まんが道こそ夢にまっすぐ向かえない現代の青少年のためのバイブル - まんが道の感想

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まんが道

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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演出
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まんが道こそ夢にまっすぐ向かえない現代の青少年のためのバイブル

4.04.0
画力
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ストーリー
5.0
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
5.0

目次

まんが道ー満賀の苦悩

このマンガは、藤子不二雄両者の、自伝的要素を含む漫画である。しかしただの漫画が好きな青年が、漫画家を目指すだけの内容になっているわけではない。その中には二人であるがゆえに起きえる紆余曲折な出来事などもあり、普通のサラリーマンではないような苦悩を乗り越え、こんにちの藤子不二雄を勝ち取るまでの、夢に向かってすさまじい努力をしてきた二人の青春物語になっている。
「あきらめず、夢に向かって突き進む」ということが、具体的に一体どういうことなのか、どういう心境なのか、ということがよくわからない若者にとっては、一読すべき内容になっている。
主人公は藤子不二雄Aがモデルとなった、満賀道雄、という少年である。この少年は小さいころから運動もできず、クラスでもあまり目立たない、いわゆる現代でいうところの「スクールカースト」の最下層に位置する少年だった。しかしその少年が唯一夢中になれることが「マンガを描くこと」だった。その好きなマンガを描くことで、共通の趣味を持つ才野茂と意気投合し、二人でなんとか学校生活を乗り切ることとなる。しかし、学校の中では勉強もよくできるほうではなく、常にクラスのガキ大将的存在のクラスメートにおびえながら日々過ごさなくてはならない、あまり楽しい学校生活というわけではなかった。

満賀の苦悩ー才能

にも、何度もめげそうになる。時には自分の能力の無さを、自分自身でかくして、その事実に気が付いて自己嫌悪になることもある。そういった思春期にありがちな、一番の友人にもかかわらず、その一番の友人に対する嫉妬や妬み、などを、忠実に再現して描かれている。「マンガを描く」という題材がありながらも、この「まんが道」の話の中心は、主人公である満賀のこういった内面の弱さ、脆さにあり、まるでその弱い心を読者にも問いかけるような真実味を帯びた形で物語がすすんでいく、といったところが、この作品の最も面白いところだと思う。

満賀の苦悩ー進路

満賀と才野は、そのうち高校生になり、進路問題にぶち当たることになる。マンガ家にはなりたいが、その職業も当時はよくわからないもの。そのため才野も満賀も最初は就職することとなる。満賀は運よく、富山の高岡新聞という新聞社に親戚がいて、そのコネで新聞社に入社することになる。新聞社ではその才能をいかんなく発揮して、紙面のイラストなどを担当してしっかりと勤めをこなしていく。
ところが一方の才野は、入社1日目で会社を辞めてしまう。本当にサラリーマンというのが向いていないと分かったため、その嫌なサラリーマンを我慢して勤める時間があったら、その分マンガを描きたい、という純粋な気持ちによるものだった。ここでも満賀と才野はお互いの進むべき道が異なる進路について微妙な空気を作ってしまうことになる。満賀からすれば自分は新聞社に勤める立派な会社員になった。才野は会社にも働きにいかない状態が続く。しかしそれが本当にしたことだったのかどうか。自分に問いかける。
現代でも「本当に今のその仕事は自分がしたかった仕事なのか」と、自問自答する人は少なくないだろう。自分の進路については特に深刻な問題になる。その現代でも、だれもがぶつかる深刻な問題について、半世紀ほど前の日本を舞台に、きれいにその心理状態を描写している。
対照的な進路をとったこの二人の行動は、まんが道の作品において大きなアクセントとなっている。
しかも満賀にとっては、その新聞社内での出来事は必ずしも順風満帆とはいいがたいことも数多くあった。ラテ欄と呼ばれる、ラジオ・テレビの番組のページを間違えて作成し、新聞社中自分のミスで抗議の電話の嵐にしたこともあった。当時は給仕と呼ばれる、会社内での使いっぱしりのような青年に、嫌がらせを幾度となくされ、我慢の日々を過ごさざるを得ない、など、社会人としての厳しさも同時にこの新聞社のエピソードで描いており、当時学生だった私はこの物語で「仕事とはいったいどういうものか」というものをまざまざと見せつけられた気分となった。

スタートライン

その後、新聞社を辞めてマンガの道を決めた満賀は、才野と一緒にいよいよまんが道を歩き出す。後戻りができないよう、またマンガという特性上、出版社の多い東京に出てきてのことになる。ほとんど最寄りがない二人だったが、その努力によって得たマンガを描く能力によって、だんだんと仕事が舞い込むようになり、各雑誌社からの仕事の引き合いが増えてくる。
しかしそこでも仕事のペースが把握できず、能力以上の仕事量を増やしてしまい、結果的にはいろんな雑誌社に原稿のあなをあけてしまう。
ここでも才能があっても、才能だけでは順風満帆にはいかないさまが如実に描かれている。
マンガ家になったからといって、そこがゴールではない。それはあくまでスタート地点であって、これからが本当の勝負になる。つまり、我々には仕事をするようになって、そこからが勝負だ、ということを我々に教えてくれているような、最後の終わり方になる。
このマンガは、現代でも夢や希望がなかなか持てずにいる若者、または夢があっても漠然としてどうすればよいかわからない現代の若者たちにとって、大きなヒントが随所にちりばめられている作品になっている。

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