を見るのも相当な癒し効果があるよね。お母さんが笑顔なら、みんみが笑顔なら、私も嬉しいんだよ。
時々考え事をしているすみれちゃんは、その無言シーンでどんな気持ちでいるんだろうね。そういう細かいところに妄想力を働かせて、考え事をしてみるといい。
大人になると、どうでもいい日っていっぱい増えたような気持ちになる。小さいときほど、無駄に過ごした日が少ないと思うんだよ。毎日が新しいし、体も成長して、心も成長して、モノの見方がいつもアップデートされている。歳とっても、さぁ今日もやるぞ!っていう気合いを大事にしたいね。惰性でやってないで、いつでも新しい気持ちで取り組める仕事ってやつをやりたいわ。
誰だって読んだら泣いちゃうシーンもある
名シーンはね、誰でもそうだと思うのだが、1巻だろうね。すみれちゃんは、離れたお父さんのことをずっと心配していた。自分が寂しいって思うより、お父さんが寂しいんじゃないかって。それで、お父さんに新しい大切な人ができて、安心したのだろう。だけど、新しい人がいないお母さんのことが心配になる。私じゃない、誰か支えてくれる人が必要なんじゃないかって…。お父さんとお母さんのどちらもフォローしたいすみれちゃん。お母さんだってお父さんを大事にしてたのに…っていう気持ちと、自分と関係なくなっちゃうわけじゃないってわかってても寂しい気持ちになってることが良くわかるんだ。
大切な人に対して、言葉が足りなくて傷つけてしまうことがいっぱいある。逃げ続けていつの間にかどうしようもないところまで来てしまうことだってある。そんなふうに、すみれちゃんを悩ませているのが、間違いなくお父さんとお母さんなんだ。だからこそ、すみれちゃんを幸せにしてやってほしい。子どもだからとほっとかないで、一人の人間として尊重して、大切に育ててほしいなと心から思う。お父さんとお母さんの愛の証明がすみれちゃん。その事実は絶対に変わらない。
すみれちゃんのこれから
小学4年生って、世に生まれてたかだか10年ほど。自我を持って5年くらいしか経ってないだろう。それでもこれだけのことを考えられるのだから、脳みその育った大人ならもっと考えられなくちゃならない。なのに、大人になると脳細胞がどんどん死んじゃうからなのかわからないけれど、どうしようもないバカになることがあるよね。子どもが親を見て育つのは確かだし、同時に親も子どもを見て精神的な成長を遂げる。持ちつもたれつですな。すみれちゃんらしく、まっすぐ大きく足を振り上げて歩いていってくれれば、それだけで救われる人がたくさんいることだろう。
これからのすみれちゃんは、お母さんのためにめっちゃ節約しながらすごい大学に入っちゃうかもしれない。または、早々に就職してかわいいお店で笑顔いっぱいに働いている姿も似合う。早めにお嫁に行く可能性も大だ。どんな未来になるにせよ、すみれちゃんは突っ走るのではなくて、一歩ずつ着実に、行進していくんだろう。
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