狂おしいほどの妖しさと流麗なタッチの映像が観る者のハートを熱くする、官能美あふれるサスペンスの秀作 「白いドレスの女」 - 白いドレスの女の感想

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狂おしいほどの妖しさと流麗なタッチの映像が観る者のハートを熱くする、官能美あふれるサスペンスの秀作 「白いドレスの女」

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

この映画の原題は「BODY HEAT」。この映画の素晴らしさは、全てこの言葉に集約されていると思う。我々観る者のハートを熱くさせるほどの官能美が、この映画の全編を通してたち込めているのです。

この「白いドレスの女」の作品の完成後、監督、脚本のローレンス・カスダンは会心の笑みを浮かべたに違いありません。舞台となるのは、真夏のフロリダ。事件の起こったその年の夏は、特に蒸し暑かったという、滑り出しの設定が抜群にいいと思います。

主人公の弁護士(ウィリアム・ハート)は、親友の検事とともに、いきつけのコーヒー・ショップで、暑さを嘆いていた。原題は「BODY HEAT(熱く火照った体)」だが、滑り出しのこのシーンが、この映画のラストを暗示します。

暑さに耐えきれず、涼しさを求めて海岸の野外コンサートに出かけた弁護士は、そこで白いドレスを着た女と出会います。栗色の長い髪の毛をした女(キャスリーン・ターナー)は、弁護士を誘うかのように立ちどまり、煙草を吸うが、声をかけた弁護士に対して、自分には夫がいると突き放す一方で、パインウッドに家があると言い残して去っていく。

女の矛盾したこの言動に、全ての謎が集約されているのだが、弁護士はやがてパインウッドの町を訪ね、彼女の家をつきとめる。この白いドレスの女の名前は、マティ・ウォーカー。二十歳も年上の夫を持ち、二階のベランダにたくさんの風鈴を飾った豪邸に住んでいた。

夫は不在がちだという女を、弁護士は抱いた。激しく燃えた彼女は、弁護士に夫への嫌悪感を告げる。弁護士と女の胸に、彼への殺意が芽生えてくる。弁護士は、爆弾作りのプロから特殊爆弾を入手し、彼女の夫を葬る。そして、弁護士と女は、しばらくの間、会わずにいる-------。

このように、女の夫を殺した後、弁護士はしばらく彼女に会わないことにするが、その間に、女の夫の遺産相続を彼女に有利にするため、弁護士の署名が悪用されることになる。このあたりで、ストーリーは一転して、白いドレスの女が計画的に弁護士に接近し、彼を巧妙に利用したことがわかってくる。彼の親友の検事や刑事も、彼女に近づくなと警告する。弁護士も女の正体に気づきはじめ、彼女の正体を探りはじめるのです。

夫の死後、女は白いドレスから喪服の黒いドレスに代わり、いっそう謎めいてくるあたりのローレンス・カスダン監督の演出の細かさには唸らされます。そして、弁護士に自分の意図を悟られたと気づいた女は、爆弾製造のプロから爆弾を買った。そして、その情報は、弁護士の耳にも入ってくる。

女は、いったい何を狙っているのか? -------。

そこへ女から、弁護士にボート小屋で逢いたいという電話がかかってくる。それが罠だ。ボート小屋の戸を開けた途端に爆発するという仕掛けになっている。そうだと気づいた弁護士は、女に銃を向ける。彼の命令で、女は小屋の戸を開けにいく。暗闇に包まれた小屋の方に女は消えたが、その直後に轟然と爆発し、火に包まれ、焼け跡から女の焼死体が発見される-------。

女の死によって、事件は全て終わったかのように見えた。しかし、この映画は、もうひとひねりして、ラストにどんでん返しが用意されている。

ボート小屋の爆発によって、女が死ぬことでも映画は十分成立する。自分が利用し、半ば愛しかけていた弁護士によって、逆に死に追いやられるという悪女の哀しさと悲劇性を浮き彫りにしたところでエンド・マークを出すことも可能だ。ハドリー・チェイスの小説などは、この種の結末で終わっているものが多い。

ところが、現在のように、TVなどでおびただしい量のサスペンス・ドラマが流されるようになってから、事情が変わってきたと思う。刑事ものから悪女ものに至るまで、毎日のようにサスペンス・ドラマが放映されるうちに、視聴者の方も見巧者になって、ドラマの先を読むようになってきたと思う。

こうした事情は、映画の場合も同じだろうと思う。私は、この映画の監督、脚本のローレンス・カスダンに、最後のどんでん返しは、最初から構想にあったのかどうか聞いてみたい気がする。私の想像では、全体の構成が一度完成した後に、あれこれ手直しして練り直しているうちに、このどんでん返しが浮かんできたのではないかと思う。

それにしても、この映画「白いドレスの女」は、キャスリーン・ターナーとウィリアム・ハートのまさに「BODY HEAT」を体現した汗にまみれ、湯気さえ上がりそうな愛欲のシーンは凄いのひと言につきる。現代によみがえったファム・ファタールの狂おしい妖しさと、これが監督デビュー作とも思えぬほどのローレンス・カスダンの流麗な演出力が、ねっとりと絡み合った、実に優れて官能的なサスペンス・ミステリーになっていると思う。

そして、この映画での検事や刑事など脇役の人物描写にも、一工夫があり、ミステリー映画の水準をはるかに超える出来栄えになっていると思う。

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