茶道と転生モノ漫画だか…… - 私は利休の感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,136件

私は利休

1.001.00
画力
1.00
ストーリー
1.00
キャラクター
1.00
設定
1.00
演出
1.00
感想数
1
読んだ人
1

茶道と転生モノ漫画だか……

1.01.0
画力
1.0
ストーリー
1.0
キャラクター
1.0
設定
1.0
演出
1.0

目次

今世紀最大の駄作を読んだ

のっけからとんでもない酷評になってしまった。

いやしかし、これぐらいの批判は許してほしい。それほど『私は利休』は良いところなしの駄作だったのである。

ちなみに“駄作”というのは必ずしも悪口ではなく、「ここまで良いところも落としどころも意味もない漫画を読むのは初めてかもしれない……こいつはひでぇ……」と『北斗の拳』の雑魚が息を呑むかのような、どうしようもないことに直面したときの最大限困惑している状況の筆者の比喩表現なので、誤解なきようお願いしたい。

『私は利休』のひどさといったらもう考察のしようがないほどダメで、以降はそのダメな部分を逐一拾っていこうと思う。もし『私は利休』のファンがいたら、これ以上読まないほうがいいかもしれない。むしろ筆者は、ファンからの擁護を色々と聞きたいほどなのだが……。

ダメな理由そのいち・絵

まず、絵がダメだ。下手とかそういう次元ではなく、どんなに下手な漫画家でも一つ二つは良いところがあるものなのだが、この漫画の作画は一つも褒めるところがない。

まず、作画が安定しない。そしてコマ割りが下手。漫画的表現が下手。一人の登場人物なのに、途中で誰が誰かわからなくなる、と、惨憺たる有様である。

この漫画力の無さといったら、はっきりいってそこらの同人作家のほうがずっと上手いといってもいいレベルだ。たまに掲載されるジャンプの読み切りと同格である。

特に壊滅的なのは、コマ割りとヒキだ。キャラの顔を、アップにしなくていいところでアップにする。一つのコマに無理やりキャラを入れたり、かと思ったら一緒のコマにまとめていいところを分けたりする。ギャグとシリアスの差すら表現出来ていない。別に漫画家ではないただの漫画好きの筆者がこれだけ酷評するぐらいなのだから、プロから見れば噴飯ものの出来だろう。

この漫画の作画担当には、まずたくさん漫画を読めとか、ちゃんと編集と打ち合わせしなさいとか、そういうところから教えるべきなんじゃないだろうか。車田正美も漫画はネーム(漫画の下書き)だと散々言っているように、ネームが出来ない漫画家は漫画家にあらずなのである。

一見綺麗な表紙絵に騙されて『私は利休』を読むとひどい目に遭わされる。

ダメな理由そのに・ストーリー

『私は利休』の話の主軸は茶道+転生ものということになるのだろうか。それら骨子に肉付けされるような形で、「忘れ去られていく茶道文化への警鐘」というメッセージも見え隠れしている。

だが、このストーリーにも大きな課題が残る。

まず、ストーリー上で、先に上げた三つの軸がごちゃ混ぜになっているのだ。その混ざりっぷりといったら、早朝の歌舞伎町の地面に輝くアレばりで吐き気がするほどだ。

まず序盤で「茶道とは」という基礎知識が紹介される。しかしここはかなり急ぎ足で、読者の立場に立っているとは言い難い解説ばかりだった(これはおそらく、作画の影響もあるだろう。全く頭に入ってこない)。筆者は茶道なんて全く知らないが、少なくとも初心者にわかりやすい説明とは思えない。ここで、「茶道とは何かを知りたい」という読者の知的好奇心はおおいに削がれる。筆者は単行本で全巻一気読みしたのだが、一巻だけ読もうと思った人はここで以降の巻を読む気がなくなるんじゃないだろうか。

話が進み、中盤以降になると、主人公・黒ピーは利休の生まれ変わりということに注目されるようになる。もともと持っていた彼の審美眼は、彼が千利休の生まれ変わりだからなんだ! な、なんだってー! でも彼すごいから納得! 生まれ変わりってあるんだネ!

……ここが最大の難点で、はっきりいって「だからなんなの」という展開が連続して続いていく。

利休の生まれ変わりの男が、チートで現代人の才能を凌駕し圧倒させる。そこに目的意識もなければ達成感もなく爽快感すらなく、作者側のマウンティングみたいな話が終盤までずっと続いていく。黒ピーの茶道への情熱も感じられず、ただ自分が利休の生まれ変わりだからハマった、というぐらいで、そこに読者側は全く感情移入出来ない。

また、最後の安土城など、全く持って何をしたいかわからず、これまた読者が困惑したままエンディングを迎えることになる。織田さん死んじゃったの?

彼らは結局、生まれ変わったことを自覚して何をしたかったのか? 生前やれなかったことをしたいのか? よりによって茶道を利用して?

なんというか、年寄りの「俺の若い頃はすごかったんだ。最近の若いやつは全然わかってないから教えてやる」という冷や水全開で非常に気持ちが悪い。もし、実際にそんな奴らがいたら殴りたくなるほどだ。

原作者の早川光は、ハイブリット寿司バトル漫画『きららの仕事』でも原作を担当しており、こちらは忘れ去られる江戸前鮨文化と伝統の破壊、という『私は利休』と同じようなテーマを掲げているのだが、『私は利休』は『きららの仕事』に比べるとだいぶ内容が劣る。

寿司に茶道とものすごく知識がある人だが、それを漫画に活かすことは難しいということだろうか。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

私は利休を読んだ人はこんな漫画も読んでいます

私は利休が好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