身障者理解に貢献している希少な少女漫画 - Flower〜フラワー〜の感想

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Flower〜フラワー〜

4.004.00
画力
4.00
ストーリー
4.00
キャラクター
4.50
設定
4.00
演出
3.50
感想数
1
読んだ人
1

身障者理解に貢献している希少な少女漫画

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
3.5

目次

車椅子利用者への配慮を啓発した作品

元気で快活、読者モデルまでしていた主人公葵が、自転車ごと階段から転落し腰を骨折。その事故が元で車椅子生活になってしまうことから物語は始まる。不自由な状態とは対極ともいえる活発な少女が一生歩けなくなってしまうという絶望感、立ち直る過程が見事に描かれ、同時にわかっているようで意外にわかっていない、車椅子利用者への生活上の配慮をしっかり描写している。

介助犬などの登場で、盲導犬以外にも障がいを持った方の手助けをしている犬がいるというのも、意外に知られていないのではないだろうか。そういった知識を、この作品から得ることができる。

途中から車椅子ということが気にならなくなる

最初は主人公葵の突然の不幸に読み手もやり切れない思いになるが、同級生竜太との恋愛や、高校入試の話になるにつれ、車椅子の利用者だというだけで、葵は健常者と何ら変わらず青春を駆け抜けているという印象に変わっていく。物語から悲壮感が無くなり、「やれることを全力でやる」「誰だって一人では生きていけない」ということについては、障がいの有無は関係がないということに気づかされる。

葵の前向きさや、支える級友・家族の前向きさが物語を爽やかにしている。また、車椅子ユーザーの先輩である北川が、健常者とほぼかわらない活躍をしている点も大きい。歩けないということに対し、悲壮感の先にたどり着いた登場人物たちの強さには非常に学ぶものが多い。

漫画としてはやや説明的すぎる感も

著者和田尚子氏の作品は、Flower〜フラワー〜に限ったことではないが、ややセリフが説明的すぎる、という印象がある。活字のセリフのフォローとして、著者の書き文字による補足のセリフが頻繁に書き込まれているが、やや説明が煩わしいことがあり、読みにくさを感じる点が難点と言えよう。それを良いように受け止めるのであれば、和田氏の「読者に些細な情報も伝えよう」という律義さの表れなのかもしれない。しかし、書き文字よりも人物の表情や背景、効果的なモノローグなど、多くを語らなくても読者に伝わるものはある。Flower〜フラワー〜のように、単なる恋愛ものではなく、障がい者理解も一つのテーマとなる作品では、セリフが文章的になってしまいがちなところもやむを得ないのかもしれないが、画力がある著者だけに、文字より絵で伝え、全体として余計なセリフや説明的になりすぎているセリフを減らすと、かなり読みやすくなると思われる。

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