不良漫画の最高峰 - WORSTの感想

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WORST

4.254.25
画力
4.25
ストーリー
4.25
キャラクター
4.25
設定
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演出
4.25
感想数
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不良漫画の最高峰

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.5

目次

圏外から来たダークホースが番長を目指す

WORSTの前作品「クローズ」鈴蘭の伝統を受け継ぎ、携帯電話通信圏外から来た男「月島花」が番長を目指すストーリーですが、この「WORST」というタイトルがこの物語の全てを表しているように思います。「WORST」とは「悪い順位」となりますが、喧嘩をする事自体が悪でありつつも喧嘩の強さだけでなく、男としての真の強さは何かを表現しているように思います。 前作のクローズでは鈴蘭だけでなく、武装戦線や鳳仙学園といった同世代の悪達の中での最強を決めるという目的が全面に押し出されていましたが、今回の「WORST」では熱い思いを持ちながら 10代という青春期のリアルな悩みを通して最強とは何かを考えさせる為のメッセージ性が強かったように思います。

強いだけでは一番になれない

鈴蘭に入学する為に引越して来た月島花は梅星家に下宿する事になり、そこで、迫田、蓮次、寅之助、拓海と同居する事になる訳ですが、迫田は同居に際して同居人の一番を決めようとバトルを提案し、これを花が一蹴することで梅星一家の結束が深まります。このシーンからただの最強を決めるだけの漫画で無い事が分かってきます。まずは、 迫田、蓮次など中学時代に名を馳せた面子を一蹴するだけでなく、付いて行きたいと思わせる脅威的な喧嘩の強さと人間力の大きさを示した事、そして自らを変えようと寅ナイフを取り出した寅に対して言った花の一言。ただ喧嘩が強いだけでは最強にはなれないという事を印象付けているように思います。この後、鈴蘭恒例の一年戦争でも花は圧倒的な強さと人間力で従う人間ではなく、仲間を集めていき、鈴蘭初の番長への道が始まりました。 しかし、そんな中唯一仲間になる事を拒否したのが天地寿。 天地は、この後のストーリーで強さこそ正義という考えから従う人間を増やしていく姿が花と対照的で、強いだけでは一番になれないという事を象徴している役所となっていきました。 また、「強いだけでは一番になれない」という点は、鳳仙学園のトップを決める会でもまた違った確度で表現しています。 鳳仙学園のドンだったキングジョーこと「金山丈」の推薦でトップの座に座る事になった月光兄弟の「月本光政」は同学年、いやキングジョーの次に鳳仙学園では強いとされていながら トップになる事を反対する人間を従える事が出来なかった。 それは、根回しなどで言い従えようとし自身の覚悟を周りに示せていなかった事が原因であり、覚悟をもってキングジョーい立ち向かった事で、負けはしても仲間が集まる事になった。 これも強さだけでなく、人間力。その人間力は覚悟によって生まれるという事を象徴しているシーンでした。

危険・死と隣り合わせの状況

この物語で、一番の衝撃はなんと言っても六代目武装戦線の頭「河内鉄生」の死でした。 河内はクローズの番外編から登場し、喧嘩っ早いが人間味の溢れるキャラクターで武装の清広との跡目争いを勝ち抜き六代目の頭です。 クローズ時代のニューフェイス達の卒業が控え、これからという時に交通事故によって他界してしまいます。 マンガでありながら不良が「死」と隣り合わせの状況にいるという事を強烈に印象付けたシーンでした。 あの時ヘルメットをかぶっていれば、バイクを借りずに徒歩で移動していれば、など。 不良ならではの格好良い描写の裏側にある危険な行為を改めて考えさせられました。 また、死を目の当たりにした7代目頭候補「村田将五」の苦悩を花が心配するシーンで、 身内や信頼している人間の突然に死など身近に起こりえる状況での整理の付け方を綺麗ごとではないリアルな言葉で表していて とても他人事とは考えられません。きっとこのシーンは作者の方が死という掛け離れた状況を身近に関して欲しくて描いたように思います。

受け継がれていく伝統

WORSTの良さは主人公の月島花が一年生からスタートしているところにあると思います。 一年生として上を目指し登り詰めて行こうとする野心と、2年生となり追う身もありながら追われる身としての行動。 そして3年生として名実共にトップになった時の考え方と立ち振る舞い。 それぞれが年を追う毎に変化しており、年を追う毎に来るニューフェイスを当事者として見ていた時から気がついたら客観視できるようになっていきます。 それは鈴蘭に限った事ではなく、鳳仙学園や武装でも下の代のメンバーがそれぞれの伝統に沿った成長を遂げる過程を見る事が出来ます。 各キャラクター毎に各キャラクターの経験を経た先輩たちがいるというのも、この漫画ならではの面白さです。 加藤秀吉と黒沢和光、そして蓮次。岩城軍司と原田十希夫、そして八板。ブッチャーと迫田と大善努などとそれぞれ今を生きる人間とその過程を経験し、 更に成長してカッコ良くなった男達が存在する事で自分はどのタイプに近いか、またそのタイプがカッコ良くなるとどうなるかをこの漫画と通してあてはめる事ができるように思います。

WORSTはキャラクター一人ひとりを大事に描き、そのキャラクターごとの考え方を自分に投影しやすい繊細な描き方をしているので 一番強い人間は一人かもしれないけれど、一番かっこいい人間は自分自身が決めるべきでそれは決して一人ではないと考えさせられる本当の格好良さを学ぶ教科書の様な漫画であると思います。

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