拝啓、父上様は壮大な人生ドラマ
ナオミを主体とした一平との間柄について
倉本聰さんが書いてるだけあってさすがだなと思いました。物語の展開もひとつひとつしっかりしてるのに大きな軸がひとつあって主人公は常にそれにかられている。のちにナオミとの出会いが色恋沙汰とは別の展開でも繋がってくるところがぞわっとしました。女性意見になるかもしれませんが、父に合わせた途端連絡がなくなるのは心にブラックホールができるくらい不安で急に突き放されたような感じがして男性が何を考えどういう思いでその言動を取ったのか不思議でしかたなくて、もどかしくて、さぞかしナオミはなんとも言えない気持ちだっただろうなと。それが主人公がいろいろ抱えている目線でお話が進んで行くのが新鮮でした。
神楽坂を忘れない音選曲
音楽がすごくいいなと一番最初に思いました。いかにも倉本聰さんっぽくって、途中から物語のピークを迎えた時にエンディング曲を変えたのも素晴らしいなと。しっかりと物語の内容に沿って曲の雰囲気を変えていて、なお歌手は変えないというひとつひとつの音楽に対する姿勢に感銘を受けました。作品中に使われている音楽も一度も「神楽坂」以外を感じさせないピアノ調が多く、慌ただしい井戸端会議も艶やかな石畳のシーンも猫のシーンも全てに神楽坂を感じる音楽でした。
人間の日常の根本を時間をかけながら考えた
結局世の中にはいろんな人がいて、エリのように親の仕事を受け継ぐのか一度しかない青春を選ぶのか、竜次さんのように色んな人の信頼があってもこの神楽坂がなくなるならと包丁を手放すのか、ゆきのちゃんの様に一度背負ってしまったものは例え本当の息子にでも口を割らないとか、ナオミさんとのこと、父親のこと、神楽坂がなくなること、保さん二世になりかける一平とか、現実世界でも誰もがみんな受けているだろう交流や自分との葛藤、悩みだったり不安だったりを社会問題や現代的問題も交えながらも違和感なく視聴でき且つ考えさせられるドラマでした。みんなそれぞれの思いがあってうまくいかないから、毎日の仕事の中で何かを抱えたりしているんだというのを初めてしっかり考えさせられました。
倉本聰だから実現したキャスト!?
キャスト選出も良かったと思います。下町ドラマの主人公にジャニーズの二宮和也。過去に何度か倉本聰先生のドラマには出演していますが、見事に一平になっており、もはや二宮和也ではないなと感じるほどでした。ジャニーズでもトップレベルの演技力を持つ彼の選出はこれまた感銘を受けました。また女将さん役の八千草薫さんは年をとられてもお美しく、今もどこかで「坂下の女将」としているような気がして、そのような名残が残るほどの名女優だと思いました。「女将さんが壊れる」時の演技は本当に八千草さんがおかしくなってしまったのではと心配になるくらいの名演技で「女将さん」の心情がひしひしと伝わってきました。倉本聰先生だから実現したキャストだったのかもしれないと思うと本当に尊敬の一言です。
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