忍び視点の戦国漫画
絵柄の可愛らしさに騙されるところだった
表紙をパッと見た時点で予想した内容は、『ドジっ子な少女忍者が周囲に迷惑をかけまくるドタバタ時代劇四コマ』。
例を挙げるなら『ニニンがシノブ伝』的な、可愛くてちょっとマニアックなギャグマンガかなと。
萌え要素どころじゃないシビアな忍びの世界
いや、千鳥ちゃんは可愛いんですよ。褒美をやろうと言われて、頭を撫でてほしいとかもうほんと可愛い。無欲可愛い。10歳の頃からほとんど変わってないだけで、立派な成人女性なんですけどね!
そんなほのぼのしたエピソードもありつつなギャグ漫画のはずなのにどこかシビアさが漂う世界観、必要以上に盛り込まれた史実、さりげなく挟まれる乱世あるあるにニヤニヤしてしまうこの感じ、どこかで……?
わかった!『落第忍者 乱太郎(尼子騒兵衛 著)』だ!
ちなみに『忍たま乱太郎』はN○Kの子供向けアニメなのでお間違いなきよう。ここで取り上げるのは、あくまで漫画版のほうで。
『落第忍者乱太郎』のメインキャラクターの一人『摂津のきり丸』は、戦で両親を亡くし孤児になったところを忍術学園の教師・土井半助に拾われて忍術学園に入り、忍者のたまご(忍たま)としてプロの忍者を目指す。千鳥もきり丸と同じく戦で孤児となり、忍びの師匠に拾われて成長する。
きり丸の成長後はまだ描かれていないので不明ながら、戦災孤児が拾われて忍びになるという基本設定には近いものがあるかなと。まあ千鳥のほうがずっと優秀ではあるんですが。
安土と室町、時代は違えど忍びの仕事は同じで、一番大切なのは『生きて帰ること』。忍術学園でも生徒たちにそう教えています。
バトル漫画の影響か、かっこよく活躍して敵を倒すのが主な仕事みたいに思われてますが違うんですよ。忍びの仕事って、情報収集とか潜入捜査とか地味なもののほうが多いんですよ。服部半蔵とか風魔小太郎とか、一族で名を継ぐような有名な忍びとは逆に、優秀だからこそどこにも記録が残っていない忍びもきっといるんだろうな。まさに『忍び』の名のごとく、誰にも知られず人目を忍んで影から影へ。でも彼らにもちゃんと普通の生活や夢があって、懸命に生きている。
『信長の忍び』も『落第忍者乱太郎』も戦国時代をそんな忍びたちからの視点で描いた作品なので、歴史の勉強にもなるし、いっそ小・中学校で指定図書として取り上げられればいいのにと思ってしまう、伊賀の影丸とカムイ伝で育った筆者なのでした。
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