哀しくも美しい女の戦い - 大奥~第一章~(2004年)の感想

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大奥~第一章~(2004年)

4.004.00
映像
4.50
脚本
3.50
キャスト
4.00
音楽
4.00
演出
4.00
感想数
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観た人
2

哀しくも美しい女の戦い

4.04.0
映像
4.5
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

美しく豪華な衣装だけでも一見の価値あり

元々時代物がお好きな方もそうでない方も、楽しめる理由の一つが色とりどりの着物に身を包んだ女優たちの美の競演!「この作品はフィクションです」と認めているからこそ、大河ドラマのようになるべく史実に忠実に描こうとする作品とは異なり、時代考証そっちのけで美しさだけを基準に衣装を選べるのでしょう。

城中の庭で火花を散らす正室側室たち、その赤や金の着物が緑の木々に映えて何とも華やか。女優たちの優雅な所作に、色気漂う流し目と白いうなじ、女性であってもドキドキさせられます。


時代物が好きで、その中でも特に綺麗な着物を着たお姫様が出てくるシーンが大好きだった私は、前シーズン菅野美穂主演の「大奥」に感動し、それから待つこと一年余り、待望のリターンドラマでした。今回も様々なキャラクターのお姫様達があの手この手で上様の寵愛を得ようと策略を巡らし愛憎劇を繰り広げます。そんな中でも、瀬戸朝香演じる聖母のように心清らかなお万の方様の美しさと強さに、女性なら誰しも憧れることでしょう。

西島秀俊という俳優を知った作品

恥ずかしながら、私はこのドラマで初めて西島秀俊という俳優を知りました。そして惚れました。

母親の愛情を得られず、乳母である春日局の偏った愛情を受けて育った家光。偉大な祖父を持ち、天下泰平のため、徳川の世永続のため、お世継ぎをもうけることが使命となった三代将軍。三代目ってどんな場合でもなかなかに大変な立場ですよね。そんな彼の屈折した孤独な感情を見事に演じています。

女嫌いになるのも納得の生い立ち、けれど決してあきらめず思いもよらない作戦を次々繰り出す乳母の春日局、そんな春日局に人生を狂わされたお万の方様の優しさに触れ少しずつ心を開いていく上様、観る女性たちの母性本能をワシづかみです。


この次のシリーズ「大奥〜華の乱〜」で将軍を演じた谷原章介にも、大河ドラマ「篤姫」で篤姫にだけ素顔を見せる将軍、堺雅人や、皇女和宮と仲睦まじい爽やか将軍を演じた松田翔太にもトキめいた私。そんな私の上様キャラ大好き歴史が始まった最初の作品でもあります。だって本当にどの上様もカッコいいですよね!

そうして上様キャラからファンになった後、俳優西島秀俊の作品はほぼチェックしています。ものすごい演技派ではないのですが、まあとにかく顔と声とスタイルが良い!演技力の物足りなさを補って余りあるハイスペックさにやられてしまいます。春日局の異常なまでの家光愛に自然に共感できてしまうのも、西島秀俊の魅力あればこそです。

悪役春日局の爽快感

この「大奥〜第一章〜」で描かれている春日局は、現代で言えば国政のトップまで登り詰めたスーパーキャリアウーマンです。武家の名家に生まれながら父親が明智光秀の謀反に加担したことから彼女の運命は大きく変化します。今で言えば"負け組"の底辺から這い上がり、将軍の乳母から大奥総取締となり老中にも匹敵する権力を持つようなります。

まず見所は、高島礼子演じる、家光の生母お江与の方様とのバトル。お江与の方様は、織田信長の妹お市の方様(絶世の美女と謳われた)の娘であり、織田信長を裏切り殺害したのが明智光秀なのです。つまり明智光秀の家臣の娘である春日局と、織田信長の姪であるお江与の方様はいわば仇同士、仲が良かったはずがない、というのは想像に難くありません。

乳母に育てさせるのが慣習だったこの時代、仇の女にお腹を痛めて産んだ我が子を奪われたお江与の方様の気持ちを考えると、次に産んだ次男を手元に置いて溺愛したという行動も理解できるところがあります。そうして長子家光を守る春日局VS次男国松(後の忠長)を推すお江与の方様という女の戦いが幕を開けます。

春日局は、家光の地位確立のため、そして家光のお世継ぎをなすため、持てる手段をすべて用いて戦い続けます。家光のためなら鬼にでもなる覚悟、そこにはやはり男と女だからこその奇妙な愛情も絡んでいるように思えます。

このドラマでは彼女の狂気の部分に主にスポットが当てられるため、松下由樹演じる春日局の迫力たるや凄まじいものがあります。手段を選ばない非情な権力者なのに、でもなぜか回を追うごとに愛着が湧いてくると言いますか、応援したくなってくるのが不思議です。やはり何かに情熱を注ぎ、一心不乱に頑張る人から私たちは何かを感じ取るのでしょう。

大奥という異空間での人間模様から学べる女の強さ

いつの時代も男中心の歴史の流れの中で振り回される女性たち、"大奥"という狭い異質な世界はその不条理さを凝縮したような場所です。でもだからこそ花開く女の柔軟で軽やかな生き方は、現代の私たちにも多くのことを教えてくれます。

例えば、春日局とお江与の方様、どちらの女性も戦国の世で多くの家族を失い、男たちの駆け引きに利用され、今の時代ではありえないほどのトラウマを抱えています。でもひたすら前を向いて進もうとします。その姿は潔く美しいものです。

男社会の中でバリバリがんばっている女性たちも、家庭という戦場で奮闘している女性たちも、そしてそういった女性たちの働きを知らない男性たちも、この作品を通して女の誇らしさと美しさと強さを感じることができるでしょう。

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