アクトが頂点に上り詰めるまではまだ遠い - 天使とアクトの感想

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天使とアクト

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アクトが頂点に上り詰めるまではまだ遠い

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4.5

目次

まさかの組み合わせに驚く

主人公のイクルミアクトは,とにかく完璧な高校生。超難関の高校に通い,先生方の出すテストなどごみレベルに思えるほど賢く,スポーツも容姿も完璧なアクト。そんな彼にもたった1つだけ欠点が…声である。明らかに見た目と合っていない超ハイトーンボイスなのだ。個人的には,ハイトーンボイスであることよりも,性格が悪すぎることのほうが欠点のように思えたが…それはこの声優への道のりを駆け上がっていくことで気にならなくなる。

唯一の欠点であるハイトーンボイスをディスられるアクトは,文句を言ってくる奴ら・近寄ってくる奴ら,すべてに敵意を示し,言葉攻めでぶちのめして自ら孤立への道を歩んでいた。みんなが俺より下だと思えるくらいまで,彼は努力を重ねてきたのだ。だからこそ,声を理由に全部を否定するような奴らが許せなかったんだと思う。

そんな彼を助けてくれたのが,お隣に住む声優の春坂なり。アクトの声を気に入って,声優への道へ導く,天才中学生だった。

超ファンシーなハイトーンボイスを持ちながら,相手を毒舌で攻め落とすアクトは実に爽快。おもしろいポイントだなーと思う。男を主人公にした漫画って,ほんとに長続きするよね。読みやすいし,回りくどくなくて,少年誌って感じがする。何に対しても本気にがんばらなくたって手に入ったアクト。彼が,本気で取り組むことを見つけたら,もう手が付けられないくらいの可能性が待ってるんだよね。もともと頭のいい子だから,どうすれば声優として道がひらけるのか,役になり切れるかを常に冷静に分析・実践していく。そこには才能ではなくて,ちゃんと努力が感じられるから,共感もするし,感動もする。

人を馬鹿にすることで自分を守ってきたアクトだったけれど,少しずつ自分から他人を理解しようとしたり,その能力を評価したり,感謝したりできるようになっていくから,いい話なんだよね。最近では,春坂なりのポジションにまで迫る勢いをみせているけれど,もうすでにアクトがほしかったものは手に入っている気がして,若干の倦怠感を感じてきたのが残念ではある。もちろん,「春坂なりと肩を並べる・あるいはよりすごい声優になる」ことが目標なんだけれど,そこはずっと達成されないでほしいっていうか。ずっと追いかけて,ずっとがんばって,たくさんの仲間に感謝できるアクトでいてほしいなって思う。

声優の世界で出会った友達

アクトがコンプレックスだと思ってきたハイトーンボイスが,声優界では磨けば光る原石のように扱われるようになって,それだけでもすごくうれしいことだよね。だけど,アクトの目標は常に一番上。声優界のトップに君臨すること。…まったくどこでも人を下に見たいアクトである。でもそういう闘争心って大事な気持ちだし,悪いことじゃないよなー。

親に敷かれたレールの上の人生を歩むことではなくて,自分が心から望んで声優になろうってがんばるアクトは、いろいろなマイナスポイントを抜きにしてもカッコいいと思うよ!だからこそ、あらゆる声優仲間たちが恋しちゃうんだよなー…。アクトだって、最初からすべてが完璧だったわけじゃないはずなんだよ。誰よりも努力して手に入れたものだったはずだし、そんなアクトの毒舌だから、許せちゃう気もする。

コンプレックスだった声のおかげで、アクトには仲間ができた。なのに、アクトは中盤まで全然「仲間」ってものが分かってなくて、「え?それなに?」ってそこだけめっちゃバカになる。もはやそのすっとぼけ具合はかわいいなーと思う。もう確実に心では友達がいったいどういうものかをわかっているくせにね。

声優のお仕事ってたくさんあるらしい

よくアニメを見ていると思うんだけど、「あれ?この声は○○と同じ声…?」って気づくことがある。すぐにわかることもあれば、役柄にフィットしすぎて全然わからないこともあって、でも確かにいい声優さんっていろいろなアニメで仕事をしているって気づく。いい声・役にぴったりはまった声は、やっぱりそんなにたくさんあるわけじゃなくて、いま活躍している人たちって本当に一握りなんだろうなーと思うようになった。それはこの「天使とアクト!!」の漫画のおかげかもしれない。

