出来損ないがサッカーの頂へ駆け上がりきってない - フィールドの花子さんの感想

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フィールドの花子さん

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画力
4.00
ストーリー
3.25
キャラクター
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演出
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出来損ないがサッカーの頂へ駆け上がりきってない

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画力
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ストーリー
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キャラクター
3.0
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3.0
演出
3.0

目次

デクの努力の具合は…よくわからず

一般的に言って、弱小チームやめっちゃ下手くそがのし上がっていくスポーツマンガの場合、必ず要となる奴がいるか地獄の練習を地道に生き抜いたかのどちらかになりますよね。それがこの「フィールドの花子さん」では主人公デクの下手くそ野郎がすでに体が出来上がっているというオチなのです。デクがへたくそだったのは、せっかく日ごろのトレーニングと祖母からのお使いをこなして鍛えた体をうまく使えていないだけだったことが判明。花っちが憑依してくれなかったら絶対にわからなかったこの事実。デク、よかったね…!がんばってたら幸運は目の前に落ちてくるんだね。

実際のところ、こうやって体の使い方を知らずに選手として注目を浴びることなく終わっていく人っているのでしょうか…練習している中で、こいつは使える!ってなればコーチや監督からお声がかかるはずなので、やはり何かしら強みを持っている選手でないと生き残れません。ちょっと疑問なのは、誰の目にも止まらないくらいセンスがない奴が、実はその秘めた筋肉を使いこなせていないだけとかある?っていうだいぶ根本的なことですね。体できてたら、ドリブルやらパスやら小さな練習でも片鱗は出るものなのに、ちょっとおかしいんだよね。そして、果たしてそれほどまでのギアを持った筋肉が、練習量×3倍のくりかえしと山道を駆け上がることによって身についていった過程のほうが気になるんですけど…もう少し多めに解説ほしかったなーと思います。

花っちの想いは謎のまま

交通事故で意識不明の重体になり、幽体離脱をするにいたった花っち。なでしこジャパンに選ばれるほどの実力を持った女子高生。そんなお年頃の女子の気持ちの描写がほとんどないです。無表情で感情のわからない花っちでも、サッカーが大好きなんだということだけは確実に伝わってきます。しかしそれ以外はいったい何だろう…細かな感情描写は少なく、デクの下剋上と新たなチームとしての始動がメインになっているので、花っちは徐々にすっかり脇役へと変貌してしまいます。

物語が進むにつれ、デク自体が覚醒をしていきますが、花っちはそれにより、生きる勇気をもらったのか、サッカーがしたいという強い願いをデクを通して解決することで、動けない自分の体に戻るための勇気をもらったのか。いずれにしろ、幽霊としてではなく、自分の体と向き合う決心がついたのだろうということは推測できます。

それにしても、デクとの出会いのシーンがあまりに衝撃的。だって脈絡まったくなしなんですもん。いきなり幽体離脱している状態で出会います。葛藤みたいなものは描かれず、ただただボールが触りたいということだけが前面に出ているので、これはどうまとまっていくんだ?(汗)と、読み始めたのが失敗だったかしらとも一瞬思いましたね。そんな中でも、ただデクの体を使って花っちが活躍しまくるのではなく、花っちがお手本となりデクを成長させようと無理くりレベル違いの環境で勝負させようとするあたりは、とても現実的でいい表現だなと思います。花っちなりのやさしさも詰まった行動ですね。

まさかの始まりで一軍入れ替えはミラクル

まさか第1巻で一軍入れ替え戦が勃発しようとは思いもしませんでした。デクの夢的に、1軍に入るのは割と後半のほうになるだろうと考えていたので、すぐに入れ替えチャンスの試合が始まるなんて…この展開の速さは1巻で終わってしまうのだろうか…?という不安さえよぎりました。入れ替え戦のためにキャプテンに11で勝利してしまうって…まだ花っちのこともデクのことも全然わかってないじゃない。そんな状態で大事な一軍昇格試験始まっちゃって大丈夫?早すぎるよ!

