まさかのどんでん返しの連続 - アビスの感想

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アビス

2.502.50
画力
4.00
ストーリー
3.00
キャラクター
3.00
設定
3.50
演出
3.50
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1
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まさかのどんでん返しの連続

2.52.5
画力
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
設定
3.5
演出
3.5

目次

グロホラー

き…キモいです。虫がうじゃうじゃ、血は流れるし、人の体は簡単にちぎれます。なぜ自分たちがここにいるのかも、目の前で起こっている出来事の意味も、何もかも忘れてしまっているけれど、とにかく生きてここから脱出する。その目的のために、同じ能力者の人間たちと協力するしかない。希望を信じて…

当初の予想では、ケータイ電話を通して会話できたところをみると、おそらくは人間のエゴによる研究か何かで始まった悪夢なのかなと考えていました。人体実験のなれの果てとか、世界はもう滅亡しちゃってましたとか。しかし、まさかアビスというものの侵食によって日本がなくなりそうになっているという展開になるとはね。この辺はおもしろいし、予想があまりつきませんでした。檀ヒビキという人間が何も過去の事を覚えていないことから、おそらくはかなり重要なキーパーソンなんだろうとは思っていたけれど、けっこう途中までどちらかというと悪のヒーローフラグが出てました。ところが、実は伏のクローンだったという事実。そしてここは過去の世界であったという事実…もはやストーリー的にはごちゃごちゃしてきてて、理解するのにちょっと時間がかかりましたよ。単純なグロい化け物退治では終わらせない魅力とも言えます。

アビスの奥へと進むたび、雑魚のイーター共ではなく人間の形をした敵と対峙する展開になっていく。ますます研究の成れの果てなんじゃないかと思っていたけれど、そんな簡単な話ではなくて、アビスと科学者の闘いだったんだよね。そこに普通の人間巻き込むところはさすが人間様。犠牲もいとわないのがいかにも欲にまみれている。

それぞれに与えられた能力を駆使した頭脳戦

テレパシー、テレキネシス、ジャンプ、炎、サーチ、パワー…1人に1つ与えられた力は1人だけではとても弱く、とてもイーターたちにはかなわない。しかし、力を合わせれば勝てる。頭脳があるのが人間なのだから…

檀くんの持っていた「コピー」の力を駆使して、未知の生物たちと戦っていくその姿。今回はどうやって切り抜ける?コピーしてどう組み合わせる?毎回ドキドキしっぱなしでしたね。後からわかることだけれど、「コピー」という力も、檀ヒビキという存在を考えたらいかにもって感じですよね。相手の能力を相手に触れることでコピーでき、2mの範囲内にいれば力は発動できるというすぐれもの。その組み合わせ・切り替えもかなり自在で、まさに複数の能力を持っていると言っても過言ではありません。記憶がないはずなのに、追い込まれたときに思考フル回転で仲間を助けようとする…それはクローンとしてのさだめかと思うとかなり悲しい。出会った何かに対して湧き出る感情が、自分自身から生まれるものではなくて、遺伝子から生まれてるような…いや、遺伝子から生まれるもんなんだけどさ。自分であって自分でないような、そんなせつなさもありました。

そうであったとしても、伏だって、檀だって、アビスから人を救いたいという気持ちは同じで、由来は決して人の命を軽んじるようなところからは来ていないから…納得いかない気持ちがありつつも、ポジティブにとらえることはできそうです。

檀ヒビキの謎

檀ヒビキという同姓同名の博士がいた、というオチでした。いま、アビスと対峙している檀ヒビキは未来の伏のクローン。名前を檀ヒビキと名付けたのは…まぁ、敢えて、ですよね。俺が解決したんだよみたいなノリともとれるし、博士への当てつけともとれる。最初の時点では明らかに若いほうの檀くんの記憶がない時点でこいつが黒幕…というフラグが立てられていましたが、見事な裏切りでした。単に同姓同名の博士がいたというだけではなくて、そこに2つも3つも要素を絡ませているうまさが光るね。

ここで考えてみると、いまアビスにいる檀ヒビキと伏は同じ遺伝子で、成長したらまったく同じということだね。というかそもそも、檀ヒビキの存在しないパターンで、未来の伏ってこの地獄を生き延びたってこと…?パラレルワールドになっているのかと思いきや、そうでもなさそうだし。アビスの闇に落ちて、時間も飛び越えられるってことは、じゃこれはまさにゲームオーバーを何度も繰り返しているってことになるんでしょうか。

檀ヒビキが当初から、こんな「クソゲーどうやってクリアする?!」という発言をよくしていました。どうやって攻略するか。まさに、これはゲームなんですよね。人間が勝つか、アビスが勝つか。だから何度もゲームであることがやんわりとほのめかされてきた。でもどこかでセーブできるわけじゃないから、幾度となくリセットされて記憶がなくなってきたんだな~。

結局どうすればコンプリート?

未来から来た伏さん、どういうポジションからこの繰り返しを見つめているんですかね…未来のアビスに侵食された日本を救いたいからと、過去を変えようとがんばっているのはわかりますけど…結局、どうすれば全クリなのかが見えてこないですよね。出会う人みんなの命守って地上に這い出たらクリア?というか、地上に出れたらなんでクリア?地上に出れるということは、最大の敵を倒すことであるから?最大の敵がなんであるかがあいまいなまま、彼らは自分の命・仲間の命のために犠牲を払ってさ…いったいなんだったんだろう。終わることのない迷宮に閉じ込められている人間たちの必死さから学ぶべきものって何だったんでしょうね。

確かに、戦いにおけるその頭脳戦は見ものでした。ただ、いくら能力者だからって、生身の人間の回復力が異様に高すぎたり、現実の受け入れ方がスムーズすぎたり…すでに不自然なんですよね。その不自然さから、これは仮想現実なのでは?と思えてきてしまう。そして全貌がわかってきてからも、どうにも不完全燃焼感が残り、締めくくりは後味が悪かったです。何が真実なのか。その先にある未来は何なのか。そこまでを語って終わってほしかったなーと思います。

個人的には、未知の虫みたいな気持ち悪い生物に攫われる女ってどうにも萌えない。気持ち悪いじゃないですか…なので、柊が重要な力を握っていてっていうのもなんか嫌だなーと感じてしまいました。

まさかの記憶ありループの道

ラストはまさかまさかのループで…最初からやり直し。檀ヒビキがもう一度このアビス攻略に挑むところで幕を閉じました。しかし、今までと違うのは、前回の確かな記憶が檀ヒビキの中に存在するということ。これにより、どんな未来を切り開いてみせるのか…

確かに、もう一回同じような場面に遭遇させて軽々とクリアされても今度は全然面白くないですからね。終わってよかったのかもしれません。それでも、その先の未来を見せることなく、人間たちのほしかったものの行く末を見ることなく、終わってしまったことは残念で仕方ないところです。

全体として、友情とか愛とかそういうのはほとんど感じられないですね。どちらかといえば、サバイバルを生き残るための共闘・そして完全クリアを目指す道に現れる数々の障壁をいかに打ち砕いてみせるのかというところに軸を置いていたように思います。それはそれでいいのですが、やっぱりループさせることないじゃん…って思っちゃうよね。このシリーズをラストにすべてを解決してくれたらよかったのにな~…クローンという存在である檀ヒビキが生きていくこれからの世界が見てみたかったです。

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