バスケ好きには堪らないそのまんまのボーラーたち
目次
ストリートバスケの楽しさ全開
実際にあるチーム、例えば勉族やT-REX、そしてストリートボーラーの聖地代々木も、SOMECITYというタイトルも…全部が本当にあるのです!そのため、バスケットボールを知っている人なら聞いたことがあるはず…ストリートバスケの雰囲気を漫画を通してうまく伝えてくれており、そこに5対5の本来のバスケットボールチームである辻沢高校メンツも出すことで、うまく対比させていますね。どちらが正当・邪道ということではなく、同じ玉入れスポーツの別々の形、バスケが好きだっていうルーツは同じなのに別れた龍也と涼司の生き方の比較も感じられます。
ストリートバスケに打ち込む面々は、みんながいろいろな仕事をしている人たち。普通のサラリーマンもいれば、お寺の坊主さん、お店の経営者、そして龍也みたいなプー太郎に高校生のアコ&タイゾー。つながりはバスケだけ。バスケを楽しみたいということだけ。社会人が自由にバスケをできる聖地があるぞー!って宣伝効果もあるマンガだなと思います。実際にそこでバスケをしている人たちの輝きが、そのまま伝わってきますね。全力で勝ちに行くけど、お客さんを楽しませることや、自分たち自身が楽しむことも忘れない。自由な大人だからできるバスケのやり方は、バスケをやっていたことがある人なら心躍ることでしょう。もう一度ボールを持って行ってみようか。そんな高揚した気分にさせてくれる漫画でしょう。そのため、けっこうコアなファンが多いでしょうね。
特殊能力があるわけじゃないところが身近に感じられる
ドラゴンジャムのいいところは、すごく身近だということですね。龍也みたいに中卒でプー太郎っていうのはあるようでないような境遇設定ですが、特殊能力が全然ないんです。龍也はリズム感の不思議なドリブラー。アコはクイックシューター。タイゾーはリバウンダーでパス回しのうまい起点の選手…ボール消えたり、ものすっごい遠くからシュート確実に入ったり、バカでかい選手がいるとか、そういったものはありません。そこには確かに技術のあるやつらが集まって楽しんでいる。高速ドリブル、シューター、リバウンド…自分でもがんばったら届くんじゃない?そう思わせてくれるバスケがそこには広がっています。子どもたちが憧れるのも無理はないです。物語に登場する3人組の子どもたちの気持ちがよくわかる…
バスケが好きなだけで、賭けバスケをやり、目標のなかった龍也・アコ・タイゾー。辻沢高校メンツにボロ負けし、TJと出会ったことが世界を変えていく。今まで知らなかったストリートバスケ・3on3の世界。みんなを楽しませるという輝き、そして誰でもエントリーができ実力があれば上っていける世界…これって、バスケ競技をやってた人からするとすごく嬉しいんですよ。ちょっとうまいだけじゃ、やっぱり組織的に強いところには勝てない。環境に恵まれずに育たなかった力もたくさんある。それが、社会人になって開花するパターンもあるのがバスケです。もちろん体力面、フィジカルの優劣はあったりするんだけど、大人になってもできて、大人になってもうまくなれる可能性を秘めているんですよね。
今のところの一番ぐっとくるシーンはミニバス恩師との対決
今のところでいくと、じーんと感じたのはミニバスで龍也を教えてくれていた千場さんとの闘いですね…涼司はちょっとおいといて、大人のバスケと学生のバスケの差というか、雰囲気の違いを見せつけるのがすごく共感できるんですよ。バスケをやっていた人であれば、大人の余裕感・社会人バスケと学生バスケの違いって何となく感じ取れるはずで、龍也たちもそれに苦戦していました。社会人バスケはリズムが全然違うんです。それを漫画でよーく表現してくれているので、なんか嬉しくなってしまう。そして、自分の教え子と真剣に戦い、負けるときがくる…これってすごくじーんとすると思います。嬉しいはずだけど、やっぱり社会人になってもずっとがんばって練習してきているからこそ、悔しいという気持ちがある。強くなったねって褒めてあげたい気持ち、まだまだ俺たちはこれからも進み続けたいっていう闘志。両方あるはずなんだけど、このドラゴンジャムの中では言葉少なで淡々と1試合ずつ展開していくので、なんか読み取りづらい。でも、読み取れるような正直な顔ってリアルではなかなかないじゃないですか。そこも踏まえて、千場さんの表情や、チームメイトたちの表情、空気感をじっくり眺め、彼らの気持ちを探してしまう。そんなテクニックがこのマンガにはあると思いますね。まだまだいけるよ、千場さん。どんなに年を取ったって、バスケやっててくださいよ…!いつまでも越せない背中ってやつ見せてください…!
独特なイラスト・フォントがみんなの憧れ
ドラゴンジャムの魅力は、絵のうまさ、そして字体(フォント)のかっこよさではないでしょうか。まず表紙から、毎回楽しくさせてくれますよね。一人一人の表情、背景の派手な色使い、チームTシャツのロゴに採用したくなるような独特な字体。バスケの「かっこいい」とにかく詰め込んでくれてると思います。ジャムという個性のごちゃまぜをうまく表現し、ゆるく、流れるようなものの中に、確かに彼らの足跡・ドラゴンがある。曲がりくねりながら、それでも目的地に進んでいくドラゴンたち。ちゃんと教わったわけじゃなかったバスケ。それがTJたちとの出会いによってどんどん彩られて、個性が出て、チームにとって誰一人欠けてはならない存在に変わっていく。それぞれがバスケに対してコンプレックスや悩みを持ちながら、それでもバスケをやめずに今、ここにいる。アコは上級生からの嫉妬によるいじめにあい、タイゾーはチームメイトとの関係性がうまく築けなかった過去を持っています。それも全部ひっくるめて、パンサー王子と給食当番なわけです。流動的で、いつもそこにいるものじゃないけれど、確かにつながっている。表紙を眺めているとストリートボーラーたちのチームを表現したロゴなのかな?という気もしてきます。
ついでに言うと、チームのネーミングセンスも…おもろいポイントですね。適当に見えて、ストリートボーラーならつけるかもな~という名前を的確におつくりになっていると感じます。
16歳のチームが果たしてこれからどこまで上がっていくか?
はっきり言うと、経験値の少ない彼らは上まで上がっていけないでしょって思います。若いことだけじゃストリートバスケは勝てないですから。経験値が物を言うスポーツであると思います。なので、ここまでの勝ち上がりはほぼ奇跡…!フィクションだ…と言いたくなる。明らかにフィジカルの差がすごいので、ふつう勝てないよなーって思うのです。しかしこういう演出もないとね…!
ちょっと嬉しくなってしまうポイントと言えば、あの手この手の作戦で乗り切ろうというとき、ちゃんと作戦ボードとコメントを両方使って戦術を伝えてくれてるってことですかね。言語化しつつ、わかりやすいように絵に表してくれると、読者側からしても理解しやすいし、読者も作戦をしっかり理解できるので、彼らのプレーをより身近に感じれるんですよね。実際に再現してみようかなー作戦として参考にさせてもらおうかなーという気持ちにもなるしね。
いい感じでストリートバスケに染まってきたパンサー王子と給食当番のメンツ。これから彼らが見る世界はどんな世界か?それを知るまでは読み続けなければなりません。
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