ゾクリと笑える新感覚ホラー
ギャグとホラーの不思議な混在
特に、表題にある「潰談」について書きたいと思います。「潰」の字の通り、確かに人が潰れる話ですが…どうしてどんな理由で潰れてしまうのでしょうか?!物語の登場人物たちは皆とある美味しい「蜜」を舐め、舐めている事に「気付かれる」と潰されてしまう訳ですが、潰したのが何者なのか、どうして気付かれるとそんな目に遭うのか、結末まで肝心なところが全く分からないもどかしさ、不気味さ、面白さ…あらゆるものが入っていますよね。しかも、こんなに正体不明の怖さがある中で、「何故そうなるの?!意味不明!」と笑いがこみ上げてくる急展開と突拍子もない発想力に驚かされます。
人間が「虫」に置き換えられている?
何となく思い当たるのが、「蚊」などの虫と我々人間が置き換えられているのでは?という事です。最後まで人がグシャッと潰れてしまう理由は分からずじまいですが、「気づかれないように蜜を舐める」ルールや、「蜜」しか食べられない人間が潰されていくあたり、似ている気がするのです。そうです。「蜜」で連想されるのは虫やその他動植物の類ですよね。例えば「蚊」は人間の血を啜り、「気付かれる」とたちまち人間にグシャッと叩かれ命を奪われてしまいます。それと同じことが、人間である登場人物と、それ以上の何か別の大きな存在との間で起きているとすれば…成程。合点が行きそうです。登場人物たちがこの美味しい蜜しか食べることが出来なくなるのも、特定の物しか捕食出来ない虫達と共通していると思います。
世界は狭く、そして小さい
上記の説が仮に当たっていたとしたら、人間の住む世界はとても小さく狭いのかもしれません。私達が虫や花、自分たちよりも小さなものを見てそう思うように、私達よりももっともっと強大な世界に住む強大な生き物が存在したとしたら…それは私達が小さな存在を、小さな力で掌握できるのと同じことをそれらの存在が人間に対して思っているという事になります。彼らにとって大切なものを私達が捕食しているのだとすれば、彼らにとっては厄介な存在ですよね。そう考えると、とても良い意味で人間でいる事の息の苦しさを感じます。普段私達が虫や動植物に対して思う事を改めさせられる展開が秀逸です。固定化した食物連鎖の常識に捕らわれない見事な発想と、常人が持っていない引き出しから出てきた物語で、こんな形で背筋を凍らせ、笑いまで誘ってくれるとは本当に飽きない漫画だと思います。
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