これからが映画『バイオハザード』の真のはじまり - バイオハザード IIIの感想

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これからが映画『バイオハザード』の真のはじまり

3.03.0
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
3.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

世界線の変わった世界で

人気ホラーアクション映画『バイオハザード』は、シリーズ三作目の『3』にいたって大きな分岐点を迎えることになる。

というのも、それまでの映画のシリーズは、原作ゲームの舞台を踏襲したものであり、ストーリーや展開も原作に沿ったものが多かったのだ。

一作目『バイオハザード』は研究所からの脱出、『バイオハザード2アポカリプス』はラクーンシティからの脱出で物語が終わる。これらは原作ゲームと同じ展開であることから、原作ゲームファンはある程度映画の結末を予測することが出来た。例えばジルといった原作キャラクターが生存するというのもファンとして至って当然の帰結であり、そこでいうと映画版は少々物足りなかったのかもしれない。

だが、『3』に至り、ゲームファンの予想をも超える展開が次々と巻き起こる。

ゲームではラクーンシティの崩壊でパンデミックが(一応)食い止められたが、映画では感染の広がりが食い止められず、世界中でゾンビパニックが起きてしまっている、という設定になっている(なお、ゲームも厳密にいえばウィルスの拡散は止め切れておらず、崩壊とはいえずとも世界各地でウィルステロが発生している)。ゲームに登場していたキャラクターであるカルロスの死亡も、ファンにとっては衝撃的だった。

これらの要素により映画とゲームとは完全に世界観が変わり、IFの世界としての『バイオハザード』が成立した。これは映画だけでシリーズを追っていた人だけでなく、ゲーム『バイオハザード』ファンをも喜ばせただろう。

崩壊した世界で、人々はどう生きるのか? ゾンビだらけの世界に希望はあるのか?

ゲーム『バイオハザード』ファンが一度は考えたであろうIFを、映画のなかで見事に再現されているのである。

まさかの超能力展開は蛇足のように思える

もう一つ、『バイオハザード3』には映画版ならではの変化が訪れる。

それは主人公・アリスが、まさかの超能力を使い始めるというところだ。

もともとシリーズ一作目のラストで様々な実験を受け、アリスが人間離れした身体能力を手に入れたことは明らかになっていた。だが、三作目である今作においては、バイクを宙に舞い上げて落としたり、カラスの集団を火で一掃したりと、人間離れどころか完全に超能力者になってしまったのである。

これは映画ファン、ゲームファンの間で賛否両論を巻き起こした。同時に、落胆する映画のシリーズファンも一定数存在し、この作品を機に、映画『バイオハザード』シリーズを観つづける人間と観るのをやめた人間とで二分されたように思う。

筆者は観るのをやめることこそなかったが、この超能力設定は蛇足だったように考えている。

そもそも映画『バイオハザード』シリーズは、アクションだけで十二分に魅せられる映画だ。シリーズ一作目から始まった華麗なアクションシーンの数々は、シリーズを追うごとに際立ち、時に鳥肌もののワンカットを生み出している。

たとえば『3』においては、クレアなど生存者たちの戦いだけでかなり見ごたえがある。カメラワークに問題があった一作目と比べ、ゾンビやカラスに襲われるシーンも各段に進化し、パンデミックで滅んだ世界との荒廃も合わさって見ごたえのある画面に仕上がっている。砂色の砂漠を走るトラック、ボロボロの服を着た生存者といった舞台装置だけでもSFとして十分に凝っているのに、そこに何も突飛な超能力を合わせる必要がなかったように思えてならないのだ。

制作側もこの設定には悩んだのか、続編『4』では序盤に力を封じられている。

ゲームファン離れを起こし、シリーズファンにも賛否両論を巻き起こした超能力展開。読者諸氏はどう捉えただろうか。

シリーズの繋がり的作品と捉えるべきか

さて、次は『3』のストーリー部分について考察していこう。

『3』の特異的な点として、1物語でストーリーが完結しているというよりは、話と話とを繋げる中継ぎ的ポジションにあることが挙げられる。

最後のアリスの大量のクローンといい、アラスカに旅立ったクレアたちといい、一本の映画の結末としてはやや半端だ。伏線が大量に回収されていない、というより、伏線を次作に投じたといったほうが正しいか。

映画『バイオハザード』シリーズは基本的にシリーズを見たことのない人でも楽しめる作品が多いが、この『3』と『5』はおそらく単発ではあまり楽しむことが出来ないだろう。そういった点で、映画として『3』を評価するのは難しい。

しかも、続編である『バイオハザード4アフターライフ』において、大量のアリス・クローンが序盤で消費されきってしまうのももったいない点だ。それぞれ監督が違うからかもしれないが、長編シリーズ故の変更点は、視聴する側が「仕方がない」と納得しなければならないのかもしれない。

世界観、設定といった要素がいい作品だけに、要所要所にシリーズファンをがっかりさせるポイントが見受けられるのは、非常にもったいない作品といえよう。

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