意味が分かると恐ろしいジャケット - ソイレント・グリーンの感想

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意味が分かると恐ろしいジャケット

4.54.5
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

実際に起こりえないとも言えない??

食料は配給される合成食品、大気は汚染され黄色くなっている、生の野菜や肉は超高級食材。金持ちの家には美しい女性が「家具」と呼ばれ置かれている(住んでいる。)それがこの映画の描く未来世界。

なんとも暗い未来像を描いた映画ですが、この映画一番の衝撃はなんと言ってもそのオチ。

食料配給会社ソイレント社が配給している合成食品ソイレントグリーンの材料は人間だったというもの。このオチを知ってから考えると、途中で暴動を鎮圧するためにやって来たブルドーザーの描写(ジャケットの絵にもなっている)がとっても怖い。つまりこの連れていかれた人達は…

私が途中で予想したのは、「もしや合成食品を食べると生殖機能が失われるのではないか?」だったんですがこれはハズレでした。優勢思想にもつながる話なのかと思ったんだけどな~

現実世界では今のところ公然と人間を食品に加工しているという話は聞きませんが、手放しで安心してもいられないのでは…私達が毎日の様に食べているブロイラーという鶏肉はとにかく早く大きくなって食べられるように、体内時計は狂わされ、成長促進用の餌を食べさせられ、中には体の大きくなるスピードに対応できずに歩けなくなる鶏も多いとか。倫理的な歯止めも食欲と市場経済には勝てないでしょう。

でもまぁ、それは鶏肉じゃないかと思うかもしれませんが、実際、2011年には人肉カプセルという事件がありました。あまりに恐ろしい事件ですので、ここに詳細は書きませんが、市場経済が拡大していく中でこのまま人口増加が続けばこの映画の様な事件が実際に起きるかもしれません。

いや、むしろ事件にすらならず、そういう社会になる可能性すら否定できないのでは…この映画の中では随所に「昔はこれが当たり前だったんだ」というような描写がでてきます。ちっちゃいリンゴを食べながら昔はもっと大きなリンゴを当たり前に食べていたとか、安楽死をさせられる施設でも草原や大海原など、過去にあった大自然の中で死んでいくことになっています。この映画の最後のセリフで「今に、食料生産の為に人間を飼うようになるぞ!そうなる前になんとかしなくては」というのがありますが、もしかしたら、これは、それが当たり前になってしまう前になんとかしなければ…という意味もあったのでしょうか。

因みに、超くだらないツッコミなので読まなくてもいいですが、この「食料生産の為に人間を飼うようになるぞ!」というセリフですけど、実際は人間を飼う為にも餌というか食料が必要なのでそうはならんでしょう。

映画の描く未来と現実の未来

私がこの映画の様な「未来を題材にした過去の映画」を見る際に面白いと思うのが、当時の人達が予想している未来と現実とのギャップです。映画の予想した未来を、現実が遥に越える発達を遂げた物事もあれば、その逆もあったりします。デジタル産業に関しては完全に現実が過去の予想を超える発達を遂げています。携帯電話もといスマホはそのいい例だと思います。この映画の中でも途中でゲームの様なものが出てきますが、ドット絵の簡単なものだったりします。

また、この映画の中では食料の他にも「本」も貴重なものになっています。現実ではライトノベルなどが流行し、書く側の人間はどんどん増えているとも言えますが、一方、近年の急激なデジタル化によって紙媒体の本の必要性は下がりつつあるかもしれない。この映画の設定通りの2022年にはまだ本は無くならないだろうが、あと20年もすれば果たしてどうなることやら。実際多くの雑誌や新聞がネット上で読める様になっているし、コミックなんかもみんなスマホで読んでいる。

もっともっと遠いみらい、それこそ本当に人口爆発が今以上に問題になって食料が枯渇するくらいになったら、本なんて無くなっているかもしれませんね。映画を作った際には予想もしなかったであろう、こういう現実との重なりなんかも過去の映画を見る際の面白さだと思います。

類似描写

この映画の様な人口爆発の懸念を取り上げた作品は結構多い。この映画と同じ様なオチで、マンションの住人を人肉にしている精肉屋をブラックユーモアたっぷりに描いた映画「デリカテッセン」は有名でしょうか。

他にも、ちょっとジャンルは違いますが、ゲームでもこういった描写がよくあります。「ゼノギアス」がソイレントシステムという名前を出してこの映画のオマージュにしているのは有名ですが、「クロノトリガー」でも未来の工場で人間がカプセルに加工される描写があります。ベルトコンベアで人間が流れて来て機械に入れられ「キャーーー」機械からはカプセルが。いかにもこの映画の影響を受けていそうです。

この結末から受ける衝撃とは

この映画を衝撃的なものにしているのは、言わずもがな、食料を人間の肉から作っていたということなんですが、おそらく私達が内心恐ろしく感じているのは、人間を食べるという事実よりも、それを知らない間にやっていたということではないでしょうか。部屋の中に知らない人間がいるよりも、実は昨日一日押し入れの中に知らない人間がいたと知った方がとっても恐ろしくないですか?

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