アクトのキャラが最高な声優物語
天才型人間の苦悩の切り口が新しすぎる
学業やスポーツ、容姿に至るまですべてが完璧なアクト。超難関高校で、先生の出すテストすらただの暇つぶしだと考えている彼には、1つだけ決定的な欠点があった。それは「声」。イケメンボーイから出るとは思えないほどのハイトーンボイスのおかげで、バカにされることもしばしば。そんな悪口に対抗し、相手を完膚なきまでに蔑みの言葉で攻めまくるアクトは、学校内でも孤立した存在だった。そんな彼が、お隣に住んでいる春坂なりと出会い、自分のコンプレックスだと思っていた“声”を武器に仕事をする「声優」の道へとのめり込んでいく。
というわけで、切り口が新しすぎて、かなり笑いました。アクトの徹底した悪役キャラにまさかのかわいいファンシー声、そして自分を奮い立たせてくれたのはなんと年下でしかも中学生の春坂なり。中学生とは思えないその声優の才能で、あらゆる役をこなす「なり」のことを、アクトは本気で追いかけ始めるという設定。おもしろすぎです。男主人公だといろいろな切り口にできちゃうんですね~。
何に対しても本気じゃなかったアクトが本気になった時、もう可能性が無限大すぎる…!どこまでも高すぎるそのプライドと、秀才で勘のいいブレーンを武器として生かし、あらゆる役に入り込むアクト。声優としていろいろな人の目にとまっていきます。天守閣から周りの人間をゴミのように蔑むのが好きだというアクトですが、本当は誰より「人」に興味があることがだんだんとわかってきて、少し嬉しくなりますね。もともと人を操りたいと思っていたような奴なので、声優として「こいつを攻略したい」と思うのと、ばっちりリンクしたんだろうなーって思います。自分より秀でている奴が初めて自分の前に現れて、そいつに勝ちたいとがんばっていくアクト。実はすっごい健気だ。
素のアクトを理解してくれる友だちが素敵
アクトは親に敷かれたレールの上で生きていく予定でした。もちろん勉学・スポーツすべてにおいて一番となることも当たり前で、自分でも何とも思ってこなかった。ただ、周りのうるさい奴らを黙らせたいとずっと思ってきた。それが、声優になることによって叶うなんて、思いもしなかったことでしょうね。すべては春坂なりがきっかけで、アクトのハイトーンボイスを見つけてくれたおかげ。今までその声のせいでたくさん馬鹿にされてきたアクトですが、それが武器になって活躍の場が広がっていくんです。コンプレックスだと思っていたものが実は長所であり、個性であると気づけたらいいのに…ってことがよくありますよね。悩んだり諦めたりする前に、自分の力にして活かす方向へエネルギーを使うほうが、人生楽しいってことですな。
そうやって本気で取り組み始めた声優の道。学校内でも、七星プロダクションでも、アクトの周りにはたくさんの友だちができます。アクトはいまだに「友だち」というものにしっくり来ていない…というのが笑えるポイントで、心はわかっているのに頭はわかっていないっていう状態で最後まで行ってもらいたいですね。もう完全に戦友なのに、全然理解できないアクトがかわいいです(笑)。どんだけ一人で生きてきたんだこいつは。
天性の声に、アクトの努力が合わさって、最高の声を出す。アクトだって知らないことに対しては無力なんです。知っている人から教わり、自分のものにし、輝きだす。性格に難ありでも、一生懸命であるアクトの周りには、自然と人の輪ができていく。アクトの毒舌ももはやかわいいものです。
声優業界を詳しくリサーチしているのがわかる
この漫画を読んでいると、声優になるって大変なんだなーってことも分かるし、意外と活躍の場が広いということも分かります。職業系・歴史系は勉強になるからいいよね。アニメだけじゃなくて、洋画の吹き替えもそうだし、アニメ声を生かした歌手の仕事もあるし、ナレーションの仕事やラジオでのパーソナリティの仕事…けっこういろいろあるもんですね。それでもやっぱり、アニメの主役の声は花形らしい。アクトも一生懸命「なり」に追いつこうとレギュラー取り目指して駆け上がっていきます。
「夢は必ず叶う」とは断言しないのもまたいいですよね。天才アクトががんばればこれだけできる!ってことではなくて、一生懸命やり切ったとしても追い越せない壁があり、何が足りないのかと悩んだり、諦めそうになったり…そういう負の気持ちもたくさん経験したうえで、大きくなっていく。何しろアクトは今まで失敗や挫折を知らない男であるため、これがなかなかの試練です…それでもアクトの声を信じて託してくれるマネージャーさんやプロデューサーさんがいて、フォローしてくれて、一緒に考えてくれる。そして養成所の仲間たちが勇気をくれる。やっぱりいいよね。がんばって何かを目指すって。仲間がいるって。特に声優というお仕事では、相手の声や間合い、監督の要求と自分の持つ力など、いろいろなものを理解したうえで取り組まなければならない仕事らしい。1人だけでできる仕事でもない。まさに、アクトの心の修業にもってこいの仕事です。
本気で何かに取り組んだことがあるか
自分的にはそれなりにがんばってやったつもりでも、それ以上にがんばっている人がいるわけで…自己満足で終わらせては成長がないんですよね。だからこそ、アクトにとっては春坂なりが道しるべになっていて、そこに追いつくためにあらゆる努力ができている。目標があるからがんばれる!ってことを教えてくれます。
本気じゃなくても、それなりの時間をかければできてしまうっていう人がいるじゃないですか。でも、そういう人は努力する人間には勝てない…と言いますよね。現実には才能を上回ることって相当無理な話だと思うんですけど、努力する人間の気迫や想いの強さってやつはリアルに存在すると思うんですよ。それがゆるぎない自信につながるし、何か自分の根幹を揺るがすような事態になったとしても、ぶれずにいられるというか。結果それ以上の何かを相手が持っているのだとしたら、敵わないことだって絶対ある。だからこそ、終わりがない。頂点に達することがないからこそ努力できる。アクトはどんどん分厚い人間になっていっていると思いますよ。相変わらずの上から目線で嫌われやすいけど、自分を貫き通しているのが素敵です。
なりとアクトのラブはあまり見たくない
将来的には、なりとアクトのラブの方向がちらつくんじゃないかと思っています。できれば最後まで、アクトにはなりを追いかけていってほしいと思っているので、そのあたりは翔ちゃんとうまくいってほしいなと思っています。追うべき対象がパートナーにもなってしまっては、気苦労が絶えなそうだから…という謎の心配をしています(笑)。翔ちゃんの想い、早く自覚してもらいたい…なりは鳥羽と一緒になればいいよ…。
ところで、アクトはあらゆる人を呼称で呼びますよね。ドル箱やらわらじやら丸虫などなど…蔑みの言葉のはずが、もはやいいあだ名。そういう変換がうまくできるのも秀才のなせる技じゃない?って思えるんですが、ちょっとアクト好きすぎですかね。あの託児所のシステムも相当うまいじゃないですか。声優だめなら政治家すら向いているかもしれません。
態度が悪ければどんなに能力が高くてもはじかれるのが世の常ですが、アクトぐらい正面切ってやり切る気持ちが大事だよな~って思うんですよ。最後までぶれずにあらゆる難題を克服しながら、声優会に君臨してもらいたいものです。
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