もっと知ってほしい
脇役だからといって脇役ではない、みんなが主役
メインキャラクターの社会人としての苦難や挫折、少年から社会人へのステップアップする成長、そして恋にと奔走する物語。主役の正太君は勿論、登場するキャラクター達ひとり一人のバックボーンに設定の細かさが緻密に作られていて、一見チョイ役キャラもドラマチックなエピソードの主役にするなど少しも飽きない魅力的な作品です。時折、作品の編集担当者も物語に登場させるなどしますが、読者をおいてけぼりにするわけではなく、思わず自然と受け入れてしまうフェードインも注目すべき点です。読者に対して「誰もが主役になれる」希望を与えてくれる、というメッセージがるというのはファンの解釈としては行き過ぎでしょうか。
一コマたりとも見逃せない構成
それぞれのエピソードがただシリアスに展開されていくのではなく、ところどころに緩急をつけるように、たくさんの笑いも散りばめられています。それどころかそれらの笑いが、実は結末への大事なフリや伏線となっていたりと、全てのコマに意味のある構成です。だからといって複雑な流れではなく、展開を無理なく追い易いコマ、カット割りは読む者の集中力を途切るような野暮な事は決してしません。どんな時代にあっても色褪せる事のない、誰もが憧れるような「青春」を紡ぎ出すストーリーです。それぞれのエピソードで「あのフリ」「あのネタ」がこんなに感動的なラストに繋がっていたとは、と嬉しい裏切りが心地よく、何度も読みたくなる作品です。
シリアスなシーンはスタイリッシュに、ギャグはふざけて
作者の画力の高さも大きな魅力です。丁寧な描写、テクニック、コマ割りなど、随所に作者の細やかな作業が、更に読者を物語の世界にグイグイと引き込んでいきます。町並みなどの場面を非常に細かく描いても決して窮屈な印象は与えないし、シンプルにキャラクターだけのシーンではより世界観を強調してくれます。白黒で描かれていながらも、スクリーントーンや影の描写、描く線を上手く使い分けて、まるで色まで目に浮かぶような完成度です。またコミックのカバーを外すと、その巻に絡めた笑える四コマ漫画が隠されており、物語だけでなく製本、製作に至るまで作者の遊び心が隠されています。シリアスなタッチ、笑いにギャグ調のふざけた描き方は作者の力量と懐の深さを見せてくれます。クセのない絵は誰もが物語に入り込み易い、大きな魅力のひとつです。
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