がい骨たちが生きている人たちに訴えたいこと - がい骨レストランの感想

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がい骨レストラン

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がい骨たちが生きている人たちに訴えたいこと

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目次

がい骨にまつわる都市伝説

がい骨にまつわる怪談・都市伝説はたくさんあります。それはがい骨というのが、人が実際に目にすることのできる「死」だからなのかもしれません。死骸を実際に目にするということは、生死にかかわっている仕事をしている人以外は、家族・親しい人の死を経験しない限りないと言えるでしょう。しかし、がい骨というのは本物を見ることは少ないかもしれませんが、レプリカとしてでも博物館・理科室などで目にすることは多いでしょう。そういった意味でも、夜になると動くなどといった、がい骨にまつわる都市伝説が多くなるのは納得いく話なのかもしれません。またがい骨はあの世とこの世の中間的な存在のため、あの世のメッセンジャーとしての役割も持っているのではないかと感じます。本書ではがい骨が直接人間に何かをする話は少ないのですが、人ががい骨を見てそれらの思いをくむという話が多いです。その点からいってもがい骨はあの世からのメッセージを生きている人に伝える役割があるような気がします。

がい骨によって知らされる死者の気持ち

特定の人に対して、がい骨が死者から「死」に対する恐怖、罪の重さ、家族への思い、修行に対する執念を届けるためのメッセンジャーとなっていることがあります。中でも殺されて埋められた骨が掘り返され楽器などに加工されると、犯人のことをメロディにのせて歌ったり、樹海などでは自殺しようしている人ががい骨を見て自殺を思いとどまったりという話はよく耳にする話ではないでしょうか。

これら二つの話はあまり身近な話というわけではありません。しかし、実際にがい骨を目の前にした場合、もし心の内をのぞかれて、自分にとって都合の悪いことをしゃべりだしたらどうしよう、また逆に何か自分に対してメッセージがあるのではないか、と思ってしまうことは誰しも経験したことがあるのではないでしょうか?それは骨という実態がありながらも、どこか自分が見ることのできない世界とつながっているかもしれないという思いがあるからこそ、そう思ってしまうのかもしれません。そのため、妙に説得力を感じるのかもしれません。

がい骨が訴える戦争の悲惨さ

戦争中の満州での出来事を日本人はどれだけ知っているのでしょうか?日本の防衛費の予算拡大・靖国神社への公式参拝などの話題が上がるたびに、中国をはじめとするアジア各国から懸念の声が聞かれます。その一原因となっているのが、満州での中国人に行った日本人の非道な行いなのでしょう。特に平頂山での大虐殺は悲惨で、非戦闘員であった村人(乳幼児から老人まで)全員を日本軍が機関銃・銃剣を用いて殺害しています。そして、その残虐ぶりを後世に伝えるため「平頂山殉難同胞遺骨館」では、中国政府により発掘されたそのままの状態を展示しているそうです。

ここで、日本人が一番考えないといけないのは、この事実を日本の歴史では教えられていないこと、それゆえ大虐殺をした同じ日本人がその事実を知らないことではないでしょうか?戦時中大虐殺と言えば、ナチスドイツ「ヒトラー政権」下のアウシュビッツ収容所で行われた、ユダヤ人大虐殺が有名ですが、アジア諸国での日本の残虐な行為も目をそむけたくなるようなものが多いのが事実です。日本でも核爆弾の被害国として、核被害の悲惨さを訴えていますが、日本が植民地にしていた諸外国に対してどのようなことを行っていたのか、もっと歴史で事実を学ぶことこそ、そういった被害国に対しての償いになるのではないかと感じました。

怪談レストランでたびたび登場する戦争の話

怪談レストランシリーズでは、たびたび戦争での悲惨な出来事が話の一つとして語られます。怪談と言えば話の内容は、幽霊・おばけ・妖怪などの話が中心となります。そしてそこに共通する思いと言えば怨念・無念ではないでしょうか?そう考えるとそういった思いを残した大量の死者の出る戦争とは、切っても切れない話なのかもしれません。だからこそ、この作品たちには「戦争はどんな理由があっても絶対に起こしてはいけないもの」という作者のメッセージが強く込められているような気がします。近年戦争は悲惨なもので、戦争に参加していた日本も決して原爆の被害国だけではなかったというような、映画なども多く作られています。しかし、それは日本の未来を担っている子どもたちには、少し手の届かないところでの話になっている気がします。

この児童書は全50巻のシリーズ本で、800万部のベストセラーとして童心社のサイトでは紹介されているようです。最近ではその称号にふさわしく、どの図書館に行っても必ずおいてある作品です。一冊のページ数もあまり多くなく、30分もあれば1冊読むことができるぐらいです。このシリーズを通して子どもたちが戦争の悲惨さ、残酷さを知ることができ、将来いつまでも戦争をしない国としての日本を守っていくことができたらいいなと思いました。

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