母と子の崇高な愛情形成 - MOTHERの感想

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MOTHER

4.334.33
映像
4.00
脚本
4.83
キャスト
4.33
音楽
4.00
演出
4.50
感想数
3
観た人
9

母と子の崇高な愛情形成

5.05.0
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
5.0

目次

人生で最高に泣いたドラマ

このドラマのテーマは親と子(母と娘)の愛であるため、放送当時に初めての子供が生まれた私にとって感情移入が物凄く、感動5割増しだった感は否めない。

ドラマ・映画等で観客を泣かせるため使われる手法は、誰か何か(動物でも)が死ぬ事が多いと思うが、このドラマの秀逸なところはほとんど死は前面出さずに、毎回視聴者を泣かせるところだと思う。

特に私が泣いたのは、鈴原奈緒の育った養護施設へ継美と共に訪れた時の出来事。

継美がとてもなついた認知症の園長との別れの時、最後の力をしぼって奈緒と継美を守ろうとするところ。

認知症の悲しみと笑い、捨てられたという過去と向き合う奈緒、虐待から解放され静かに笑う継美。3人がまるで実際の祖母・子・孫のように暮らす中で、園長の最後の愛情表現が素晴らしかった。このエピソードだけでも1クールのドラマが出来そう。

もう一つ挙げれば、奈緒が実の母を本当の意味で許すシーン。

手を握り合い、長い間出来なかった母に甘え、一緒に眠る事。

これは現実社会でも、幼いころ母親に思う存分に甘え、愛されている実感を持てなかった子供は人を愛する事が出来ないという考え方を、ドラマの中で解決してくれたようで、しみじみと泣いてしまった。(私自身そういう人間かもしれないので)

サスペンスドラマとしても秀作

本ドラマのテーマはもちろん親と子の愛の物語なのだが、サスペンスドラマとしても一級品だと思う。

まず題材をありきたりなものせず、虐待されていた子供を保護し、そのまま連れ去るという突拍子もないものにしたのが功を奏したのではないか。

先の展開が読めない、というよりこの人達はこの先一体どうなっていくのだろうかと、まさしくハラハラドキドキさせる進め方で、最近のドラマ制作者へ研修必須科目(そんなものないだろうが)として必ず見て頂きたいくらいだ。

不本意ながら教師になる。様子のおかしな生徒の出現。虐待の事実発見。一時保護から逃亡生活。盗難に遭い一文無しに。育ての親、実の親との再会。誘拐(犯罪)の発覚。親に捨てられた真実を知る。そして逮捕へ。次から次へと出てくる重要なエピソードの連続で、DVDを何回見返してもついつい引き込まれ、さすがに一気に最終話までとはいかないが、3~4話くらいは続けて見てしまう。

警察が追っていると分かりあと1日逃げ切ればなんとかなる、という時の追い詰められる感覚も「子供のために頑張れ!」と応援せずにいられない。

ましてその舞台が「伊豆」ときたら、サスペンス劇場感がかきたてられ、逮捕され継美と離れ離れになる結末には涙なしには見られない。

継美(芦田愛菜)以外にも名役者揃い

芦田愛菜の出世作品として有名なこのドラマだが、他にも役者としての力をいかんなく発揮した俳優が多いのもこのドラマの秀逸なところだろう。

何はともあれ、奈緒の生みの母を演じた田中裕子。

顔も覚えていないはずの娘に都会で偶然に再会し確信するくだりなど、そんな馬鹿な!とツッコミたくなるはずが、理由はないが「母の直感」で一瞬で娘だと分かったのだなと表情の演技だけで伝わった。

実の娘には決して会わない約束を反故にされた育ての親、高畑淳子との初対決シーンでも、一方は裏切られた感情を、一方は子を愛する気持ちが抑えられない感情を、叩かれて、泣いてという演技だけで表現していたのも素晴らしかった。

他人の子を誘拐、育てていくうちに愛が生まれるという役どころの松雪泰子。

この人の無表情なことろ(失礼ですが)、幸薄そうなところも(またまた失礼)ピッタリで、このドラマが薄っぺらなヒューマンドラマでなく、重厚な感じに仕上がった重要な要素だと思う。

役でも感情をあまり表に出さない、無口だった菜緒が逮捕される瞬間、もう継美に会えないを分かった時の絶叫は心にグサッと響いた。

あえて芦田愛菜の演技については触れないでおこうと思ったが、虐待されても親は大好きで、その傷を忘れるため「好きなものノート」をつけたり、時には幸せそうに振舞ったり、

心の奥にある闇を見せない、ちょっと不幸せな、少しだけ暗い女の子なんだなと思わせる演技力は素晴らしい。自然にこちらの心に届く演技だった。

おわりに

終わりに、全体を通して暗いトーンで話が進んで行くドラマが個人的に好きなので、いくつかポイントを挙げてみたい。

虐待されている子供を自然に存在させていたり、周りの程よい無関心、主人公が躍起になって虐待の事実を訴えるわけでもなく、学校の先生なんて実際こんな対応なんだろうと思わせる演出。虐待の実態も始めはそれほど過酷でなく、じわじわと視聴者に分からせる。

金を盗まれて頼った先の養護施設の悲しい現状。誌記者に感づかれ、少しずつ追い詰められていく様子。実の娘を助けるため闇取引に手を染める母。

こんな悲しい現実の中で、愛が育まれていく事がなんとも切なく、普段あまり見ることが出来ない人生を、決して不幸な人生でなく、とても崇高な人生を見させてもらった。

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他のレビュアーの感想・評価

本当の母親の深い愛情を子供は受け止めて生きる。

母性をテーマに虐待について考えてみます。この作品は”母性”をテーマにした作品だと思います。母親というものは、こうであるべきだという世間の勝手な考えを私は少しでも減らしたいと考えます。母親がもつ感情、子供への深い愛情をどんな風に表現すれば良いのか考えさせられました。主人公演じたのは、松雪泰子さんです。彼女の魅力は透き通るような目の中に隠された優しさです。作品の中で、彼女はあまり社交的ではなく、子供もあまりすきではないようでした。なるべくなら、世間から離れて暮らし自分の世界を持っているような女性です。そんな彼女が、芦田愛菜ちゃんが演じた6歳の虐待を受けている女の子を助け、守ろうとします。守ろうとした彼女がとった行動は勇気ある行動でした。女の子は死んだ事にして、誘拐してしまいます。誘拐と言っても少し違います。女性は女の子がもうこれ以上、母親から虐待を受けないようにするために、必死で連れ出し、逃...この感想を読む

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