情緒のある絵
「マフィアとルアー」というオムニバス短編マンガTAGRO先生著
珍しい絵柄の作品でした。なかなか雰囲気のあるイラストで紡がれていく感じです。トーンなどは一切使わずにペンみたいなツール一本で描いている感じがしています。しかしこのTAGRO先生はカラー絵の方が断然お上手ですよね。白黒の絵はちょっと落書き風なところはありますが女の子のキャラクターの絵に限ってはかなりうまくなって描かれます。特にモノレエルというストーリーの中の子はそうです。
別の話になると絵柄がかなり変わってしまいます
第二話の「トリコノムスメ」では一瞬描き手が別の方にバトンタッチでもしたのかなと思ったくらい違った絵に見えたんですが恐らくそうではなくてご自分の絵柄を変えてみたんだと思います。日常の風景の細かい部分が丁寧に描かれている質感はどの作品でも健在です。このトリコノムスメではほのぼのした男女が同棲というか子供みたいな顔してるんで同居かな、している感じのストーリーですが突然、男の方が少女を解離性障害で4度も家にしているとか言い出した時は何かショックな話なのかなとどっきりとしてしまいました。情報が混乱、浸食して、でも何かが好きってことは思い浮かんで。すっきりとはわかりにくい話なんですが何か考えさせられる要素はありました。
完全に日常を描いているのにSFチックな雰囲気が漂う
「トラベリングムード」という物語でも旅館の食事やら廊下やら普通な景色の中のお話なのに絵のせいで非日常空間に見えてしまいます。恐らく「宇宙賃貸サルガッ荘」などを描いておられる時に培われたスキルかと思われますがねえ。とにかくトラベリングムードでは男女が旅先で出会って何となく時間を共に過ごして居るんですが驚いたのは一緒にお風呂まで入っちゃってしまっているところです。旅の理由としてはのんびりしたかったなどと言っていたんですが何だか目的が変わって来ちゃった?かと思いました。でも彼らの年令がイマイチわかりにくいんですが女の子の方も体つきがかなり子供っぽくて中学生かと思ってしまうくらいの体型です。だからあまり変な雰囲気はなかったんですよ。(一緒に入った男の子の方がちょっととんでもないことしちゃったと思ったみたいですが)そして最後に旅の理由なんかは置いてきてしまったと気付くんですね。かなり抽象的な表現がなされているんで読者によって多少違った取り方が出来るかもしれませんが妙な勢いがありました。出会いってことだったんでしょうかね、後付されるとしたら。
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