兄弟愛の素晴らしい感動ドラマ
ボクシングを通じた兄弟愛溢れる真実の物語
この映画は実際にアメリカで活躍したボクサーが凋落しつつもその情熱を愛する弟の夢にかける男のロマンがぎっしり詰まっている作品だ。
単純なサクセスストーリーではない。
ロッキーもボクシングを通した人間ドラマとサクセスストーリーを描いているが、比較するともっとドロドロして人間くさいところが多い。これは実話ならではと言えるだろう。
ストイックで美しい男たちが家族を守る姿に感動が溢れる。
私はもともと、スポーツの成功ストーリーということが一目でわかるこの映画のパッケージにあまり魅力を感じなかったのだが、ディパーテッドをみてファンになったマーク・ウオールバーグとバットマンでファンになったクリスチャン・ベールが出演しているということで観ることにした。結論から言うとさすが2人の名優が出ている映画だけあって、スポ根映画の傑作とも言える内容だ。2人の演技力もさることながら、この映画を撮影するにあたって、マーク・ウオールバーグは肉体改造し、ボクシングの動きもプロボクサーのよう。
また、クリスチャン・ベールはこの役を演じるために、歯を抜いてまでして臨んだそうだ。クリスチャン・ベールはこの映画でアカデミー賞・ゴールデングローブ賞ともに助演男優賞を受賞している。映画のストーリーはかつてボクシングで栄光をつかんだ、兄、ディッキーがその後、薬物中毒で堕落し、両親、妹らとスラムに住んでいるところから始まる。弟ミッキーはそんな兄でも誇らしく、いつかまた再起してくれると信じて疑わない。
また、ミッキーは小さい頃からディッキーにボクシングを教えてもらっており、いつか兄みたいなボクサーになりたいと日々願っている。そんな兄弟はとても信頼しあっており、家族である妹たちも入り込む余地がないほどだ。しかしディッキーは毎日の薬物摂取により、頭も心もおかしくなってしまっている。ちょうどその頃ミッキーといえば、彼女もでき、一時期中断していたボクサーの道をまた歩もうと決断する。
その後、家族やコーチのサポートにより、順調に軌道に乗り、プロモーターがつくことでついに試合を組むことになる。試合は順調に勝ち進んで、成功への道を歩き始めていた頃、ある日、兄ディッキーはつまらないことから刑務所に入ることになってしまう。家族やコーチはつくづくディッキーに愛想をつかしてしまうのだが、ディッキーは刑務所内では栄光のボクサーとして誰もが知るヒーローだ。皆からちやほやされるディッキーは最初はいい気になるのだが、実はその裏では、皆の心の中にはディッキーの凋落ぶりをあざ笑うような心があることを知り、プライドを傷つけられる。そして自分はまだやれるのだと、そこから再起を目指そうと思うが、そのためには、自分がコーチとして愛する弟ミッキーを成功させることだと確信する。出所後早速ディッキーは家族やコーチに自分がコーチをしたいと言い出した。
しかし、ディッキーの堕落ぶりに愛想をつかしている家族やコーチはどうせまたいい加減な気持ちで言っているのだろうと、とにかくディッキーには合わせようとはしない。ついにはコーチはディッキーと一緒にやるのなら、自分は関わりたくないとまで言う。ミッキーは大好きな兄と一緒にやりたいので、悩む。しかも最愛の彼女までもがディッキーには近寄らないで欲しいと言い出す始末だ。ついには家族や彼女の言うことを聞いて新しいコーチとともに歩みだし、そこからストイックに練習を重ね、勝ち進んでいく。
しかし、頂点が見えてきた頃、ミッキーは自分の限界に気づく、やはり圧倒的にキャリアが足りないのだ。自信をなくし、不安に駆られるミッキーに家族もコーチもどうしていいかわからない。その時、ディッキーと会うのだが、ディッキーは勝つために必要なテクニックだけでなく自信というものをミッキーに与えてくれる。そしてタイトル戦に臨み、なんと見事勝利を手にすることになる。
この話は実話に基づいているだけあって、とても人間くさいところがいい。スラム街の街の人たちが心からディッキーやミッキーを自分たちの誇りと思い、勝ち負けのたびに自分のことのように喜んだり、悲しんだりするシーン、家族が自分の生活がかかっている自分の息子や兄にすがる人間臭さ、すべてが泥臭くて良いのだ。かつて見たロッキーも素晴らしい映画だったが、比較すると既に成功することが決まっており、そこから設計されたストーリーという感は否めなく、フィクションとノンフィクションではこれだけ観る人にその違いを感じさせるのだなと改めて思ったし、また、実話だと聞いて映画を観た後、自分と照らし合わせて考えたり、それを活力として自分も頑張ろうといった気持ちになるのもやはり物語の芯がしっかりしているからに他ならないと思う。
ちなみに私も1歳違いの兄が一人いるのだが、この映画を観終わった後、なんだか久しぶりに会ってみたくなった。
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