これからますます流行るだろうというバスケ漫画
3on3というバスケの面白さをふんだんに
3on3のバスケが2020年東京オリンピックで正式種目になる…この知らせを聞いて沸き立ったバスケボーラーたちがどれほどいたことだろう。「ドラゴンジャム」はますます流行るに違いない。
この物語は、バスケが好きすぎる奴しか出てこない。だが、その努力と向き合い方は、どのスポーツにも共通する熱いもの。登場するチームは、勉族、T-REXなど本当に実在するチームがモデルになっている。ストリートバスケをする者なら知らぬものはいないSOMECITY、そして聖地・代々木。漫画を読んだらもうそこへ行って確認してみたくなるだろう。「本当にこんなやつらいるのか?」と。…いるんです。
この漫画が出た当初は、ストリートバスケは本当にマイナー中のマイナー競技。だからこそ、本来のバスケットボールである5対5の場合との違いを出すために、選手・チームを対比させて説明している。どちらも似てはいるが、また別の努力が必要になる競技。バスケという同じ玉入れ競技だが、コートの広さも人数も、シュートを決めるまでの工夫もまた違ってくる。何より、大人になってから始めることもできるのが3on3ではないだろうか。確かに走るが、コートは本来の半分。その中で繰り広げられる動きは、どちらかと言えば頭脳戦。そしてエンターテイメントでもある。社会人として働きながら、ボーラーとして活躍する選手たちは、いろいろな苦労を抱えながらバスケをしている。そんな背景がなんか大人の心に響く。
ここでは自由だ。
そんな気持ちにさせてくれる。汗臭いのに爽やかだ。
必要なのは特別なものじゃない
この漫画を読むと何となく感じるが、3on3は本当に努力や優しさでできている気がする。そりゃーあらゆるスポーツ、あらゆる仕事はたゆまぬ努力とそれを成功させるだけの技量によって成り立っているわけだが、3on3というのは、誰かを楽しませるものでもあると言う点がすごく強調されているようだ。そのことがどことなく身近に感じさせるし、どこかのすごい名門校を出ていなくても、ボールとゴール、そして3人いればチームがつくれるという気軽さと、男も女も関係なく、バスケが好きなら楽しめるという魅力がよく出ている。
さすがに龍也みたいに中卒なうえにプー太郎だと心配になるが…バスケを一生懸命がんばっているからこそ、お店の手伝いという仕事を得ることもできたわけで、何か1つを一生懸命がんばることって、あらゆることにつながっていくんだよな~って思えてくるから不思議だ。
リズム感の不思議なドリブラーっていったいどういうことかと言われると、ちょっと説明が難しいが…確かに、トリッキーなプレイヤーはドリブルが全然違う。3人で役割分担するとすれば、ドリブルのうまいやつ、正確なシュートが打てるやつ、リバウンドを確実に取ってくれるやつ、の3種類になるだろう。龍也、アコ、タイゾー(途中からパンサー入るが)という組み合わせもまた夢がある。「自分もがんばったら手が届く…?」そんな気持ちにもさせてくれる。楽しいバスケはもちろん楽しいが、やっぱり勝つため、何かを得るためのほうが断然燃えるし、努力量も半端じゃなくなる。TJというメンターに出会えた彼らは本当に幸福だね。
恩師と戦えるってなかなかない
年齢層がかなり幅広くなるのがこのストリートバスケ。いっぱい走れなくても、技術と頭があれば強くなれるスポーツだからだ。だからこそ、ミニバスで龍也にバスケを教えてくれていた千場さんみたいな人と、真剣勝負ができるのも魅力である。けっこう感動的でもあった。大人がつくるゲームと、若さがつくるゲームは全然違う。どのスポーツでもあるだろうが、それがかなり如実に出ている。若さだけじゃ勝てないものがそこにある。場数を踏んだ経験と、頭脳があるからこそできる作戦。これがよく表現されているため、ドラゴンジャムは割と広範囲の世代に楽しまれるものになっているだろう。
自分の教え子には負けたくないって思うし、自分が知っている人だからこそ教え子は勝ちたいって思うし…真剣勝負がかなり熱い。大人が勝てば、まだまだだなって言ってあげられるし、もし大人が負けても、強くなったって褒めてあげられる。そして、次はどうなるかわからない。経験の分だけどんどん強くなる。そんな可能性の描き方が秀逸で、悔しいと感じる気持ちやがんばりたいと感じる気持ちを、何歳になっても持っていたいなと思わせてくれるのである。
スポーツマンガって、勝ったほうだけじゃなくて負けたほうのチームにも必ずフォーカスする。それはどちらか一方ががんばってきたわけじゃないってことをちゃんと見せるためであるし、まだまだいけるって思わせてくれる。もう1回体作ってがんばろう千場さん。
いかにもバスケっぽい
バスケやってる画がほんと巧いと思う。バスケってどちらかというとチャラさやゆるさ、だらしなさをカッコいいみたいに言うことが多いと思うが、それがうまく表現されている。人の画もちょうどいいから、別のバスケ漫画みたいに異様に長すぎる手足とか、筋肉ないのにできすぎたプレーとか、そういうのが絶対ない。体と心の強さが勝利につながってるって感じがする。汗もウザさがないし、自然である。背景の派手な色使い、チームのロゴも、バスケで言うカッコよさが出ているようだ。
「ジャム」っていうのは、「ごちゃまぜ」という意味だろう。いろいろな背景のある社会人たちが入り交じり、大好きなバスケでつながっている。そして、いろいろな交流をしながら、強くなるために必要なことが何なのかを1つ1つ明確にし、這い上がっていく。自分たちだけじゃ見つけられなかったであろう目的を、たまたまTJが見つけてくれて引き上げてくれた。もう一生龍也・アコ・タイゾーは彼らに頭が上がらないし、その3人のがんばっている姿を見て憧れてくれた子どもたちが、きっとまた追いかけてきてくれるのだろう。そういうスポーツがずっと続いていってくれるような、「つながり」の強さも見せてくれているからか、ドラゴンジャムはあたたかい気持ちにさせてくれる。龍也もアコもタイゾーも、いじめだったりニートだったり、いろいろな辛さをバネに生きている。そしてバスケをがんばっている。何か1つ、一生懸命になれることがあれば、人間がんばれるということだ。
若すぎるこのチームの行く末は
ストリートバスケは、兎にも角にも経験値がモノを言う。若さに必死の努力をプラスした彼らが、果たして頂点へと上りつめることができるか?できればそうだったらいいなって思うけど、そこは2~3回くらいはチャレンジしてほしいところだ。TJたちやそのほかのチームだって最高のチーム。バスケは経験値、そしてフィジカルがモノを言う競技でもある。そりゃないわ…という結末にだけはしないでもらいたい。
特殊な技は決してない。ぶっちぎりの何かができるわけでもない。それでも組織力で上まで登っていく。パンサー王子と給食当番。彼らの努力がどんな結果を得るのか、楽しみでならない。1つ1つのゲームが大事なものになってきているため、物語の進行はかなり遅くなっていると思うが…お互いの意地と意地をしっかりとぶつけてもらいたいと思う。さすがに2巻とか続けられると、いい加減にしろってなるのでやめてほしい。
聖地においては偉そうな態度の奴はいても、悪い奴っていない。がんばってるやつじゃなきゃ、聖地には勝ち上がってこれないからだ。
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