しかし、チームの一軍に上がることはもはや通過点に過ぎず、あくまでもチーム一丸となって他校に打ち勝つということ、そのためにデクが実戦の中で学んでいくということが中心に置かれ、頑張っている姿は清々しかったですね。青春ね~って思える、運動部の爽やかさみたいなものがありました。そこは見ていて楽しいです。余計なことは描かれてなくて、スポーツマンガということでキャラが立っている面々が物語を作っています。幽霊が憑いてるデクと、特徴的な風貌のレギュラーメンバー、落ちぶれメンバー。みんながチームとして目指す勝利。強くなるために、デクは花っちからどんどん技と知恵を吸収していく。自分の体に残る、花っちが動かしてくれた体の使い方を、それこそ体で吸収して記憶をしていく。デクの本当の能力は、その素直さとひたむきさ、いざという時に逃げずにいられる強さにあると言えるし、キャプテンに向いているかもしれないなーと考えられますね。

少女漫画にも似た三角関係

1巻で、花っちの入院している病院に行くって、けっこう…暗いですよね。そのシーンだけは何ともいたたまれない気持ちになりました。だけど、デクの反応が子どもっぽ過ぎて、残念。幽体離脱してサッカーのそばにこれたから笑ったとかないでしょ。いや、花っちの場合はあり得るけど、そこはもう少しロマンチストな反応があるでしょう。宗ちゃん見習ってください。虎鉄へのこの言葉。

でも花子も一緒ならお前をもっと飛ばせんだけどな

花子という信頼できる仲間が戻ってこれない。せつなげな雰囲気もまた素敵。

だけどデクという花子の代わりになりそうな奴ができた。いや、実際そのデクは花子なんだけど…もはや花子の取り合いだよね?ちょっと三角関係始まってるよね?そして物語がどんどん展開してデク自身がどんどん開花していって、花子のものでもない、デクの体でデクの意識でしかできないことを成し遂げていくことで、宗ちゃんはデクとナイスコンビになっていく…今度は花っちが嬉しいような悲しいような気持ちに…なってるんじゃないかなっていうことを考えてしまいます。女の子がからむとつい少女漫画要素で分析してしまうのです。

まだまだ続いていけたでしょう

せっかくひと段落して、楽しくなってきたところで、5巻で終わりって言うのはちょっと寂しいです。デクと花子の新しい関係性だったり、阿澄とだってもっとコンビネーション出していけると思うんです。もっといろいろ紆余曲折を経てサッカーの世界を駆けあがっていくところを見たかったのに、あっさりと終わって花子は元の場所へ戻っていってしまいました。登場人物一人一人の過去やこれからだっていくらでも幽体離脱ネタと絡めて出していけたと思うので、物足りなさが残ります。比較的イラストも綺麗だし、サッカーの分析もそこそこおもしろく書いていたので、続きがないことは残念ですね。

確かに、王道のサッカー漫画と比較したら、苦労感がだいぶ違います。花っちと出会う前のデクのでくの坊具合もさらっと流しているし、花っちの努力や苦悩もさらっとワンカットくらいなものです。今があるのは過去のおかげで、そしてこれから未来を作っていくうえでどんな成長をしていかなければならないのか。それにはどんなことが必要か。実戦の中だけで方法を覚えるだけじゃなく、気づいていない間にすでに身についていたみたいなミラクルでもなく、もっと考えながら出会っていく能力もあってほしかったなと思いますね。個人一人の能力で勝つのではなく、チームで1つずつ勝利を重ねていくということを、花っちともっとゆっくり進んで学んでいってくれてよかったのにな。まだまだ続けられるネタはありました。

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どうせならてっぺんまで行ってくれりゃーいいのに

本当にがんばったのかがわからないつまるところ、デクは基礎がしっかりしていて応用の効かない、実にもったいない状態であった、ということだ。あとはそれをどう使うか、というスキルの部分で劣っていたために、いつまで経ってもサッカーがうまくならなかった。そこを変えてくれたのが幽体離脱してきた花っち。彼女がデクに憑依してくれなかったら、デクは一生デクのまま、うまくなれずにただ落ちぶれていくだけだったことだろう。ただ、デクが持っていたその体、手に入れるまで本当に大変だったと思う。その過程があまり細かく描かれていないから、使えない木偶だったデクの血のにじむような努力を見せてもらいたかった。また、少し文句を言ってみる。普段習慣としてやっていたことが、いつの間にか体の土台をつくることにつながっていたなんて、そんな無目的に鍛えても自然とそうなってるなんてこと、本当に体を鍛えている人たちに失礼だ。花っちのおかげ...この感想を読む

3.53.5
  • kiokutokiokuto
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