声優のお仕事の幅は以外にも多岐にわたり、ナレーションもできなきゃいけないとか、洋画の吹き替えもできなきゃいけないとか、いろいろあるらしい。アニメはもちろん花形みたいだけど、こういう普段スポットライトを浴びなそうな仕事に注目して漫画にしてくれているのって、けっこう勉強になる。

アクトが春坂なりに勝つことができるかどうか?の前に、アクトにはたくさんのライバルたちが立ちはだかる。すでに活躍している大御所から、今をときめく新人声優、たくさんの人たちと競い、どの声が一番なのかをディレクターたちが決定する。もちろん好みもあるし、がんばっていれば必ず夢がかなうわけでもない。実はそのあたりが現実的でもある。幸い、アクトは実家があまりにも裕福だし、セカンドの選択肢もおそらくあるだろうから、最終的に失敗しようが大丈夫だとは思う…。漫画だし、さすがに声優として輝く道にはなるだろうけれど、失敗もあり、挫折もあり、それでもあきらめずに食らいついていくものだけが生き残れる。それってどんな業界でも同じことだし、常にトップレベルを意識して仕事ができるかどうかって大事だなーって考えさせてくれる。

目標を持ってがんばる強さ

常にこれは教えてくれていると思うね。アクトには「春坂なり」という明確な目標があり、常にレギュラーを取れるかどうかというサバイバルのような環境で仕事をしているから、自分と他の人の差、努力量の違い、才能の違い、いろいろなものが彼を後押ししてくれている。誰よりも努力をしていたとしても、それが結果に結びつかないことがある。結局はそういう努力は自己満足で、他人から評価されることや、数字に残ることでしか努力を証明できない。…って書くとちょっと厳しいかもしれないけど、少なくとも声優はそういう仕事だよね。才能ももちろん大事、一生懸命向き合って考えることも大事。天才アクトが努力するんだから、そりゃーものすごいことになるだろう!って思うんだけど、それ以上の努力量・経験値を持つ人たちが声優界にはまだまだ君臨している。今までアクトががんばって敵わないなんてことなかっただろうけれど、がんばっても敵わないかもしれないライバルがたくさんいるこの世界は、怖いだろうけど魅力的なんだろうなー。

お願いだからそのままで

アクトが声優のどのレベルまで駆け上がっていくのか?それがまだわからない。これだけレギュラーをとり、現場を盛り上げ、いい演技をしているってのに、これ以上の最高の舞台!ってやつが来るのかも少し疑問なところではある。「春坂なり」に勝つってどういうことなのか?たぶん、一緒に声優として芝居をすることなんじゃないのかなーって思うんだけどね。それか、「まだまだ俺は丸虫に敵わない」って自覚できること?それはすでに自覚できていると思うんだけど、改めて、お互いを切磋琢磨していこう!って終わりになるんじゃないだろうか。

ここで変に、「春坂なり」とラブロマンスされても気持ち悪いし、どうしても誰かと…っていうなら翔ちゃんあたりにおさめてくれないだろうか。最後までライバルっぽく、師弟関係的な雰囲気で終わっていてほしい。

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アクトのキャラが最高な声優物語

天才型人間の苦悩の切り口が新しすぎる学業やスポーツ、容姿に至るまですべてが完璧なアクト。超難関高校で、先生の出すテストすらただの暇つぶしだと考えている彼には、1つだけ決定的な欠点があった。それは「声」。イケメンボーイから出るとは思えないほどのハイトーンボイスのおかげで、バカにされることもしばしば。そんな悪口に対抗し、相手を完膚なきまでに蔑みの言葉で攻めまくるアクトは、学校内でも孤立した存在だった。そんな彼が、お隣に住んでいる春坂なりと出会い、自分のコンプレックスだと思っていた“声”を武器に仕事をする「声優」の道へとのめり込んでいく。というわけで、切り口が新しすぎて、かなり笑いました。アクトの徹底した悪役キャラにまさかのかわいいファンシー声、そして自分を奮い立たせてくれたのはなんと年下でしかも中学生の春坂なり。中学生とは思えないその声優の才能で、あらゆる役をこなす「なり」のことを、アクトは...この感想を読む

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