料理を楽しみながら毎日を過ごすしあわせを感じる
こんな方法もあるんだ!って知ると楽しい
表紙から元気いっぱいの女の子が登場するらしいってわかるのだが、冒頭で下着姿かと見間違う水着姿の女の子が!まさかチョイスをミスったのか…?ってそんなことではなくて、この漫画はとにかくおいしい料理となんてことない日常を楽しむ物語だった。常にお腹空いたな~…って考えちゃうマルタちゃん。おばあちゃんから教わったという生活の知恵や料理の創意工夫を見せてくれる。ほのぼの…。1話完結、短編集を楽しむ構成で、各話に登場する料理の詳しい説明は合間のページを参照する。使われている写真はリアルに撮影したものっぽくて、本当にこんな料理があるということがよく伝わるつくりになっている。読者の年齢層はちょい高めだろう。実際のお店の場所まで教えてくれるから、行ってみたくなるんだなー。東京に限らず、マルタちゃんは全国いろいろなところに登場。その土地のものを使った料理を作ってくれたり、ご当地の食べ物を堪能して食欲をそそってくるのだ。
確かに、お料理ってその土地の人を形作るもの。それを食べて、おっきくなった人がその土地に住んでいる人なのだから、料理から文化を学ぶっていう格言は間違ってないだろうね。
中には、そんな説明、いる?と思ってしまうものまで詳しくご紹介。ラベンダーの匂いをハンカチにつけてあとは顔にかけるって、順を追わずともわかりますけど。まつわるエピソードとかでよかったのに、と思うのは私だけだろうか。
探求心が日本人じゃない
主人公であるマルタの出身国はポルトガル。名前もマリア・マルタ・クウネル・グロソという長い本名をお持ちの様子。自分の父親・そして母親の両方の姓を名乗る国って、大変だね。そう考えると、おじいちゃんと同じ名前なんだよ~とか、略して呼びたがるのも、文化だなーって感じがする。確かにそんな長ったらしい名前を覚えるのも、つけるのも大変だろう。
「くーねるまるた」の語源は「食う寝る丸太」だろうと思っていただけに、本名をもじったタイトルだったとは気づかなかった。ってか本名明らかになるのが少し後になってからなので、後付けの理由かもしれない。マルタちゃんの探求心というか、大学院に通ってるくらいの才女だろうとは思うのだが、食べ物への執念と追究力がすごい。自分の好きなことをとにかく究めに行くその姿勢。そこが日本人離れしているなーという印象を持たせる。1日の時間サイクルの考え方も相当違うんだろう。
日本人的な自分からすると、体重大丈夫?ってことと、お金大丈夫?ってことが気にかかる。せっかく稼いだお金をすべて自分がおいしいと思うものに使うその精神がすごい。物語が進むにつれ、マルタちゃんはますます太っている気がしているのだが気のせいだろうか。彼女は働いているようだがどれくらい稼いでいるのかは謎。それを説明するようなことはなさそうだし、生活能力が低い可能性がある。家事はポルトガルの家族から教わったことが活きているかもしれないが、自由人過ぎる行動をついつい案じてしまうのだ。
改めて日本の文化を知る
あらゆる料理には生みの親がいる。日本の数々の偉人たちですら、やっぱり日本ならではの食事をたくさん食べて、山あり谷ありを乗り越えて巨匠になっているはずだ。料理という毎日の何気ない栄養補給のことでさえ、必要不可欠の要素だったはずなんだよね。だからこそ、ソウルフードはなんだと聞いたり、同じような食生活を送ることで、人生を憧れの人と同じようにしてみたいと願ったりする。食べるものが生活を決めるんだってことは、社会人になると痛感するからね。いっぱい食べて、強くなれ。いっぱい食べて、いっぱい働け。それはどんな人でも共通していることだし、日本人らしい学びだと思う。
マルタちゃんは日本の文化にすっかり慣れていて、銭湯に通って裸の付き合いをすることもできるし、ふろ上がりにビールを飲むっていう日本の古き昭和のお父さん文化がそのまま引き継がれている。私としては風呂上りはブルガリアヨーグルトを食したいのだが、ふろ上がりこそビールを飲みたい男性は世にわんさかといる。何がおいしいのかは理解できないが、それを知るころには、親父になっているかもね。そしてここでも登場、「湯上りのビール」紹介ページ!これこそいらないわ。敢えて説明するなら、「キンキンに冷やせ!」これだけだろう。
お料理本に見せかけて、知恵本になっているこの作品。賞味期限の切れた缶詰は食べれる・かつ賞味期限が切れていたほうがうまい、と断言しているときもあった。おいしく食べることができるのと、よりおいしく食べることができるのと、分けて表記してくれてもいいのに。食べごろは食べる側が気づくんだよね。
マルタちゃんのキャラも素敵だよ
とにかく食べ物をおいしく食べることしか頭にないマルタちゃん。エンゲル係数がやばいことになっている。せっかく入ったバイト代も食べ物代へ。友だちからいただいた食材は即おいしい料理となって胃袋へ。さらには、友達から借りた電車賃がなぜか肉まん代へ…そんなマルタちゃん。嫌いじゃないよ。かわいいもの…。そして、ポルトガルと日本で学んだお料理スキルを活かして工夫をこらしている彼女は、大学置いといて料理研究家にでもなったらいいのに。
さびれたアパートで暮らすマルタちゃん。一緒のアパートに住む女の子たちとも仲良く過ごしており、何気ない会話、やり取りの中でも常に料理が紹介される。うまくストーリーが組み立てられているなーと思うと同時に、それだけ料理が生活のなかで占めるウェイトってデカいんだなーということを改めて知る。お互いの食材・お酒を持ち寄って、宅飲みを満喫する住人たち。男なんかいなくたって、こんなに人生楽しいんじゃい!生産性のない会話かもしれないけど、和むことは間違いない。時には失敗しても大丈夫。恥さらしなんかじゃない。それをフォローしておいしい料理に変えてくれる人がいるからね!誰かの失敗をヒントにアイディアが生まれて、おいしい料理ができあがるのだ。そしてそれを子どもだったり友だちだったり、知り合いに紹介していって、料理は受け継がれていくんだなー。
料理の数は星の数
日常にある出来事、そしてその中に当たり前のようにある食べ物や生活の知恵。それは本当にネタに事欠くことがなくて、キリがない。それでも、これだけ長く続くくらいにネタをうまくマルタちゃんたちの生活のなかに落とし込んでいる、演出はすごいなーと思うね。
何か物語的に進展するような出来事がこれから起こることはないと思うし、終わりのタイミングは作者さんが飽きたらかもしれない。癒されてる読者はたくさんいるので、ほのぼのと続けてもらえたらいいと思う。続けるなら、そろそろ日本全体、ひいてはポルトガルまですっ飛んで、お料理文化を知れたら楽しそう。ポルトガルがどんな国で、どんな食べ物が好きで、どんなふうに日常を過ごしているのか。どこの国であれ興味あるけど、人の数だけ楽しいエピソードが眠ってるに違いない。
終了は大学卒業が一区切りになりそう。マルタちゃん、ポルトガルで生活する編を始めるか?それはそれで、また楽しいほのぼの漫画になりそうだ。人の体は食べたものでできている。食材に感謝して、大切に食べていこう。この漫画から教わったラベンダーの香りでも楽しんで、今日はリラックスして眠ってみようか。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)