彼は人間かマシーンか - イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密の感想

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彼は人間かマシーンか

4.04.0
映像
4.0
脚本
3.5
キャスト
3.5
音楽
4.0
演出
2.5

目次

悲劇の数学者

今の時代、コンピューターやスマートフォンがないと少々不便である。

私が小学生の頃、10年先の未来ではどんなものが進化を遂げているのだろうと何気なく思った時、まず最初に頭に浮かんだものは「車」だった。きっと空を飛んだり、海に潜ったりするだろうとワクワクしていた。その頃にはパソコンも携帯電話もあった。だが、まさかそれらが急激に発展していくとは思えなかった。

アラン・チューリングはこの前身となるマシーンを作った。それは第二次世界大戦の中、敵対するドイツのエニグマ暗号を解読するために開発された。彼がいなければこの戦争に勝てなかったと言われるほどに貢献していたのだが、極秘任務だったこともありその功績は最近になってようやく世間に知られるようになった。それだけでなく、当時の世の中に受け入れてもらえないがために、彼は自ら命を絶ってしまう。

マシーンと人間

この映画は常に映画の中でいう「現在」と「過去(エニグマ解読時)」と「もっと過去(少年期)」が交差している。なので気をつけないと「今、どこだっけ」と混同してしまう。その「現在」でチューリングが警察で尋問を受ける際、刑事に言った言葉が印象的だった。

彼は刑事に「イミテーションゲームをやろう」と提案する。イミテーションゲームとはいくつか質問をし、それに対する回答から回答者が「人間」であるか「マシーン」であるかを判断するものだ。そのゲームで刑事はまず「マシーンは人間のように思考することができるか」であった。それに対してのチューリングの「マシーンは人間とは何もかもが違う。だから‘人間のように’考えない」と答えた。なるほどと思った。私たちはつい「人間中心」に物事を考えてしまう。それは人間であるから仕方がないのだ。でもチューリングは違い、マシーン目線の回答に思える。

そして最後に彼が問いかけた「私は英雄なのか、犯罪者なのか」という質問に刑事は答えられなかった。きっとマシーンなら彼の業績や戦争のために犠牲にしてしまった人などすべてを天秤にかけて答えを導き出し、躊躇なく答えただろう。

チューリングとは

彼がもし、この戦争に加担することなくただの「天才数学者」だったなら今、文章を打ち込んでいるコンピューターも便利なスマートフォンも開発されなかったか、もしくは今よりも違うものだっただろう。

彼はとんでもないものを発明した。だが、この映画を見ているとそれは彼にとって良いだったのだろうかと思う。誰にも認められない。マシーンが出来たからとはいえすぐに戦争は終わらないし、暗号が解読できても犠牲者は出てしまう。

そんな苦痛の中、自分は人間のか、それともマシーンのか、日々自分自身にもイミテーションゲームで問いかけていたのだろう。きっと私たちには答えは出せない。では彼が生み出し、後世で目覚ましく進化したコンピューターはどうだろう。きっと彼らは人間の私たちが考えられない答えだし、驚かせるに違いない。

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天才数学者の悲しい半生

ディカプリオが良かった第二次世界大戦下でナチスドイツ軍が使用していた世紀の暗号製作マシーン「エニグマ」は、毎日(のちに数時間おきに)設定を変えることで解読が不可能とされた。この映画は、そのエニグマから打ち出される暗号の解読に成功した天才数学者アラン・チューリング(Alan・M・Turing)の半生を描きたした物語だ。おそらく今でいうアスペルガー症候群の特徴と思われるチューリングのエピソードなどもユーモアたっぷりに描かれていて、重たいテーマにも拘らず途中何度か大笑いしてしまう作品だった。当初はレオナルド・ディカプリオの主演で製作されるという話だったそうだ。オリジナルのチューリングに骨格が似ている。それがなぜか途中から製作会社が変わったことで、主役がイングランド出身の俳優ベネディクト・カンバーバッチになった。何となく堺雅人がチラついてしまう面差しが印象的な俳優だ。登場人物はそれほど多くないが、キャステ...この感想を読む

4.54.5
  • NaraNara
  • 137view
  • 3058文字
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