ストーリーが秀逸なSFラブコメ
イラストが素敵すぎる
まず、この表紙イラストに興味を持って読み始めたわけですが、とにかくギャップ萌えです。かわいらしいイラストにも関わらず、戦闘シーンは割と生々しく、かわいい女の子が血を流しまくります。一方で背景なども細かく、ジ〇リかよっていうくらいの細かさでうっとり。しかしそれがまた事を深刻すぎず描いてくれているという気もしてグロさが抑えられていますね。地球を侵略するまでの暇つぶしが今である。そう言いながら、どんどん心を通わせていく広瀬くんと大鳥先輩。ラブコメとは言っていますが、それよりももっと単純で、お互いがお互いを必要とする、それこそ分身のような存在の絆が築かれていくまでが丁寧に描かれていると思います。
普段はかわいい日常が描かれていますが、戦闘にいたっては本当にシリアスな展開です。日常では見られなかった物憂げな表情、ふるまい。アイラちゃんでも見えない心の闇。そしてどんどん成長していくにしたがって変わっていく、登場人物たちの表情。どれも魅力的で、タッチも変わっていっています。これからどんな成長が待っているのか、気になるところです。
オルベリアの戦闘民族っていう名前もいいですよね。どこかの国みたいな雰囲気もありつつ、地球ではない星からやってきたという設定。かわいいのに戦闘民族っていうのが魅力的です。魔法も使えるけど、戦闘においては本当に生身の体でこぶしのぶつけ合いですから、アクション系が好きな人にもウケそうだし、男女問わず読みやすくて楽しめるなと思います。リコとかまじで…かわいすぎでしょう。
地球を侵略するというスケールが徐々に大きく
最初の時点では、あまり深刻な地球侵略って感じはないんですけど、どんどんそれがリアルになっていきますね。大鳥さんは地球を侵略するためにやってきた宇宙人。でも、地球人である広瀬くんやその他の人たちとのかかわりの中で、どんどん自分と向き合って変わっていく。読み進めていくと、地球を侵略しようとやってくる他の惑星の者どもは、成長のために必要な試練・課題のような感じがして、1つ乗り越えるたび、関係性が深まり、自分自身が深まり、進んでいっているような気がしてなりません。10巻もすぎるとさすがにスケールはでかくなって、心臓でつながる広瀬くんと大鳥さんの能力・そしてそれを我が物にせんとする宇宙人たちの策略がどんどん明るみになってきていますが、結局は、1つの大事なつながりが絶たれずにあり続けるために、そしてただ楽しい今があり続けるよりもつながり続けながら変わっていくことが当たり前であると受け止めること、その気持ちの揺らぎみたいなものが丁寧に1巻ずつ進んでいっていると思います。見ているだけだった広瀬くんが、どんどん力を付けて大鳥さんの役に立ちたいと思うこと。そして大鳥さんも、地球を侵略するという目的から、守るという目的になり、広瀬くんを暇つぶしの存在からかけがえのない存在へと認識を変えていくこと。果たして地球を脅かす宇宙人との闘いの中でこれらがどう落とし前つけてくれるのか、大変気になる!
根本はそれぞれの絆の価値を見出すこと
大鳥さんと広瀬くんは、心臓を分け合ったまさに一心同体のような関係性。でもはじめはお互いがお互いのことをただ心臓が同じということ以外には関係のないものであると考えていたように思います。お互いがすごく大人っぽい考えを持っているのですが、でも実はとても幼稚で、稚拙な考え方もしている。何がしたいのか、どうしたいのか、わからないけれど存在している。その悩みから解放されたくて、逃げたくなくて、ぶつかっていくその心意気。それは才能みたいなものなんだろうなと思うんです。今までの育った環境・経験すべてが今の大鳥さんと広瀬くんの思考を作っている。そしてこれからは、お互いを合わせ鏡みたいにして、大きくなっていく。やっぱり人は一人では何もできないんだなと考えさせられちゃいますね。
そして、広瀬くんと家族、広瀬双子同士の関係性もまた気になります。凪の想いはまだ深いところでは語られきれてないのですが、弟を本当に大切に想っていて、守ろうとしている。家族はお互いを当たり前のように守ろうとしている。地球人のいいところは、自己犠牲でも自分の大切にしているものを守ろうと努力できるところなのか?っていう問いも隠れてるかなと思います。たいてい、守る=愛=美しいものという感じで美化されることが多いと思います。あらゆる局面で。ただ、宇宙人には果たしてそれが通じるの?っていうところから、宇宙人である大鳥さんが、それを理解し自分の中に落とし込んでいく…地球を第2の故郷として生きていこうとするまでの苦悩や希望、そういうことを全体として描いていくのかなーって思っています。
地球って…どんな星だろう?
ちょっと深く考えてみますが。地球って甘いのでしょうか。それとも厳しい世界なのでしょうか。弱肉強食、生まれたら必ず死のある世界。宇宙ですら、星がいつか消えるのなら、消えることは当たり前。そしてまた生まれるのも当たり前。自我があるから、考える力があるから、それが地球の人間にとっての財産なのか、それとも弊害なのか…ただやっぱり命には感謝したいですよねって結論になります。どこからつながっているのかはわからないけれど、何万年と脈々と受け継がれてきて、今の私が生まれた。そしてあらゆる知識と経験を受け継いで、それを次の世代に渡していく立場にある。それだけで立派に生まれた意味ってやつがあるかもしれないとかね。無意味な命は決してない。繋いでいくことさえできればいいんだって思うと、けっこう生きるのが楽になる気もします。いい大学、いい仕事、お金、仲間、恋人…なんでもいいけど、とりあえず人を殺すことだけは、絶対にやっちゃいけない気がします。
たとえ宇宙人でも、同じ終わりある宇宙に生まれた者同士なら、気持ちが分かり合えるものなのかもしれないですね。大きな枠で言う、民族の違いだととらえればいいのかもしれません。そうすると、お互いを理解しようとすれば理解できるようになってもおかしくないと思いたいです。
だいたいのマンガって、地球人が弱くて、何もできなくて、でも何もできないからこそ仲間を作ってお互いを助け合って生きていくみたいに描き、それが美しいように描かれるんですが、いるかもわからない宇宙人に対しては、野蛮で思考能力が低いorめちゃめちゃに文明の力がすごくて思考力高くて理解しえないとか、そういう風に極端に描かれますよね。まさに未知の者をどう見るか、恐怖、好奇心、その他いろいろな露骨な感情を表現するのに、宇宙人ってうってつけになっちゃうんだなと思います。
これからどういう展開になっていくのか
まだまだ謎は残されたままの物語ですが、少しずつ前には進んでいます。過去と向き合い、心を失っても、支えてくれる人がいるから生きていける。大鳥さんと広瀬くんのつながりも強固になり、強い敵とも戦えるようになりました。さて、10巻までやってきてだいぶ宇宙人たちとの戦いが熾烈なものになってきているのですが、この終わりの見えない戦いにどう終止符が打たれるのかを考えてみましょう。おそらくは、広瀬くんという存在を軸として変わってきている、大鳥さん、凪、家族、その他かかわりのある人みんなが、今度は広瀬くんを救うような展開になっていくんじゃないでしょうか。なんだかんだいって、一番清く正しく描かれているのが彼だと思うし、心が全然折れない。その強さが折れそうになるときがきっと来ると思うんですよね。それをどうみんなが支えていくのかっていうのがラストかなーって気がしています。勝手な予想です。まだまだ続きそうなので、些細な日常も戦闘も、すべて注目です。
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