最後の主題歌で号泣できる映画 - ステラの感想

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最後の主題歌で号泣できる映画

5.05.0
映像
4.5
脚本
3.0
キャスト
4.5
音楽
5.0
演出
4.0

目次

ムチムチのボディが魅力満点のベットミドラー

1990年に公開された映画です。この映画の主演、ベットミドラーはホノルル出身、45歳の時の作品です。歌手としての活躍も華々しく、あの名曲、ローズを歌っていることでも有名です。もちろん、この映画の主題歌も彼女が歌っています。なんとも言えない優しいハスキーボイスで、歌がスーッと心に沁みて涙が流れるよう歌手なのです。女優としても名手で、シリアスからコメディまで幅広く演じています。

この映画では、学がなく、少しだらしなく、品のない感じのバーテンダーを演じています。けれども、誇りを持って生きる強さを秘めています。その、強さと、弱さと、少しだらしのない奔放さ、ユーモア、危うさ、そういうものがごちゃ混ぜになった愛すべきキャラクターを見事に表現されているのです。常にノーブラで、ムチっとした胸が強調された服を好み、パーマでふわふわの金髪は無造作に肩まで下ろされていて、飲み屋のお姉ちゃんとして毎夜大人気のステラ。冒頭のシーンでいきなり、バーのカウンターに土足で飛び乗って、仮想ストリップショーを始めてお客さんから大歓声を浴びるところで、完全にとりこにされてしまいました。あまりにもベットミドラーがチャーミングすぎて。これは、堅物の医者、スティーブが惚れてしまうのも無理はないと思わずにいられません。

あらすじは予想できてしまうのに泣ける

あえて評価の点でも脚本は3点にしてしまったのですが、展開はおよそ予想できてしまうのです。自由で奔放で、TPOを全く配慮しないステラなので、娘のジェニーは子どもの頃から人知れず苦労させられます。母親が夜の仕事だからとクラスでからかわれ、侮辱を受け、徐々に学校をドロップアウトしチンピラと付き合ったりして、ステラを心配させます。そのために親子喧嘩もしますが、母が恥ずかしいという決定的な一言は絶対言わない、優しい娘なのです。そんな娘を、このままドロップアウトさせてはならない、教養を付けて真っ当な人生を歩かせてやりたいというステラの親心が、ストーリーの全てです。そう分かっているのに、最終的にはティッシュ無しに観られないほど泣かされてしまう力がこの映画にはあります。最後のシーンに登場したステラの身なりは貧しくて、雨にうたれたまま娘の結婚式をそっと見つめるその姿、そしてそこからの、晴れやかな涙の威力はすごいです。暗転後、主題歌が流れると何回観ても泣ける映画です。

1960年代のオシャレが堪能できる衣装

この映画の舞台は1969年のアメリカです。当時のファッションの流行は、なんと2010年代の今とそう変わりがないのです。カラフルな色使い、幾何学模様のミニワンピ、ネイティヴアメリカン風のフリンジが付いたポンチョやベスト、ボリュームのある袖などなど。唯一違いがあるとすれば、裾が大きく広がったパンタロンが流行っていたという点です。ステラが冒頭の方で着ている私服もめちゃくちゃ可愛くて、あの上着と帽子欲しい!と本気で思ってしまいました。一方で、オシャレ着などは袖が大きなパフスリーブだったり、女性のスーツは肩パットがすごく目立ったりと、古臭さを感じます。洗濯物を畳む生活感満載のシーンもあるので、当時の服や、使われていた下着などまで知ることができるので、現在との違いや共通点を見つけられて面白かったです。

もちろん、母と娘の美しい愛に私は何度観ても泣くわけですが、この映画を通してそれ以上に感じることもあります。それは、アメリカが、良い意味でも悪い意味でも、カーストが明確に存在する階級社会なんだなということです。ステラは「下」の人間なのです。彼女の持つ下ネタやユーモアや自由奔放な笑いは、「上」の人からすれば失笑モノであり、眉をひそめられるようなものなのです。この先どんなにあがいても、ステラは「上」に決して入れない場所にいる。そのポジションに娘を置くわけにはいかないからステラは医者でジェニーの父でもあるスティーブに連絡を取ったりして奮闘するわけです。そして、自分のような人間が母であると相手方の親戚やご両親に知れたら、愛する娘の結婚がおじゃんになるから身を引いたのです。残念ですが、実際に、ステラが母として出ていけば、娘の結婚はダメになっただろうなと、私は思ったのです。ステラは素敵で強くてチャーミング、そして、途方もなく良い人です。なのに、確かにステラが娘ジェニーの母として表に出れば、ジェニーは「下」で生きる人生を歩くことになるだろう、とも思ってしまう。ステラが良い人かどうかとは別のところで、ジェニーが今後、医者スティーブの娘として良家のご子息に嫁ぐには、ステラではどうしてもダメだろうなと思う部分が私の中にも確かにある。アメリカが身分社会であると同時に、良いか悪いかは別として、自分自身の中にも、そうした「上」「下」の意識が確かにあることを気づかされてしまい、考えさせられるのです。

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