男友達を好きになるってきっとこんな感じ
関西弁でノリツッコミ
今まで読んでた漫画だと、たいてい、標準語主体地域のところに転校生として大阪弁・九州弁あたりの訛りの人が横恋慕で入ってくるという少女漫画を多く読んでいた気がします。そのためオール関西弁で進んでいく漫画はちょっと楽しい感じがしました。とにかく、ノリツッコミが良すぎて(笑)。私服OKの学校、大阪弁で進むトーク、常に繰り広げられる小泉リサと大谷敦士の漫才級のからみ、学校の先生の緩い感じ…環境の設定が楽しいですよね。主人公は170cmと長身のリサで、ヒーローは156cmしかない大谷。最初はのっぽのリサが全然モテなくて、チビでもバスケがうまかったり面白いキャラの大谷は割とモテていて。お互いの好きな人と進展するようにタッグを組むという始まりでした。この時点であーリサと大谷がくっつくのね…ってわかっちゃったので、これからつまんないかなーって残念な気持ちになったんですけど、お互いが恋愛対象としてお互いを見るまでの経過が意外にも楽しくて。はまっちゃったんですよね。周囲の人からすればベストコンビで、付き合ってないほうが不思議と思われていた二人。ケンカばっかりしてたけど、内容は大したことないものばかりでデカい・チビだと言い合いをする程度の事。かわいいもんだよね。恋愛としての好きってどんな気持ちだろう…?と手探りであーでもない、こーでもないとがんばっている。あんたの事なんか好きじゃない。好きになんかなるもんかって意地張ってる二人が、ガキっぽいけどかわいいです。個人的に一番ヒットだったのは、
す、す、す…鈴木です
ですね。好きだと言えずに鈴木だと言う、そのヘタレ具合と巧さに吹き出しちゃいましたよ。
協力してると相手の事が見えてくる
リサは鈴木くんと付き合ってみたいと思っていて、大谷はリサの友達である田中千春ちゃんと付き合ってみたいと考えている。そこで犬猿の仲だったはずの凸凹コンビが手を組み、お互いの恋を成就させるための行動を開始します。でも相手の意中の人を知ろうとすればするほど、同時にリサや大谷自身のことも見えてくるわけで。こういうところがいいところ、君にとってきっと素敵な人になる。そうやってアピールして宣伝して、誰よりうまくいってもらいたいと願いながら、千春ちゃんと鈴木くんは両想いであることがわかってしまう。どちらも友達だと思うからこそ、やっぱり両想いの人同士、幸せになってもらいたいってことで、千春ちゃんと鈴木くんを後押しするリサと大谷。なんだったんだろうね、お互いの努力は…。でもそれは、リサと大谷の間に大きな友情・信頼関係をつくることになりました。
そこをきっかけに、リサは大谷を気遣うこともするようになったし、大谷のいいところにたくさん気づきました。案外と自分と大谷の友達以上恋人未満(?)関係を楽しんでいる自分がいると知り、絶対好きなんかじゃない!って自分に無理に言い聞かせているような。そんな複雑な気持ちを丁寧に描いています。友情の好きと、愛情の好きの違いを考えてみると、けっこう難しいよね。相手を大切にしたいと思うのは同じだけど、独占したい気持ちやもっと精神的にも肉体的にも近づきたいと思う気持ちを持つようになったら、それは恋愛の好きの感覚だと言ってもよいかもしれません。
付き合うまで結構長い
私は大谷のことなんか好きじゃない。どっちが彼氏・彼女を最初につくるか、勝負だ!!
ということで、せっかく鈴木くんと千春ちゃんの一件がめでたく終了したと言うのに、まだまだリサと大谷はくっつきません。
リサと大谷、二人の悩みって、案外と共感できるんですよね。リサからしてみれば、今までさんざんチビだ嫌いだと言ってきた相手。だけど確かに支えてもらって、趣味もノリもドンピシャ。相性占いも100%。日ごろの小さな喜びの積み重ねが、どんどん好きの気持ちを大きくさせていく。身長差を気にしないほどにね。
一方の大谷の気持ちも、結構リアルじゃないですかね。今まで最高の友達だと思って接するようにしていたのに、いきなり告白されてもよくわからない。彼女として一緒にいるのは今のところ考えられない。そう言ってフッてしまった大谷。だけどいざちょっと離れたところに立ってみると、意外にもリサはモデル体型で隠れファンがいる。確かに潔く優しいところがある奴だし、わかりやすい性格もよく考えてみたらかわいいかもしれない…でも俺はチビで、相手はのっぽ。身長差だけはカバーできない問題…男としてのメンツが許さないところもある。迷っているうちに、誰かにかっさらわれるかも…大谷も優しいからね、いろんなことを考えちゃうんだなーって思ったし、リサと大谷のキャラだと、友達としても最高だから、そういう相手を恋愛対象としてみることの戸惑いもわかります。すべてを共有できるのが恋人ってわけでもないというか。
付き合ってからのほうが不安になる
リサの決死の告白は、一度は断られることになったけど、結局お付き合いをスタートできることになりました。そして、付き合うまではどうにかしてこの気持ちを伝えたい…!っていうことだけだったのに、付き合い始めれば嫉妬とか、相手の時間を考えること、友達と恋人の比重を変えることなどなど…いろいろ考えなきゃいけないことが出てくる。片想いのうちが楽しいよね、恋愛なんてさ。いざ成就したと思ったら、むしろそこからの二人の価値観のすり合わせ・時間共有のすり合わせのほうが大変だったりするもん。今まではどうでもよかったことも、恋人というポジションに立つと見え方が一変する。人間関係って本当に難しいなーと思います。
そして、付き合ってみて初めて、すでに恋人がいた人たちの悩みが理解できるようになり、自分が成長したようにも感じたりする。ちょっと大人になれた気もする。そう考えてみると、人との出会いほど、人を成長させるものってないかもって思えてきますね。ふとどこかの金持ちたちの話を思い出したんですが、彼らの話では、とにかくたくさんの異性とお付き合いして、たくさんのことを教えてもらうべきだ、みたいに説いていましたね。それは不埒なことをやれってことではなくて、人を知るには恋愛が一番手っ取り早く、同じ人間は一人としていないなら、たくさんの人に出会うべきだっていうのは正しいじゃないですか。こんな少女漫画読んでてリンクするのも不思議でしたが、好きだ嫌いだを繰り返しながら、いろいろな人たちと出会いながら、ちょっとずつ成長していくリサと大谷を見ていたら、思い出しちゃったんですよね。
コンプレックスなんて誰でも持ってる
根本ひっくり返すような話ですけど、女にしては身長が大きすぎる、男にしては身長が小さすぎる、そんなコンプレックスなんて大したことないです。大きかろうが小さかろうが、その人間自体を見てくれて、好きになってくれる人はたくさんいるじゃないですか。リサと大谷は、タイトルの通り、ラブリーなコンプレックスを持ち、そのおかげで付き合うことができたカップルであると言えますね。
確かに、人からの評価・比較される環境の中で人は育ち、大きくなっていく側面があるので、これくらいが普通、これくらいは過大ってレベル分けされているほうがわかりやすい。だけど個性すらも欠点かのように見せられて、それが原因でモテないのか、頭悪いとか、決めつけられるほうが害だよね。なんでもそうだけど、可能性を狭めるのはいつの時代も人自身で、社会の通例そのものだと思うな~…。
何はともあれ、男友達だった相手を好きになり、心を少しずつ通わせながら、恋人になれたリサ。これからもいろんなことがあるだろうけれど、いつまでも相変わらずのコンビでいてほしいなーと願うばかりでした。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)